ep103:美女が誘う場所
「ごちそうさま。ショウの料理は良いね、頭がスッキリして力が沸いてきたわ」
女性は昨日とは別人のような雰囲気になっている。
異世界ならともかく、日本で作るものに特殊効果は無い筈なんだが……。
「じゃ、久しぶりに行こっか」
「え? どこへ?」
「私のお庭」
女性はソファから立ち上がり、向かいのソファに座っていた僕に手を差し伸べる。
庭って近所なのか? 地元民じゃないと思ってたんだが。
っていうか「久しぶりに」ってどういうこと?
怪訝に思いつつも彼女の手を取った僕は、周囲の風景がいきなり変わって愕然とした。
室内にいたのに、瞬時に屋外へ移動している。
そこは、様々な果樹が植えられ、色々な色彩の花が咲き誇る西洋風の庭園だった。
こんな場所は、近所で見たことがない。
それにさっきの移動、【転移】じゃないか?!
驚きのあまり呆然とする僕は、木々の向こうからスッ飛んできた者を見て、さらに驚くことになる。
「ラ・テールぅぅぅっ! あんた今まで何してたのよっ?!」
少しハスキーな女性の声がする。
ストレートの長い黒髪を靡かせて、赤と黄色の着物を纏う女性が空中を飛んできた。
「あらイリキーヤ。そんなに慌ててどうしたの?」
僕と手を繋いだまま、栗色の髪の女性がキョトンとする。
二人の言葉から、僕はこの女性が誰なのか理解した。
「どうしたもこうしたもないわっ! ……って、あんた! なんで翔太郎を連れてるの!」
「久しぶりにショウの料理を食べて力が満ちたから、【異世界転移】を使ったのよ」
……どうやら、僕はとうとう異世界転移をしてしまったらしい。
僕が幼少期に会った女の子は、異世界の女神ラ・テール様だった。
「異世界転移なんて、そんなお手軽に使っていいものじゃないわ! 百年に1回、勇者召喚に使う力を一般人に使うなーっ!」
イリキーヤ様はキレッキレだ(お怒りの意味で)。
僕は、口を挟む余地が無いので黙っている。
「あら、ショウは子供の頃に何度かここへ来てるから、一般人ではなくってよ」
「……は?」
涼しい顔で言い返すラ・テール様の言葉に、イリキーヤ様が固まる。
……何度かここへ来てる?!
知らないぞ。そんな記憶は無い。
「ショウは私の姿が見えて、触れて、オヤツを食べさせてくれたの。ショウの料理は私の神力を増やしてくれるから、異世界転移を手軽に使えたのよ」
どうやら僕は異世界の神に繰り返し何かを作って食べさせて、お礼に異世界へ転移してもらってたらしい。
……全く記憶が無いけど!
「……一体、何回使ったのよ……」
「んー……、ショウが六歳の頃に、週五ペースだったかしら」
……待て待て待て。
それ、僕の【ぷち神隠し】の原因じゃないか?
まさか週五ペースで異世界転移してたとは知らなかったよ。




