sideウォルクリス10
翔太郎として過ごす休日。
僕は近くの登山道でジョギングをしていた。
日本の山の秋は、赤や黄色に紅葉した木々が多くて綺麗だね。
僕の故郷でも紅葉はあるけど、黄色い葉っぱがほとんどだよ。
(この鮮やかな赤色の葉っぱ、綺麗だなぁ)
僕は立ち止まり、赤ちゃんの手みたいに五つに分かれた葉っぱを見つめる。
この木は、「モミジ」というらしい。
日本の山に赤色が目立つのは、この木があるからなんだね。
心地よい風と美しい風景に心を満たされながら進んでいく。
山の展望台付近まで来たとき、崖っぷちに立つ一人の女性の姿が見えた。
何か胸騒ぎがして近づいていくと、女性は崖から身を乗り出そうとする。
「危ない!」
僕は迷わず女性の腕を掴み、こちらへ引き寄せた。
女性はキョトンとした顔をするけれど、何も喋らない。
「ここから落ちたら無事では済まないから、あんまり身を乗り出さない方がいいよ」
注意してみたけど、女性はボーッとしていて反応が無かった。
心を病んでる人かな?
翔太郎の知識によれば、この崖は自殺の名所らしい。
さっきの行動は、自殺しようとしたのかもしれない。
「何があったかは知らないけど、悩みがあるなら話くらいは聞くから。おいで」
この人をここに置いて帰ったら崖から飛び降りそうな予感がして、僕は手を差し伸べた。
すると、女性はボーッとしながらも、差し伸べた手を掴む。
僕たちは手を繋いで登山道を下りていった。
◇◆◇◆◇
女性はずっと表情が乏しくて、ボーッとしたままだ。
僕の村に、似たような状態のお年寄りがいたのを思い出した。
脳がまともに働かなくなって、心を失った人だった。
この人もそうなのかなぁ。
でも、お茶を出せば飲むし、お菓子も食べる。
心を完全に失っているわけではないのかもしれない。
「お客さん用の布団ここに敷いておくから。眠くなったら横になってね」
僕は居間にお客さん用の布団を敷いてあげた。
女性は無反応でソファに座ってるけど、眠くないのかな?
翔太郎なら、もっと上手く対応できると思う。
僕は女性を居間に残して寝室へ行き、布団に入って目を閉じた。




