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機械の街の守護者

前回から一か月経ってる…だと…!?

「おーいレイン。一人盛り上がってないでどういう状態か教えてくれ」


 エピッククエスト。その言葉を見てテンションが振り切れた俺を見てステップが声をかける。その言葉に冷静さを取り戻した俺は説明を始める。


「エピッククエストってのは一言で表すならマップやら情勢に影響を及ぼすクエストなんだ。前作の例を挙げるとモンスターの群れが出てきてその撃退クエストが始まったり、封印が解けてドラゴンが数体復活からの複数のレイドバトルが発生したり…後は火山が噴火して新たなフィールドが出来るみたいなのもあったな。場合によってはとんでもないことになったりするけど今回はこの街が砂漠に出てくるので間違いないと思う。条件もそれっぽかったし。あっ、それと条件を満たせば誰でも受注できるようになるけど本当に受注できるのは最初の一人のみでクリアしたらもうそのクエストは出来なくなる。説明としてはこれくらいかな」


 ここまでの説明を少し早口に止まることなく言い切る。少し早口になってたあたりまだ興奮が収まっていない気がする。しかも一気に話したせいで少し引かれてるし。なんてこった。


「えーと…。とりあえず今回は条件を満たしたからこれが出てきてクリアしたら砂漠に街が出来るんだよね?」


 AYAが俺の説明の情報をざっくりとまとめて確認してくる。それに対して首を縦に振る。クリアした結果に関しては完全に予測でしかないが町が出来ることは間違いない。それにプラスで何かが起きる可能性もあるが、そればっかりは予想もできないしどうしようもないので口には出さない。


「じゃあ、受けたほうがいいのかな?」


「それに関してはAYA次第だな。受注さえしてしまえばここに転移できるようになると思うからいつでも挑戦できるし、しっかりとパーティ組んでからくることも出来る。しないならしないで掲示板にでも情報投げとけば誰かがクリアしてくれるだろうし、それも選択肢としてはあるよ。報酬は惜しいけどエピッククエストに関しては敵が強いことのほうが多いからな」


 俺の言葉にAYAはかなり悩んでいるようだ。彼女の性格上、受注した状態で抱え込んで強くなってからクリアするみたいのことはしないだろうから余計に悩んでいるのだろう。頭を悩ませているAYAを横目に見ながら俺は手元に開いていた掲示板に目を向ける。タイトルにエピッククエストと付いている掲示板のログを遡って見ていくが、どうやらアナオンが発売してから今までまだエピッククエストは見つかっていないようだ。最新のほうを見てみると実はないんじゃないかという話まで出てきている。書いてる内容通りなら俺たちが見つけたこれが初エピッククエストということになるが…。


(絶対抱え込んでる奴いるよなぁ…)


 今回みたいにある程度結果が予測しやすいクエストならいいが、そうじゃなかった場合が問題だ。可能性としては大型のレイドバトルが始まったっておかしくない。そうなると現状の俺ではついていけるかすら怪しい。かといってせっかくのイベントなのに逃すのは面白くない。これは早急に強くなる必要があるかもしれない、そう決意を新たにしていると「よしっ!」という声が聞こえてくる。顔を上げるとAYAがどうするかを決めたようだ。そのまま見守っているとAYAはシステムメッセージに向けて手を伸ばし、画面の『はい』の文字を押した。


「結局受けることにしたんだな」


「うん。せっかく見つけたんだから受けないともったいないよね!」


 ステップとAYAが一言二言交わすとクロロが動き出した。


『ありがとうございます!僕についてきてください』


 ディスプレイにそう表示されるとクロロが転がりだした。俺たちは静かにクロロの後を歩いていく。その途中でステップが話し出す。


「ついてきてくださいって言われたけどどこに連れていかれるんだろうな」


「まあ、クエストの名前が機械の街の守護者だったから、十中八九その守護者ってのがいるところじゃないかな。もしくはこの街を砂漠の上に出すための機構か動力がある場所ってところかね」


 なるほどと頷くステップをよそにクロロは進み続ける。やがて辿り着いたのは重々しい模様が描かれた鉄の扉。扉の前に着くとクロロは止まり再びディスプレイを表示させる。


『この扉の先には街の動力部があります。そこで操作をすればこの街を地中から出すことが出来ます。しかし、動力部を守るボットがいて誰も触ることが出来ないのです。』


 ここで一度言葉が途切れる。そして文字を読み理解する。クエスト名の機械の街の守護者、この守護者というのは動力部を守るロボットのことを表しているのだろう。そしてこの言葉に続くのはこうだ。そのロボットを倒してください。ゲームでよくある、ありきたりな展開だ。目的を達成するのに邪魔なのがいるから倒してほしい。おそらくステップもAYAも同じ結論に至っているだろう。だからこそ続いて表示されたクロロの言葉に閉口してしまった。


『お願いします…どうか彼を…僕の友達を…役目から解放して…あげ…て…くだ…』


 ここまで表示するとクロロは力なく転がりディスプレイも消えてしまった。沈黙が訪れる。そうなってもなお誰も話さない。ただのゲームなら反応の大小はあれど「まじか…」で終わる一言。だがしかし、VRであるこのゲームでは、実際の雰囲気を感じられるこのゲームでは、その一言は衝撃であった。自分も限界が近いのに友のために耐え、そして他人である俺たちに倒してほしいとお願いする、どのような気持ちなのだろうか。所詮はゲームだと言ってしまえばそれまで、しかし考えずにはいられなかった。そんな空気を打ち破るようにAYAが大きく元気な声を絞り出す。


「倒そう!クロロのお願いだもん!」


 その一言に元気を取り戻した俺たちは顔を上げる。そしてステップが続ける。


「倒そうってこの三人でやるのか?」


「き、厳しいかな?この三人でできたらなーと思ったんだけど…」


「敵の強さ次第かな…。まあ、多少強くても滅茶苦茶に頑張ればなんとかなるとは思う」


 この三人で勝てるのかという疑問に答える。極端な話、俺がすべての攻撃を受け切り二人にダメージを与えてもらえば勝てるのだが、これを言えば呆れられそうなので言わない。


「じゃあとりあえず行ってみようよ!」


「そうだな。敵の強さを見てから決めても問題ないし」


 二人の意思はまとまったようだ。それを見て俺も心を決める。


「気合入れてタゲ取りするとしますか!」


 俺の一言に頼もしさ半分呆れ半分の視線を向けながらも三人で扉に向かう。扉の前まで来ると自動ドアのようにひとりでに開き、中の様子が少しだけ見て取れる。広めの空間で全体が薄明るく光っており、ぱっと見では何かがいるようには見えず、奥のほうにはクロロが言っていた動力部らしきものが見て取れる。


「敵っぽいのは見当たらないね」


「入れば出てくるんだろうな…行くぞ」


 ステップの言葉に頷き、扉の先へと足を踏み入れる。そして聞こえるいかにもロボットですというような合成音声。


「侵入者ヲ確認。迎撃ヲ開始スル」


 大きな棺のような形をした物体がふわりと降りてくる。その物体は地面に触れる寸前、少しだけ浮いた状態で制止する。そして、一瞬の静寂の後に現れるシステムメッセージ。


『機械の街の守護者「オルフェン」との戦闘を開始します。』

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