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17.翠のカラー決め(2)

「俺がピンクなのか?」


「いいんじゃねーか」真理亜がブロンドの髪をかきあげた。「間抜けヅラの貧乳女に、いけすかないクソガキ。そんなのにピンクをやらせるぐらいなら、オッサンがやるほうがましだ」


代弁ありがとうございます。間抜けヅラの貧乳女に、品のないコールガール。そんなのをピンクにするぐらいなら、いっそうのことピンクはジョーク枠にして、さえない中年オヤジにやらせたほうがまだましですわ。


そんな本心は横においておき、歌うように翠はいう。


「立花さんのようなダンディで大人な男って、ワタクシたちのような年頃の女子から見ても、すごく素敵ですわよ。ピンクの資格は充分ですわ」


「まあ、レッドでなければ何でもいいのだが……」そういう立花の顔は警戒に満ちていた。「それで、レッドは欠番か?」


「いいえ。総帥に兼務いただきたいのですわ」翠は京子に熱い視線を送る。


「なるほど。意義なしだ」立花は頷いた。


京子はしばらく考える仕草をとってから、「わかった。私が兼任しよう」と応え、「正式にレッドが決まるまでだが」と、つけ加えた。


あなた以上の適任者は、そうはいませんわよ。


翠は心中でほくそ笑みながら、「決まりですわね」と手を叩く。


「ではさっそく、これからはお互いのことをカラーで呼びましょう!」


「カラーでか?」立花は眉を上げた。


「ええ、そうですわ、ピンク。でもレッドだけは総帥とお呼びすべきですけどね」


ピンクと呼ばれて立花は顔をしかめたが、特に不満を口にすることはなく、「仕事に戻る」といってメインルームから出ていった。


「パパはパパだけどぉ、翠ちゃんのことはグリーンって呼んであげるねー」甘ったるい声で由紀はいって、立花のあとを追う。


「アタシは好きに呼ぶぜ。じゃあな、クソガキ」真理亜もそう残して、いなくなった。


「さて、いうまでもないが、今日は解散にしよう」京子が腰をあげたのと同時に、電話の受信音が鳴った。


京子はその場でコンソールをだして、電話に応じた。


どうやら相手は副官の一条のようだ。憤った声が鮮明に漏れ聞こえる。


「大佐秘書のブタ女、総帥のミスを報告したら小遣いやるとか、恥知らずなことをいいやがる!」


京子が翠に視線をやるも、そのまま話を続けた。


「キミはどう返した?」


「近所の少年少女が集まったので、ゴミ拾いや草むしりなどで地域貢献していると報告しました。グリーンやイエローの素性は秘密にしてます」


「昨日の報告でいうと、イエローは陸軍開発の人体兵器ということだったな。それが野に放たれて好き勝手やっているが、陸軍はどう考えている?」


「イエローの解放には宮内庁が噛んでいます。すったもんだがあって、一切の関与を禁止されました。だから、陸軍はイエローがどこでなにをしているのか知りません」


「そうか」と京子はわざとらしく考える仕草をとってから、口調を強めた。「……さて、一条クン。この件もさることながら、先日のテロ事件では、情報提供どころか海軍レスキューすら出動させた。ただのバイトであるはずのキミが、どういう経緯でそのようなことが?」


「あの、その、宮内庁には高校時代のクラスメートがいて……海軍には親戚がいまして……」打って変わって一条はシドロモドロに弁明する。


「またあとで、もう少しマシな言い訳を聞こう」京子が電話を切った。


「驚きましたわ、イエローが人体兵器だなんて! 映画の中だけの話だと思ってましたわ。たしか……昔にそのような映画がヒットしたとか」


「私が生まれた年に公開された『アンカーリッシュ』という映画が有名だ。小学生のころにテレビで観たが、人体兵器の人権をテーマにしたヒューマンドラマだった」


「『アンカーリッシュ』なら、観たことがありますわ。昔の映画ですけど、名作って感じでしたわね。ワタクシとしては音楽が気にいりましたわ」


「なるほど」と頷いた京子が、瞳を鋭く光らせた。「ところでグリーン、一条とは何者だ?」


「総帥をサポートする副官だと聞いていますわ」


「彼はただのバイトだ。そのバイトが陸軍の最高機密に触れられるとでも? 海軍レスキューを動かせるとも?」


「さあ? ワタクシにはなんとも……」


「とぼけるな、グリーン。なにを隠している? なにをたくらんでいる?」


そう静かにいった京子の瞳はますます鋭さを増していく。身震いしそうになるのをこらえて、翠は席を立つ。


「一条さんというお方のこと、ワタクシは一切知りませんわ。ではそろそろ失礼します」


早足で翠は部屋を出た。


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