ep115:凍った湖で獲れるもの
真冬の朝。
食材採集当番が回ってきた僕とアウラウダは、バスチアン先輩、シャスール先輩に連れられて、近くの湖へ出かけた。
それぞれ、短い釣り竿を手に雪原を進む。
「この湖には、水面が凍る時期に美味くなる魚がいるんだよ」
食材知識豊富なシャスール先輩が語る。
調理は全くダメだったり、獲物の童貞チェックしたり、変な先輩だけど知識は確かだ。
目的地に着くと、大きな湖が前方に広がっていた。
水面は白い氷に覆われていて、生き物の姿は見えない。
「寒っ!」
アウラウダが身体を丸めて言う。
防寒着を纏っていても、湖のほとりは寒かった。
氷点下二桁の空気が、僕たちの指先や耳先を冷やしてジンジン痛む。
「この寒さが、魚を美味しくするのさ」
シャスール先輩が蘊蓄を語る。
冬の魚は脂が乗って美味いことは、異世界でも同じなんだな。
「じゃあ、釣るか」
「この魔道具で、氷に穴を開けるんだ」
バスチアン先輩が、背負い袋の中から穴あけ器具を取り出す。
棒の先に螺旋状の刃がついた道具で、日本のワカサギ釣りに使われる穴あけドリルに似ていた。
手元のボタンを押すと螺旋の部分が回転し始めて、氷をガリガリと削り始める。
「ウォルは魔法で穴あけしてもいいよ」
「はい」
バスチアン先輩に言われて、僕はカッティング系生活魔法の【くり抜き(エヴィデ)】を使った。
ドリルで開けるよりも圧倒的に速く、魔法が発動した直後に氷はくり抜かれて丸い穴が開く。
「いいなぁ。便利だな、魔法」
アウラウダが呟きながら、先輩から魔道具を受け取って氷を削る。
凍った水面に、四つの穴が開いた。
「さーて、釣るぞ」
僕たちは全長四十~五十センチほどの短い釣り竿を穴の上に掲げて、釣り糸を穴の中へ垂らした。
正にワカサギ釣りそのものだ。
「お、きたきた」
最初にアタリがあったのは、シャスール先輩だった。
釣り上げられたのは、掌に収まるほどの小ぶりな銀色の魚だ。
大きさも形も色も、ワカサギによく似ている。
「こいつはエペルランっていう魚でな、成魚でもこのくらいのサイズなんだ」
「唐揚げにしたら美味しそうですね」
「ああ、間違いなく美味い」
説明しながら、シャスール先輩の顔が悦に入ったように緩む。
僕は日本で食べたワカサギの唐揚げを連想して、口元が綻んだ。
「お、こっちもきたぞ」
「あ、俺も」
「僕もきた」
その後、次々に釣れ始める。
釣れた魚は、僕のマジックバッグに入れて鮮度を保った。
数えてないから何匹か分からないけれど、バケツ五杯くらいは釣れた気がする。
「よーし、今日のお昼は唐揚げにするぞ!」
「作るのは僕たちですけどね」
僕たちは豊漁に大満足しながら、宿舎へと帰っていった。




