ep96:レア装備はまだ早い
「お疲れ様、ウォルくん」
ツッコミ満載の葡萄狩りは、大収穫で終わった。
収穫祝いは、魔法で冷やした葡萄ジュースで乾杯だ。
とれたて新鮮な葡萄の実で作った100%ジュースは、もぎたての果実を頬張ったようにフレッシュで甘く美味しい。
なんか疲れが吹き飛んだ感じがするので、おそらく体力回復効果があるんだろうな。
採れた実を幾つか土産にもらったから、後でリュンヌ様のオヤツを作ろう。
「葡萄をたくさん狩ってくれてありがとう。お礼にその装備はあげるわ」
エルフの女王様は、ゲーム終盤に出てきそうなレア装備を、お手伝いのお駄賃にって言うのだけど。
さすがに、これは受け取れない。
僕は銀のハーフプレートアーマーを自力で脱いで、剣を添えて大広間の床に置いた。
「いえ、これは頂けません。見習い騎士が持つには性能が良すぎます」
「性能が良いのは駄目なの?」
僕がお断りしたら、玉座に腰かけた女王様はコテンと首を傾げる。
ベルさんのお母さんなんだけど、容姿は若い女性と変わらない。
キョトンとする彼女に、僕は受け取れない理由を話した。
「子供のうちから良い装備を使い続けていると、性能の良さに慣れてしまって、自分の実力が分からなくなります。だから今は、国から支給された革鎧とショートソードを使った方がいいんです」
「ウォルくんてば、本当に12歳?」
「子供とは思えない考え方をするのね」
女王様とベルさんはちょっと怪訝な顔をしたものの、まさか中身がオッサンだとは気づかなかった。
もしもウォルクリスだったら、喜んで受け取ってしまっただろう。
だが、オッサンは少年を甘やかさない。
マジックバッグやレア食材は貰ったけど、武器や防具のレア品を子供に持たせるわけにはいかないのだ。
「見習いや下っ端のうちは、重くてハンデになるような武具を使った方が成長できると思います」
「そういえば、あの人も同じようなことを言っていたわね」
女王様は、誰かを懐かしむように言って微笑む。
彼女は玉座から立ち上がり、僕が床に置いた鎧と剣に歩み寄る。
「じゃあこれは、ウォルくんが立派な騎士になるまで保管しておくわ」
女王様が鎧や剣に手をかざすと、それらは異空間に消えていった。
一方、ベルさんは何か思いついたように、肩から下げたマジックバッグの蓋を開けた。
「それなら、ウォルくんの成長に良い物があるわ。はいこれ着けてみて」
ベルさんがバッグから取り出したのは、黒い革製のベルトらしき物。
サイズ的には腰ではなく、手足に着ける物のようだ。
両手で受け取ってみると、ズッシリ重かった。
これは、あれだ。
オッサンが武道を習っていた頃に、道場で流行ってたやつ。
手足に重い物を着けて生活して、筋力を養う装備だ。
それなら、今のウォルクリスにちょうどいい。
「これはパパが使ってた物を再現して作ったんだけど、重さ加減はどお?」
「重すぎず軽すぎず、いい負荷です」
「なら、葡萄狩りのお礼にあげる」
葡萄狩りに行って、筋トレグッズを貰うのは僕くらいだろうか?
その日から、両手両足に重りを仕込んだベルトを着けるという、どこぞのアニメキャラみたいな生活が始まった。




