遠足
「弥生えもんアドバイスをくれ」
あれからえりかに何度も接触を試みようとしたが、ことこどく失敗してしまった。
もう手はないと、俺もたけしも意気消沈してしまっていた。
そんなときは、俺の唯一の友達、弥生えもんの出番だ。前世では幾度となく俺を助けてくれた。
「たけしくんとえりかちゃんを恋人にさせたいんだよね」
「そうなんだよ。でも全然上手くいかないんだ。こういうのどうも苦手で…」
「まず恋人にさせるんじゃなくて、友達からなんじゃない。全然仲良くもないのにくっつけようとするから失敗するんだと思う。」
生まれ直してる俺よりも恋愛IQが高いぞ、この幼稚園児。
確かに恋愛経験がなさすぎて分からなかったが
そもそも前提として、えりかはたけしが嫌いなんだ。
段階的にステップアップしなきゃいけないところなんだな。
「やっぱりそうだよな。弥生ありがとう!恋愛の達人だな!」
「そ、そんなことない。私も好きな人いるからだし…」
「へー誰なんだそいつ!まさかたけしか?」
「違うし…涼介くんなんて知らない…」
急に不機嫌になる。女の子は分からない
とりあえず弥生のアドバイスで俺らが見当違いのことをしてるのは分かった。
意図的に二人きりにしようとしたり、プレゼントをあげたりとかは
確かに全然親しくない人から、やられたら気持ち悪いな…。
それから、俺とたけしはあらゆる下心を消し、友達になろうと媚を売り続けた。
その結果今度行われる遠足で同じ班になるところまでの関係修復はできた。
というか遠足とか何十年ぶりだろうか
行き先は幼稚園から近所の国営のかなり大きな公園。
季節によって満開の花が咲き、夏には花火、クリスマスにはイルミネーションの会場となる。
6人一班で男子3女子3という班分け
前世での俺はこういう時必ず余りものになったものになり、弥生が同じ班の女子に文句を言われつつ、無理やり俺を班にねじ込んでくれたものだが、今回は班を組むことができた。
俺とたけしとモブキャラ男子、そして弥生とえりかとえりかといつも一緒にいるクール女子椿ちゃんという面子と班を組むことができた。
俺たちがえりかと同じ班になれたのはこの椿ちゃんの力が大きい。
椿ちゃんはえりかと弥生と仲が良く、そして弥生と俺は仲が良い、上手く人との繋がりを利用した感じだ。
ただ暫くやっていた媚売りのおかげでえりかの大きな反対を受けることなく、同じ班になることができた。
まあ班といっても保育士が必ず近くにいるから自由はない。一緒にご飯を食べるとかその程度のものだ。あとはある程度行き先が選べる程度の自由がある。
この公園の名物はまず3つある。
①季節の花が咲き乱れる花壇
②カラフルなハンモックがある巨大なアスレチック
③巨大なトランポリン
とりあえずここは抑えて後は適当に回ればいいか。
俺は何十年ぶりかの遠足に心踊らせながら駄菓子屋でお菓子を選んでいる。
とりあえずここはみんなで分けあえるポッキーか、それとも完全に趣味に走り、うまい棒やポテトフライを買い込むか。
予算は限られている。俺のセンスが問われるな。