憎悪
「涼介にサプライズがありまーす!」
「え、どしたの急に」
今日はクリスマスでもお正月でも、ましてや俺の誕生日でもない。
両親が仰々しい箱を持ってきて、俺の前に置いた。
「じゃーん!」
俺は箱を覗き込むと、そこには茶色い芝犬の子犬がいた。そうだ丁度この時期ぐらいだった。母親が友人の所で生まれた子犬を譲ってもらったのが
「チャッピー…」
前世で角田慎吾に殺された芝犬のチャッピーが俺の目の前にいた。
「なに?もう名前決めたの?」
俺はチャッピーを泣きながら抱きしめる。チャッピーは俺を慰めるようにペロペロと俺の顔を舐めた。
「なに、涼介。泣くほど嬉しいの?」
「うん…うん…うん。」
チャッピーは俺がいじめられて落ち込んで帰ってきたとき、いつも俺を尻尾を振って玄関まで迎えにきてくれた。俺の家族のような存在だった。
もう角田慎吾はいない。チャッピーはもう安全なんだ。
一一一一一一一一一
「おかえりなさいませ旦那様。」
たくさんの執事やメイドに迎えられ、スーツ姿の男が黒い高級車から降りてくる。
この男こそ、日本トップとも言える大企業の社長。栗原翔の父親の栗原幸三である。
彼の凄いところはわずか1代にして、会社を日本のトップまで押し上げたやり手であることだ。
鋭い眼光と自分の身内でも容赦ない性格など、刺されても血が出ない怪物や吸血鬼なんではないかと噂が流れるほど、強引な手段で会社を大きくしてきた。
「翔は帰ってきているのか?」
「はい、お呼び致しますか?」
「そうだな。10分後に俺の部屋に呼んでおいてくれ。」
10分後、部屋のドアにノックの音が響き、栗原翔が緊張した様子で部屋に入っていく
「し、失礼します。何か御用でしょうか…」
「ああ。執事の梶原から報告は聞いたんだが、この成績はどういうつもりだ翔?」
「80点は全教科キープしていますが…」
「何故レベルの低い学校で1番じゃない?私立に落ちて、恥をかかせた上に、公立でこの成績とはまた恥をかかせるのか。お前には優秀な家庭教師もつかせてるのだぞ?」
「すいません。父さん…次は必ず1番を」
「兄に比べてお前はどうしようもない失敗作だな。もういい下がれ、次不甲斐ない成績を取れば、お前とは縁を切る。そのつもりでいておけ」
「はい、分かりました…。」
栗原翔には少し歳の離れた兄がおり、兄は有名私立に合格し、常にトップの成績でスポーツもでき、将来の跡継ぎ候補と呼ばれている。対して翔は兄に全ての能力を取られた出涸らしと呼ばれ、蔑まれている。
翔自体決して能力が低いわけではない。兄が優秀すぎたためだ。
それ故に彼は劣等感で大きく性格が歪んでしまった。
「くそっ!!」
家では常に兄と比べられ馬鹿にされ、そして最近では学校でも涼介に良いようにやられている。今まで学校で他者を踏み躙ることで心のバランスを取っていた栗原翔の精神は限界に来ていた。
(全部全部ぶっ壊してやる。)




