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オッサンと少年の入れ替わり。オッサンは異世界で美味い料理を作り、少年は日本で無自覚に色々やらかす。  作者: BIRD


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ep88:樹液と葉っぱ

 料理人たちがプリンを作り終えると、王宮の広間は試食パーティ会場と化した。

 僕も試食させてもらったのだけど、ソースに蘇生効果があるプリンに勿体ない感が半端ない。

 しかしエルフたちは誰も気にしてない様子だ。


「ねえベルさん」

「なぁに?」


 僕は展望テラスで美味しそうにプリンを食べているベルさんに声をかけた。

 ベルさんがキョトンとして振り返る。


「世界樹ってどこにあるの?」

「ここ」

「ここ?」

「この木がそうよ」


 予想通りではある。

 エルフの女王様が住んでる木だし。

 やたらとデカイし。


「じゃあ、あのシロップはこの木から?」

「うん。頼めば出してくれるよ」

「???」


 もう驚くことはやめようと思ったが、まだネタはいっぱいあるようだ。

 ベルさんは両手を掲げて、テラスの上の枝に呼びかける。


「クラン、樹液を分けて頂戴」


 途端に、枝が1本スーッと下がってきて、ベルさんの手に小さな壺を置いた。


「ありがとう」


 元の位置へ戻っていく枝を見上げてベルさんが微笑む。


 なんで枝が動くのかは、気にしないでおこう。

 ファンタジー世界ではよくあるじゃないか。

 しかし、その壺どこから湧いたの?

 樹液って木の幹に傷をつけて採集するんじゃなかったっけ?


 ツッコミたい気持ちでいたら、ベルさんはそれに気づかずまた誰かに話しかけた。


「クラン、これウォルくんにもあげて」


 途端に、僕の前に壺をブラ下げた枝が降りてくる。

 ちょっと戸惑っていると、壺はズイッと前へ差し出される。

 ベルさんの真似をして両手を出すと、その上に壺が乗せられた。


「あ、ありがとう」

『欲しかったらいつでもおいで。君、イリキーヤ様の加護もちでしょ』


 お礼を言ったら、頭の中に不思議な声が響く。

 驚くことを諦めたオッサンは、それが世界樹の声だと理解した。


『イリキーヤ様から話は聞いてるよ。ラ・テール様が帰ってこないとボクも困るから、樹液でも葉でも出してあげる』


 再び声が響き、枝が降りてきて、今度は軸の部分を束ねられた葉っぱが手の上に置かれる。

 保管しやすいように束ねてくれたんだろうか?

 紐は、植物繊維のようだ。

 多分この葉っぱも、なんか凄い効果があるんだろうな。


「ウオルくん良かったね、その葉っぱがあれば、怪我をしてもすぐ治るよ」


 ……はい、予想通り。

 治る怪我の範囲は、きっと無制限なんだろう。


「私もね、包丁でうっかり指を怪我したときは、その葉っぱを巻いて治してるんだよ」


 ……世界樹の葉が絆創膏代わりにされてるー!


「あとね、力仕事して筋肉痛になったときも、その葉っぱを貼るとすぐ治るよ」


 ……それはオッサンが欲しいー!


 よし、決めた。

 ラ・テール様がこの世界に戻ってきたら、エルフの森の特産品セットを日本の僕に送ってもらおう。

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