ep193:異世界の米の産地
「ん~っ、この粒々が半分残ったモチモチが良いわ」
おはぎは、ラ・テール様以上にイリキーヤ様に大好評となった。
イリキーヤ様は着物を着たり日本茶を飲んだりするなど、日本贔屓だからかもしれない。
「トモユキも餅菓子を食べさせてくれたけど、あの子は醤油大好きであんこの菓子は作らなかったのよね」
「って、お餅の材料、もち米がどこかにあるんですか?!」
イリキーヤ様が呟いた言葉に、僕は食い気味で反応してしまったよ。
ガリア王国の米は長粒米で粘りが少なく、炊いてもパラッとしている。
それはそれでチャーハンやピラフには最高なのだけど、僕は粘りがあるうるち米やもち米も欲しいんだ。
「あるわよ。トモユキの願いを叶えて、ラ・テールが授けたから」
「つまり、どこかで栽培されてるんですか?」
「連れてってあげようか」
「えっ」
「あ! 駄目よラ・テール! そのまま連れて行ったらショウが勇者になっちゃう」
イリキーヤ様から話を聞いていたら、ラ・テール様に危うく異世界転移させられそうになった。
神域はともかく、異世界転移したら神殿や王家に勇者認定されると聞いていたので焦ったよ。
妖精たちに若返らされて子供になってる上に、勇者認定なんてされたらすぐには日本へ帰れなくなるじゃないか。
幸い、イリキーヤ様が慌てて制止したので、事なきを得た。
「場所だけ教えてもらえたら、後でクルールに乗って行ってみますよ」
「そうね、あの魔獣に乗れば、遠方でも気軽に行けるわね」
僕が愛馬の話をすると、イリキーヤ様も頷いて言う。
新幹線並みの速度で空を飛べるクルールなら、ガリア国内なら端から端まで三十分から一時間くらいで行ける。
国境問題はあるものの、物理的には海外へも日帰りで行けるだろう。
「うるち米や、もち米があるのは、ガリア王国南の辺境ルミディ領にある隠れ里カマルグよ。王都からの距離はリシュ領やエクラン領と変わらないわ」
「じゃあ、クルールが本気出せば三十分で着きますね」
「何か甘い物をあげれば三十分で着くと思うわ。里に入る合言葉は『眼鏡っ娘は可愛い』よ」
「……その合言葉、トモユキ氏の嗜好ですか?」
「多分」
ラ・テール様が詳しい場所を教えてくれた。
イリキーヤ様が教えてくれた里に入るための合言葉が、勇者トモユキの女性の好みをハッキリ物語っている。
眼鏡っ娘。ナチュでも連れて行けば、喜んで迎えてくれるだろうか?
だが、トモユキ氏は三十年くらい前の勇者だ。
きっともういい歳のオッサンだろう。
なのに合言葉を変えずにいる辺りに、少々残念さを感じたりもする。
「勇者トモユキ、今何歳ですか?」
「三十年前に二十歳だったから、今は五十歳ね」
……現役女学生を連れて行くのはやめとこう。




