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Prologue. 【回想】 友よ
そこに、友が居た。
この欺瞞に満ちた学校の中で出会った、真実の友がそこに居た。
「……何故だ」
問いかけるその声は、驚くほどにかすれていた。
喉奥から絞り出したその問いに、しかし友は答えない。
いつもとかわらぬ陰気な眼差しをこちらに向け、沈黙を続ける友に向かってさらに問い詰める。
「……何故だ、ゼル!」
友の名を呼んだ。
人の道を踏み外した 友の名を呼んだ。
「……すまんな、リド」
悲しそうに頭を振ると、友はゆっくりと剣を抜く。
光子の刃が瞬くと同時、その瞳に狂気の輝きが宿る。
その瞬間、友は一振りの剣となった。
ゼリエス・エト。
リドレックの友にしてスベイレン最強の剣士は――
人殺しだった。