ep116:エペルランの唐揚げ
宿舎へ帰った僕とアウラウダは、早速エペルランの唐揚げの準備にかかった。
魚は生きたままマジックバッグに入れると、仮死状態になる。
ラフォルムとティミッドも手伝いに来て、四人で下味付けや衣つけを始めた。
材料は、エペルラン(ワカサギっぽい小魚)、セル(塩)、ポワーヴル(胡椒)、ファリーヌ・モル(薄力粉)、揚げ油としてユイル・ドゥ・セザム(胡麻油)。
作り方は簡単だ。
洗浄魔法で綺麗にしたエペルランに、塩と胡椒を振り、薄力粉を薄くまぶして、胡麻油でカラリと揚げるだけ。
淡白でクセがなく、上品な旨味をもつ魚で、骨や内臓も美味しく食べられる。
唐揚げにすると、外はサクサク、中はふんわりとした食感になり、内臓のほのかな苦味が美味しさを引き立てた。
(新しい料理ではないけど、たくさんあるし、美味しくできたから神様たちや領主様にも食べてもらおう。リュンヌ様のランチにもいいな)
僕は出来上がった唐揚げを取り分けて、マジックバッグに入れた。
料理などは状態維持効果があるから、出来立て熱々が維持できる。
エウェル様にもお届けしたら喜んでくれるかもしれない。
取り分けた後の唐揚げは、先輩たちの争奪戦になった。
「美味いっ! リシュ領のエペルランは最高だな!」
「塩胡椒と胡麻油の風味がたまらん!」
「くうっ! この後仕事でなければ麦酒を呑むのに!」
先輩たちはムシャムシャと勢いよく唐揚げを頬張り、悔しがっている。
うんうん。
気持ちは分かるぞ。
オッサンも揚げた小魚をツマミにビールを呑む至福を知っているからな。
残念ながら今は少年の身体だから、呑めないけど。
◇◆◇◆◇
『ラ・テール様、エペルランの唐揚げ食べませんか? お庭に入れて下さい』
『食べる食べる! おいで』
僕が念話を送ると、すぐに神の庭へ招かれた。
こんな、御近所にお裾分けしに行くみたいに神様に会う人間は、この世界では僕くらいかもしれない。
「私の分も取り分けてたでしょ? 食べに来たわ」
おまけに、イリキーヤ様まで待ってるし。
僕は二人の女神に唐揚げを渡した後、オハナにも届けに行った。
オハナは僕が来るのが分かっていて、校舎の玄関口に佇んで待っている。
「オハナ、これ美味しいよ。食べてみて」
「ありがとう。頂くよ」
付喪神のオハナは、僕と出会うまで人間の食べ物を口にしたことは無かったらしい。
存在に気づく人がいなかったから、お供えもなかったんだろうね。
「うん、美味しい。それになんだか、身体に力が満ちてくるよ」
オハナはラ・テール様と同じく、僕の料理を食べると力が満ちるらしい。
ずっと元気でいてほしいから、これからもちょくちょく差しれに行こう。




