ep89:エルフの茶葉とフルーツタルト
「ウォルくん、いつでも遊びに来てね。御近所なんだから」
「はい。また来ますね」
まるで隣のおばちゃんみたいなノリで、エルフの女王様は言う。
確かに、宿舎から最短1分ぽいけど。
普通の人は気軽に入れる場所じゃないよなぁ。
「そうそう、この茶葉も持っていってね」
「ありがとうございます」
お土産が増えた。
プリン1個しか持っていかなかったのに、どんだけ倍返しなんだ。
でも、この茶葉は良いな。
風邪が治るらしいから、結構役立ちそう。
美味しいし、リュンヌ様にお出ししたら喜んでくれるだろう。
マジックバッグ、エルフの茶葉、世界樹の樹液と葉っぱ、木の実に至っては山ほど貰った。
お土産は大事に使わせてもらおう。
僕はベルさんと共にエルフのお城を出て、来た道を歩いていく。
すぐにリシュ城と騎士団の宿舎が前方に現れた。
「いろいろ貰えてよかったね」
「貰いすぎてなんか申し訳ないですよ」
「いいのいいの、大した物じゃないから」
ベルさんはレア品に対する感覚がズレてる気がする。
まあでも、それが普通に生活の中にあったのなら、そうなっちゃうかもしれない。
そういえば、ベルさんのお父さんはどんな人なんだろう?
でも、それを聞くのは憚られる。
人様の家庭の事情に踏み込むのはよくないからね。
◇◆◇◆◇
今日のリュンヌ様のお夜食は、木の実たっぷりのタルトだ。
材料は、バター(ブゥール)、砂糖、薄力粉、卵黄。
トッピングとして、妖精たちがくれたナッツとフルーツ。
カスタードクリームの材料にも卵黄、砂糖、薄力粉に加えてヴァッシュの乳を使う。
まずはタルト生地を作ろう。
室温に戻して柔らかくしたバターに、砂糖を練り込む。
卵黄を加えて更に混ぜる。
薄力粉を加えたら、木ベラで切るように混ぜてなじませる。
冷却魔法で冷やした後、小分けしてタルト型に押し付けるように広げる。
パン焼き窯に入れて、焼き色を見ながら焼き上げる。
生地を焼きながら、カスタードクリームを作ろう。
ボウルで卵黄と砂糖をよくすり混ぜ、薄力粉を加えて混ぜる。
温めた牛乳を加え、混ぜてから鍋に入れる。
焦げないように絶えずかき混ぜながら中火で加熱、とろみがついたら火を止める。
ナッツは軽く炒ると、クルミやアーモンドのように香ばしくなった。
フルーツは皮をむいてカットしたら、そのまま食べられる。
焼きあがったタルト生地にカスタードクリームを入れて、フルーツを乗せて、刻んだナッツを散らせば、フルーツタルトの完成だ。
「見た目も華やかで、甘くて美味しい」
リュンヌ様は丁寧に味わいながらタルトを食べ、嬉しそうな笑顔を浮かべる。
ちょっと身体が弱い彼女には、妖精たちがくれた木の実がちょうどいい。
「このお茶も凄く美味しいわ。それになんだか、身体が軽くて調子がいいみたい」
「接骨木花のお茶ですよ。風邪や身体の痛みに効くそうです」
リュンヌ様は土産の茶葉を気に入ってくれた。
いつも飲んでいれば、風邪予防になりそうだ。
「これなら、庭を走ってもきっと疲れないわ」
「転ぶと危ないので走るのはやめて下さい」
元気になったらお転婆が増す予感もするが。
健康であるなら何よりだと思う。
危ないことをしそうになったら、全力で止めよう。




