護れない
僕は護れなかった、大切な娘を
僕は護れなかった、小さな娘を
僕は護れなかった、愛しい娘を
背中にめり込む銃弾の痛み
その銃弾が肉を裂き、骨を砕く痛み
そんな肉体的な痛みよりも
血を流し、苦しそうに息を吐く娘の姿を見た時の
心の方が、ずっと痛かった、とても痛かった
だから私は護る力が欲しかった
大切な誰か一人ぐらい護れる
そんな力が欲しかった
「さぁ、英雄君」
眼前で構える彼に、僕は息も絶え絶えに言葉を吐く
何とも無様で、見苦しい醜態を晒しながらも
僕の心は、不思議と安らがだった
「早く僕を殺しなさい、さぁ…早く」
背中の傷が痛むんだ、まるであの時みたいに
だから早く、この痛みと、悲しい世界から
僕を解き放って欲しい
「その力なら僕の甲羅も貫ける、出来るだろ?」
不思議とこの赤い英雄は、あの人に似ている気がする
信念を曲げず、目的の為に手段すら選ばない
あの人に、何処か
英雄の拳が胸を貫き、堅い甲羅は砕かれ
血と涙を流しながら僕は倒れた
「…り、ありが…う」
きちんと言えただろうか?
感謝の言葉を告げれただろうか?
目の前が暗くなっていく、あの時と同じ様に
死を体感するのは二度めだ、恐くはない
それに先に待ってる娘に聞きたい事がある
'父さん、頑張れたかな?'
もしもし亀よ




