野球の助っ人
雪ちゃんの両親と兄貴は結局あの事故で亡くなってしまったそうだ。
偶然にも程がある。あれだけのことがあった後に、事故が都合良く起こるなんて
それよりも心配なのは雪ちゃんの精神状態だ。揉めていたとはいえ、家族を二人も同時に失ったのだから。二人のお葬式の日、彼女は何も変わったところはなかった。恐らく気丈に振る舞っていたのだろう。
彼女が歪んでしまう前に救うと言う目的は達することはできたが……。
「高原くん。この件は本当にありがとね。」
「いや…俺はいいんだ。それこそ滝川さんは大丈夫か?」
「大丈夫だよ。お父さんが仕送りしてくれるみたいだし、学校も普通に通えるよ。」
「じゃなくて…お母さんとお兄さんがあんなことになって、心配なんだ」
「ああ、そのことか!大丈夫だよ…ってのは嘘になるかも…一人ぼっちになっちゃったから」
「そうだよな…でも由美や楠木や他の友達も学校にはいっぱいいる。滝川さんは一人じゃないよ!」
「高原くんはその中に含まれてないの…?」
「も、もちろん!俺も友達のつもりだよ!」
「じゃあ滝川じゃなくて、雪って呼んでね?私も涼介くんって呼ぶから!」
「わ、わかったよ。雪ちゃん」
当初の目的である雪ちゃんと仲良くなることが出来て嬉しいはずなのに、弥生の仇であるという事実が頭から離れない。
前世の出来事は言ってしまえば、この世界の人間には関係がない。
やった事実すら存在はしないし、罪はないのだ。
ただそれを認めてしまえば、俺がやったのは復讐ではなく、ただの人殺しになってしまう。
一一一一一一一
「ねぇ、聞いたうちの中学の野球部が結構いいところまで進んだらしいよ」
「凄いじゃん。人数ギリギリの部活だったよね確か?」
そんな暗いニュースばかり続いていたが、明るいニュースが少し舞い込んできた。
たけしが所属する野球部が順当に大会を勝ち進んでいるようだ。
これは前世にはない出来事だ。何故ならシニアに行った角田が肩を壊し、シニアを辞めた後、中学の軟式に途中参加した。そして栗原たちとつるむようになり、部室を占拠したりと、野球どころの環境ではなかったのだ。
部員9人とギリギリながらも躍進を続けているのは、たけしの活躍によるものだろう。
前世ではたけしは甲子園にも出場し、選手生命は短かかったもののプロになった。
これだけ活躍するのも当然の話だろう。
「涼介お前に頼みがある!」
そんな軟式野球の大会の真っ只中の時に、珍しく真剣な顔でたけしが話しかけてきた。
「練習中に怪我人が出て…このままじゃ試合に出られないかもしれないんだ。頼む助っ人として出てくれ!」




