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番外編 僕が隣町に行くワケ

 屋台の呼び声や、浴衣の人々の中、僕と妹もゆっくりと歩いていた。携帯電話の時計を見れば、もう十時半。家を出たのは七時頃だったから、辺りがすっかり暗くなっているのも納得だ。


「夏祭りか……お前が行きたいって言うならいくらでも付き合うけど、いいのか?」


「何が? 妹がお兄ちゃんと一緒に遊びに行っちゃおかしい?」


「違う。お前だってもう中三だろう。友達とかと行ったりしないのか?」


「それは昨日。お兄ちゃんは出かけてたから知らないだろうけどね。

で、今日はお兄ちゃんの日。さらに、明日は……」


「明日は!?」


 友達、家族ときたら……?

 あれなのか! こが付く禁断のあれなのか!

 許さん! お兄ちゃんはそんなこと信じないぞ!


「いや……冗談だよ。恋人なんて作ったら、お兄ちゃんに何されるかわからないし。

それに私、告白されるほど可愛くないし」


「それはそれで嫌だな」


 妹に告白しようとする奴がいれば、いつでも竹刀片手に駆けつける所存だ。県大会ベスト4を馬鹿にするなよ。妹に「格好良い」と言われるために続けている剣道だが、だからこそ真剣に取り組んでいるのだ。

 しかし、この僕に挑戦しようとする奴が一人もいないとは。最近の日本男児は全く困ったものだ。草食系男子なんて格好悪いとは思わないのだろうか? 三十人切り達成後からは、ぱったりと妹に手を出そうとする奴はいなくなってしまった。


「どうして? 私が誰かとこういう関係になるの嫌なんでしょ?

うーん、じゃがバター美味しい」


「僕が認めた相手ならいいぞ。それに誰と一緒になろうが、お前は一生僕の妹だ。

どれどれ、一口味見していいか」


「ちょ、勝手に食べないでよ! これ私が買ったやつなのに……。

お兄ちゃんのハードルが高すぎるんだよ。素手の人に木刀持ち出して不意打ちで倒すとか、卑怯だと思わないの?」


「うむ、美味しいな。僕も一つ買ってこようかな……。

そして、何を言う妹よ。この現代社会、頭の悪いやつは生き残れない。昔ながらの殴り合いなんて古いんだよ。僕が来るのを、罠を仕掛けて待ってるような奴でなくちゃお前を任せられる訳ないだろう」


 罠があろうと多分負けないけれど。確実性を取るなら、重火器が一番楽だと思うかな。法律よりも妹のが重い!


「はぁ……まあ何言っても無駄なことは分かってるから、これ以上は言わないけど。

っていうか、早く自分の買ってきてよ! これ私のなんだって!」


「いや……こういちゃいちゃしてれば、恋人みたいに見えるかと思って」


「兄妹だから! 恋人じゃないから!」


「っていう設定の彼女です!」


「もう、止めてよお兄ちゃん!」


 妹はどうにか僕の口を塞ごうとしてくる。それをすんでのところで避ける僕。あいつは気付いているんだろうか。結構僕ら、普通に恋人みたいだぞ。


「あ」「え?」


 遂に妹の手が僕の口に届こうかというそのとき、強い光が僕たちの目を襲った。ドーンという重い音が、少しの間を明けて耳に届く。


「花火……?」


「お兄ちゃん、あっちだよ!」


 妹が指差す方を見れば、ちょうど幾つもの花が空に咲いたところだった。赤、青、緑に黄色。咲いて散って、また咲いて。

 僕はしばらく何も言えなかった。動けなっかった。それは、妹も同じらしい。

 前に花火を見たのはいつだったっけ……。


「お兄ちゃん、あっちの河原まで行こう! よく見えるよ、きっと!」


 僕は大きく頷いた。多分前に見たときもこいつと一緒だった。

 だから……次もこいつと一緒に見られればいいな。


「なあ、次の花火は隣町で三日後らしいぞ! 早速見に行こう!」


「近っ!?」



約一ヶ月ぶりの更新になってしまいました。もう少し早く投稿したかったのですが、宿題に手間取ったのが原因です。

せめてまだ花火があがるような時期に書き上げたかった……。


次の更新では、本編の続きを投稿する予定です。結構なボリュームになってしまいそうですが、半月以内に投稿できたらいいなと思っています。


今回も全然短くなっていませんが、次から作品についての後書きは活動報告の方で行おうと思います。先日、第1回を投稿してみたのですが、思った以上に使いやすかったです。

第1回では、この作品の最初期設定を公開していますので、興味がありましたら見に来ていただけると嬉しいです。


最後に、アドバイス、批評、感想いつでもお待ちしています!

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