忍び寄る魔の手②
「それでそのハンカチがあんたを助けた王子様から貰ったやつ?」
「お、王子様なんて誰も言ってないだろ!ただちょっと格好良いなって思っただけで…」
「いやー私は嬉しいよ。男なんてうぜーって言ってたあんたに春が訪れて。親友冥利につきるね!」
「だーかーらー!そんなんじゃないって!ただハンカチも返したいし…お礼も言えてないからさ…」
「でも名前もわからないんでしょ?」
「うん、見た目から同い年ぐらいかなって事しか…。」
「馬鹿だね。連絡先ぐらい聞いておきなさいよ。」
「だって、すぐ行っちゃってそんな時間なかったんだよ…。」
「そういえばテストどうだった?」
「もち。赤点!」
「威張って言うな…。」
今日はこの前に行われたテストの結果発表の日、上位30位まで順位が廊下に貼り出され、残りは個別に通知される。そのテストの順位を見に、俺とたけしは来ていた。
「そういえばまたテスト学年1位だったんだって?凄いなお前」
「まぁな。」
「一位がお前で二位が滝川さん、三位が佐伯か。あの生けすかないチャラ男に良く勝った!」
「たまたまやまが当たったんだよ」
勉学スキルは高校レベルまで上げているため、中学のテストは勉強しないでも満点を取れるところまで涼介は達していた。ただスキルシステムがなければ前世がダメダメだった俺は赤点回避が関の山だろう。
「あーー!あの時の!」
「ん?」
テストの結果を見て、談笑していると、通りすがり様に金髪の女子生徒が何かを気付いたように。俺に近寄よってくる。
「誰だ涼介?知り合い?」
「いや知らないけど」
「あ、あのこの前路地で不良に絡まれてるところを助けてもらった!」
女子生徒の言葉でようやく思い出す。あの時はギャルっぽい格好だったため、制服を着てると全く気付かなかった。
「あーあんま夜中出歩いちゃダメだよ?あの辺危ないからさ」
「う、うん。私、佐伯ベリース渚。き、君の名前を教えてほしい!」
「て、佐伯って、俺の知り合いに佐伯エリアス圭っているんだけど」
「あいつは私の双子の兄だよ。あんなやつなんかより!名前は!」
グイグイと来るところが佐伯と似ている。それにこの金髪は染めているわけでなく、地毛だったとは。
「俺は高原涼介だ。まさかあいつに双子の妹がいたとは…」
「なになにこの人が例の王子様?」
「ん?王子様って?」
「いやいやいや!なんでもないから!もうあっちいってて!!」
「わーったよ。後で聞かせろよー!」
「それでこの前は有難う!これハンカチ!ちゃんと洗ったから!」
佐伯の妹は丁寧に畳まれたハンカチを両手で俺に渡してくる。
「別に良かったのに。ありがとな渚!」
「な、渚って!?何で名前呼び!?」
「いや佐伯って二人いるから紛らわしいかなって思って」
「な、紛らわしいんだよ!」
「佐伯って呼んだほうがいいのか?」
「嫌なんて言ってないだろ!渚でいい!」
「何か感情が忙しいやつだな」
本当に騒がしいところが兄とそっくりだ。
「あ、あのさ良かったら私とら、ライン交換してほしんだけど、この前のお礼もしたいし…」
「おう、いいよ。」
「ま、まじか。嘘だったら承知しないからな!」
「何のために嘘つくんだよ」
俺は笑いながら携帯を取り出す。ピコンという音とともに渚のアイコンが出てきて、それをそのまま追加する。
「ま、またラインするから!ちゃんと返しなさいよね!」
そのまま言いたい事だけ言って去っていく。こういう所も佐伯の妹だなと思って自然と笑ってしまった。
「おもてになることで羨ましい」
「別にそんなんじゃないだろ。お礼したいだけだって」
「いやいや鈍すぎだろ。この件は宮村とえりかに報告しておく!」
「何であいつらに言うんだよ」
俺とたけしはテストの順位を見ると、そのまま教室に戻った。何だか教室が騒がしい。何かあったのか?
「遅いぞ!この卑怯者が!」
教室に入るやいなやすごい剣幕で俺のクラスの担任前田友男が俺に対して罵声を浴びせる。俺は何かやってしまったのか。全く記憶にない。
「先生どういうことでしょうか?」
「お前が今回のテストカンニングしたことはわかってるんだよ。」
「カンニングって俺より上の点数がいないのにどうやってカンニングするんですか?」
「「「そうだ!そうだ!」」」
クラスメイトも俺に賛同して、声をあげてくれる。ひどい濡れ衣だ。
「テストの答案を盗んだって言ってるんだ。その証拠がある!防犯カメラの映像にお前とよく似たやつが映っていてな!」
「俺とよく似たやつって、俺の特徴のない顔なんていっぱい似たやついるでしょ」
「うるさい!お前の荷物を改めさせてもらう!」
「まあいいけど、何もないよ。」
前田はそう言うと俺の荷物を漁り始めた。そして数枚のプリントを取り出す。そこには見覚えのないテストの答案が入っていた。
「ほら、これが証拠だ!」
「先生普通に考えてくださいよ。テスト終わったら普通捨てるでしょ。何で俺が後生大事に証拠を持ってるんですか?」
「それはお前がカンニングするような馬鹿だからだろ!」
めちゃめちゃだ。全く話が通じない。この杜撰な計画を仕組んだ奴がいる。恐らく一一
周りを見渡すと栗原や天童たちがニヤニヤと笑みを浮かべている。いかにもオツムの足りない中学生の考えそうなことだ。
「いいから職員室にこい!」
「わかりましたよ。それで俺がやってなかった場合はどうしてくれるんですか?」
「土下座でもなんでもしてやる!」
「言いましたね?約束は守ってもらいますよ?」




