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告白

30000pv有難うございます。

面白いと思った方はブックマークや評価などをしていだけると嬉しいです。


「どういうことだよ。エントリーしてる選手しか出られないんじゃ」


「うちは人数が少ないから、こうなることに備えてお前の名前を勝手にエントリーさせたんだ。悪いとは思ってる!一生のお願いだ。」


「わかったよ。でも野球自体そんなやったことないから、期待すんなよ」


この言葉は本当だが、実際は野球スキルはある程度上げており、150キロのストレートと複数の変化球を隅に投げられるコントロールを持ち、尚且つ全ポジション守れ、長打力もあるどこかの野球ゲームみたいなスキルを持っている。


正直このスキルを使うのは卑怯なため、あくまで大会中は目立たず、足を引っ張らない程度に力を加減しよう。


そして試合当日、相手は全国大会の常連校帝王中学。名前からしても猛者感が拭えない。

エースの間宮翼は落差のあるフォークが武器の本格派ピッチャーだ。


「おいおい、俺らの今日の相手人数ギリギリじゃね。」


「これは今日コールドで決まっちゃうな。」


帝王中学のベンチから嘲笑うかのような声が聞こえる。


「くそ、言わせておけば!」


「でも帝王が相手じゃ勝ち目なんか…」


「大丈夫ですよ!先輩!俺が打って見せます!」


「そうだな。何とか4番のたけしの前にランナーを集めよう!」


弱気な先輩たちをたけしの言葉が鼓舞する。

先程とは違い皆の目には闘志がみなぎったいた。


(俺の打順は9番でポジションはライトか。初心者だと思われている俺を1番最後に据えて、ボールがあまり飛んでこないライトに据えるのは妥当だな。)


試合が始まり、予想通り帝王のエースの間宮からバットを当てることすら難しく、スコアボードにゼロを積み重ねていく。ただうちもエースの高橋先輩もコントロールが良く、丁寧に低めに集めるピッチングで2回までお互い0点で終えることができた。


(そして俺の打順が回ってくる。あまり本気を出さないようにしないと)


俺はバッターボックスに入り、足元を整える。ただうつつもりはない。空振りするイメージで


(弱小校の9番打者だ。ここは変化球入らない。ストレートだけで抑えられる。)


(わかった。ねじ伏せてやる)


キャッチャーのサインが出し終わると、間宮は舐めたように半笑いで球を放る。

そのストレートはコースも甘く、球速も130キロしか出ていなかったが、弱小校として恐らく舐められているのだろう。


「カッキーン!!」


「あ、やべ」


あまりにも舐めた球だったので、思わず手が出てしまった。

ジャストミートしたボールはぐんぐんと伸びていき、バックスクリーンに直撃した。


「ほ、ホームラン!!」


「涼介良くやったぞ!!」


相手のバッテリーは信じられないと言う顔で歩いている俺を見ている。

味方の観客席側は大きな歓声に包まれていた。


「み、見て!弥生!涼介がホームラン打ったわよ!」


「う、うん。凄すぎてびっくりした…。」


休日だと言うのに弥生やえりか、そして由美や楠木、そして雪ちゃんまで応援に来てくれている。俺は観客席のみんなに向けて小さくガッツポーズをした。


(予想外の事だったけど、みんなが喜んでくれてるならいいか。後はテキトーに手を抜こう)


俺の後の打順の先輩がアウトになり、4回表帝王中学の攻撃の際にアクシデントが起きる。

帝王中学の選手の打った打球が高橋先輩の利き腕に当たり、負傷したため、一旦試合を止めることになったのだ。


「くそ、すまんみんな…。」


「高橋先輩のせいじゃないですよ。先輩のおかげでここまで来れたんだし…」


「ただこの試合で結果を残さないと廃部になってしまうかもしれないのに…こんなとこで…」


「え、それはどういうことなんだたけし」


「うちはサッカー部が強いだろ?野球部は最近は結果も残せず、人数もギリギリ。だから野球部のグラウンドをサッカー部に渡そうという話が出てるんだ。」


「だから結果を残せば廃部を免れると思ったのに、みんなすまん…。」


「誰かピッチャーを出来る人はいないんですか?」


「いるにはいるが、帝王の打線を相手にするようなピッチャーは…」


「俺にやらせてください。」


「涼介正気か?お前ピッチャーできんのか」


「ああ。俺を信じてくれ!たけし!」


『ピッチャー高橋くんに変わり高原くん。高橋くんはそのままライトに入ります』


試合のアナウンスが聞こえ、俺はマウンドに立つ。廃部がかかってるというからには帝王中学には悪いが、本気を出させてもらう。


「アクシデントがあったのは申し訳ないが、こちらも全力でやらせてもらう。」


打席には帝王の4番八代。今大会打率8割越えの化け物の選手だ。そしてその目は俺が先程ホームランを打ったからか油断も何も感じられない。


「ズバーン!」


勢い良く音が鳴る。西条は身動きすら出来ずにボールはミットに収まらず落球している。

スコアボードに表示された球速は155キロ。


(何だこの球は…こんなの見たことがない…)


西条だけでなく、自分のチームと帝王のベンチ内にもざわめきが起こる。暫く静まり返った後、観客席が一斉にわいた。


「なんだあいつ!!」


「やばすぎだろ!!」


「何だあの選手はデータがまるでないぞ!?」


高校のスカウトや他校の偵察もざわめき出す。帝王が勝つムードになっていた空気が一球だけで変わってしまった。


(たけしが落球してしまった。少しやりすぎたな。)


俺は二球目を放る。次はチェンジアップだ。チェンジアップとはストレート同じフォームで投げる球速の遅いボールのことだ。

ストレートの速いリズムで慣れた目にはタイミングが合わせづらく、魔球とも呼ばれる。

この球ならたけしも取れるはず


「なっ!?チェンジアップだと!?」


西条はストレートに的をしぼっていたため、その球速差になす術もなく空振りした。


「たけし、次スライダー行くぞ!ミットは動かさなくていいからな」


最初から宣言しておけばたけしも取りやすいだろ。


「くそ、舐めやがって!」


西条は苛立ちを隠せないでいた。

俺はボールを放ると、西条のバットの前でボールは大きく曲がり、たけしのミットに収まった。


「な、なんなんだこいつは…」


帝王のベンチはまるでお通夜のように暗い雰囲気になっていた。チームで一番のバッターの西条が手も足も出ないともう打てるバッターはいないと思ったからだ。


そして、そのまま試合は進み、俺は一本のヒットも四球も出すこともなく、4回からだが完全試合を達成した。


「すげーよ涼介!これで全国だ!!」


「たけし、お前が連れてきた助っ人やばすぎだろ」


試合後、球場を出ると高校のスカウトやら。試合を見た観客たちに囲まれる。


「高原くん是非うちの高校で甲子園を目指そう」


「おい!うちが先だぞ!君には4番とエースを確約しよう」


「あの…盛り上がってるところ申し訳ないんですが…俺この試合で野球は辞めるんで」


俺の言葉に周りが固まっているうちにそそくさと退散する。たけしとの約束もこの一試合だけだったからな。それに俺は野球をやったる暇はない。俺には目的がある。

まだ栗原と我妻、そして弥生を虐めた奴らが残っている。


「今日涼介くんかっこよかった!」


「ありがとな。休みなのにきてくれて」


「ううん、私が見たかったから」


俺は野次馬からうまく退散した後に、待っていた弥生と合流し帰路についていた。

雪ちゃんは問題が発生する前に救うことができた。これで弥生が虐められることはもうない。この笑顔だけは守らないといけない


「どうしたの?涼介くん」


「いや、何でもない。ちょっと疲れちゃったからさ」


「り、涼介くん!あの!話があるの!」


顔を真っ赤に染めて、弥生は俺の名前を呼ぶ。どうしたんだ。一体何の話が


「わ、私ね。ほんとダメダメだけど、頑張って涼介くんにふさわしい女の子になるから!」


「え、それって?」


「す、好きってこと!またね!!」


弥生は俺の返事の前に顔を真っ赤にして、走って家の方向に走っていった。


(え、弥生が俺のことを好き…そんなまさか。そんな素振りあったか)


自分の顔が熱くなっていることに気付く。まさか中学生に告白されてこんなに動揺するとは、前世でアラサーの俺はなんて情けないのだろう。正直に言えば素直に嬉しい。あんな可愛くて良い子が俺を好いてくれるなんて。


その光景を見ていたものがいるとは知らずに

俺は困惑しながらも幸せを噛み締めていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 俺の後の打順の先輩がアウトになり、4回表帝王高校の攻撃の際にアクシデントが起きる。 帝王高校の選手の打った打球が高橋先輩の利き腕に当たり、負傷したため、一旦試合を止めることになったのだ。 ↓…
[一言] 誤字脱字です。 相手は全国大会の常連校帝王高校 ↓ 中学ですよね
[良い点] 弥生に危険が迫るという感じですね 続きが気になります
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