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4-19話 アップアンドダウン


 ギャリシーの戦い方は所謂我流でしかない。

 知識と技術の粋を集め磨かれた歴史ある武術、剣術と比べてしまえば少々以上に不格好である。

 だが、逆に言うならば、幼少時よりその様な我流で戦い続けて来たという事であり、同時に不格好ながら技術、力を試しながらであっても生き延び続けたという事になる。

 故にギャリシーは、戦いの空気には人一倍敏感である。


 だからこそ、わかる。

 さきほどのわずか一瞬、刹那よりも短い時間の間だけだったがその間プランという小娘が化けたという事に。


 そしてもう一つ分かる事があった。

 今背中を向けているプランは、本人が最初に言った通りの、貧弱で何も出来ない、ギャリシー的に言えばカモで雑魚である。

 必死に意識を戦いに向けようとはしているがそれ以上に怯えが強く見え、その弱弱しい気配は小さな草食獣のそれであり誰の目から見ても餌である。

 この状態ならば、この地下で一人となれば十秒も生きられないだろう。


 理由は不明だが、それ位今のプランは弱かった。


「……終わったか」

 ギャリシーがそう言葉にすると、プランはくるっとこちらの方を向き、首を横に振った。

「ううん。まだ残ってる」

「あん?」

「……ギャリシー君。ごめん。私無理だった。手足を砕いて、気絶させたけど……それだけしか……。だから……私の代わりにその人にトドメを……」

 プランは震える声でそう言葉にした。


 プランは人を見る目がある。

 だからこそ、理解出来てしまった。


 今倒れているこの人はもう駄目だと。

 それどころか、プランにはこの人が人なのかすら疑わしい気持ちとなっている。


 人としての機能すら残っておらず、人なのは外見のみ。

 そして、その存在は生きているだけで意味もなく人を殺す。

 それこそ魔物と同じ様な存在と言っても良い。


 だからこそ、何があっても殺さないといけなかったのだが……プランには出来なかった。


「……あ? てめぇの命令なんて二度と聞くか」

 嫌悪を隠そうともせずそう言葉にした後、ギャリシーは倒れている浮浪者の姿を見つめ、予備のショートソードを手に取りその心臓めがけまっすぐ振り下ろした。


「これはお前の命令じゃねぇ。俺の意思で、俺が復讐したんだ。だから俺の――」

 そこまで言った直後、ギャリシーは危険を察知しプランを抱えてすぐに距離を離れた。

 死体と思われていた何かが暴れだしたからだ。


 心臓に間違いなく剣が刺さっているのに手足をバタバタと暴れさせ、まるで張りつけにされたゴキブリの様に気味の悪い動きをする。

 しかも、質の悪い事に斬る能力はそのままの様で振り乱した腕の軌道上にある通路がバターの様にサクサクと切れボロボロになっていく。


 そしてそのまま数分暴れた後、その死体は動きを止め静寂が取り戻された。


「……終わった……か」

 ギャリシーはナイフを投擲して腕に突き刺し、反応がないのを確認しそう呟き周辺警戒を行う。

 そこで特に問題がないとわかると抱えていたプランを引きはがそうとした。

 プランは離れなかった。

「……おい。もう終わったぞ」

 そう言ってもプランは首をぶんぶんと横に振り、それどころかギャリシーの胸に顔を押し付けた。

「おい馬鹿止めろ気持ち悪い! お前ふざけんなよ!」

 女性に対して酷い言葉ではあるが、ギャリシーの忌憚のない、真心からの言葉だった。

「ふざけてないよ! 何でもするって言ったじゃん! まじで怖いんだから!?」

 そう言葉にするプランは声だけでなく足も震え全身で振動を起こしいてる。

 文字通り、消え入りそうな程だった。


「本当に怖いの……臆病なの……私何も出来ないの……」

「……いつもはどうしてるんだよ」

「使う時は……誰か、親友とかに慰めて貰ってる。だから今はギャリシー君を親友と思って甘えてる」

「死んでもごめんだな糞女と友情をはぐくむなんてな」

「煩い煩い! もう限界なんだから甘やかせ!」

 プランは逆ギレしてみせた。


「じゃあさじゃあさ! 親友か彼氏どっち扱いが良いの!? 私はどっちでも良い気分なのよ今!? それ位辛いんだよ!?」

 最悪な脅し文句にギャリシーは顔を引きつらせる。

 比喩でも冗談でもなく、その脅し文句は本気だった。


 顔に苦悶が浮かぶ。

 額に汗を掻く。


 本当に嫌で嫌でしょうがないのだが、約束した手前引きはがす事が出来ない。

 いつもなら約束など無視するし媚を売る女がいたら殺そうとする。

 だが、今回だけは出来ない。

 ゲーナとの約束だからだ。


「……糞が。親友の方が百万倍マシだ」

 苦々しく……本当に苦々しくギャリシーはそう呟き、汚れている物を触る様な手つきでプランの背中をとんとんと叩いた。

 プランは全力で泣きながら全力で、これでもかと甘えた。




 それはギャリシーにとって、人生最大というべき不幸であった。

 もしも過去のギャリシーがそれを知ったならば、迷わず自死を選ぶだろう。

 それほどの不幸である。


 それは、嫌な相手であるプランを抱きかかえるという状況が――ではない。

 確かにこれも彼にとっての不幸だが……残念な事にギャリシーの不幸はそれだけでは終わっていなかった……。


 ゲーナが最後の最後に頼み込んだのはプランだが、彼はその前に自分の部下にも命令を下している。

 クラスの全員を呼んでギャリシーを助ける様にと――。


 つまり何が起きたのかと言えば……。


「ギャ、ギャリシーさんが女と抱き合ってる!?」

 完全武装したクラスメイトは殺人犯が死んで通路がぐちゃぐちゃになっている事よりも、その事に驚き大声で騒ぎだした。


 ギャリシーは神様を呪いたくなった。


「……おい。もう良いだろ。離れろ」

「まだ」

 それだけ答えプランはギャリシーに強引にしがみ付いた。

 そこまで仲良くないという事もあり、回復には時間がかかっていた。


 ギャリシーは見えない空を見て、現実逃避したくなった。


「そうか……。ギャリシーさんは子供が好きだったから――」

「それ以上言ったら殺す」

 クラスメイトの言葉を遮り、ギャリシーは悲しそうにぽつりと呟いた。

 ただ、その言葉に虚偽がなかったためクラスメイトは皆黙り込んだ。


「……そうだぞお前ら。失礼だろ。ただの幼児体形に子供なんて言ったら。つまり……ギャリシーさんは相手の外見じゃなくて、中身に惚れたんだよ」

「おい馬鹿やめろそうじゃない」

 だが、必死に否定すればするほど泥沼にはまり、気づけばクラスメイト一同の目線は生暖かいものとなってしまっていた。


「……俺らちょいと離れておきましょうか?」

 そうクラスメイトが言うと、他のクラスメイトが否定する。

「やめとけ馬鹿。死体の傍で致すのはいくらギャリシーさんでもきついだろうが。……あ、ベッド整えておきましょうか?」

「何もしねーよ」

「……プラトニックな関係なんすね……。俺らみたいな我慢出来ないのは無理だから少し……こう……胸が温かくなるこれは何て言えば良いんだダリアン?」

 話しかけられたダリアンは少し考え、そしてギャリシーの方を見つめぽつりと呟いた。

「……尊い、ですかね?」

 その言葉に合わせ、クラスメイトはギャリシーの方を見つめ『尊い』という言葉を連呼した。


「ゲーナさん。貴方のおかげでギャリシーさんは生き延びてますし、こんな素晴らしい愛のカタチを見せてくれています。……これを見たかったから、頑張ったんですよねゲーナさん……」

 そう言ってゲーナ団の四人は泣きそうな顔で空を見た。

「……もし見てたら、ゲーナもグルディも絶対腹抱えて笑っているわ」

 ギャリシーはぶっきらぼうにそう呟いた。

 あいつらなら、自分の事とプランの事を知っているあいつらなら間違いなく笑う。

 ギャリシーは心の底からそう断言出来た。


 プランはガラの悪い人に囲まれ、いつもなら平気なのだが今だけはどうしようもなくギャリシーにしがみ付きただ小さくなって震えていた。




 ギャリシーの事をクラスメイトは揶揄わなかった。

 というよりも二人が恋仲である事が真だと思い込み、揶揄うという気持ちよりもあのギャリシーがという驚きと、自分達のリーダーが女性と親しく出来る唯一の人が出来たいう事実に心が温かくなっていたからだ。

 そこに嫉妬や妬みなど、ましてや奪ってやるという気持ちなんて、例え屑であっても起きるわけがない。

 今まで女性を見ると殴ったり蹴ったりが当たり前で、その嫌悪と憎悪に染まった顔を見て来たクラスメイトにとって、それだけでプランという女性は特別なのだと理解出来た。

 ……実際は違ったとしても、クラスメイトはそう思っていた。


「……ごめんねギャリシー君。もう大丈夫」

 そう言って落ち着き申し訳なさそうに謝るプラン。

 その言葉を聞きクラスメイトは再度驚いた。

「ギャリシー……君!?」

 ギャリシーの実年齢は聞いた事がない。

 だが、間違いなく二十台半ばは過ぎており、プランと見比べたら兄妹位に見える。

 その上ギャリシーはいつもなら皆に尊敬され()()付けで呼ばれている。

 にもかかわらずの君付けというのは、クラスメイト達が再度驚くのに十分な理由だった。


「君付けという事は……もしかして見た目とは違う歳と……」

「いや。お姉さんぶりたいとか親しみとかかもしれんぞ……」

 そんなひそひそ声に眉を顰めながら、ギャリシーはプランからわざとらしく離れた。


「そいや、たしかにそうだ。どうしてお前は俺の事を君で呼ぶんだ?」

 単純な疑問として、ギャリシーはそう尋ねプランは少しだけ悩んだ様な表情を見せた。

「んー。何となく? クコ君とかギャリシー君とかは何故か君って呼んじゃうんだよね。クコ君にも直せって言われたけどついねー」

 そう言ってプランは少しだけ、ほんっとーにわずかにだけ申し訳なさそうに微笑んだ。

「そうかよ……。まあ良い。クコと同じなら許してやるよ」

 そう言って小さく微笑むギャリシー。

 それはクラスメイト達にとって最大の衝撃だった。


 あのギャリシーが、女性相手に微笑んだ。

 実際はクコの事を考えての笑みだがクコの事を知っている者はおらず、しかもこのタイミングでの微笑みである。

 どう見てもプランに微笑みかけている様にしか見えなかった。


「……あの、ところでギャリシーさん。一つ質問が」

 ゲーナ団の一人が、おずおずと手をあげそう尋ねた。

「おう。……何だ? 『ゲーナが死んだのにのんきに女となんて話してんな!』て忠告なら素直に――」

「いえ。ゲーナさんがいても間違いなくもっとやれって言うと思うのでそれは気にしないで下さい」

「はははははは。人生最悪の出来事を更新しそうな勢いだな本当……。泣きたい」

 それは心の底からの言葉だが、照れ隠しにしか見えなかった。


「それで質問なんですが、どうやってあの野郎を殺ったんですか?」

「ああ。俺じゃねー。俺はトドメだけだ。こいつだよこいつ。ゲーナがわざわざ連れて来た。ま、秘密兵器って奴だ。……地上の奴だから慣れ合うのはアレだがな」

 そう言われたプランはクラスメイトの方に小さくぺこりと会釈をした。


「こんにちは。私の名前はプラン。特技はパン作りとお掃除。よろしくね」

 そう言ってプランがものおじせず微笑むと、クラスメイト達は動揺を見せプランと少しだけ距離を取った。


 普通の女性が、それもさっきまで怯えていた女の子が堂々とした態度で笑顔を向ける。

 そんな顔向けられた事がない彼らにそれは喜びよりも戸惑いの方が多く残っていた。


「……ちなみに言っとくが、死ぬほど認めたくないが俺よりつえーからコイツ。手を出すのは止めとけマジで」

 そうギャリシーが言った瞬間、クラスメイトはギャリシーにする様な尊敬を主に示したお辞儀を、一斉にプランに向けた。


「よろしくお願いしますプランさん!」

「……さ、さん付け……なして……」

 プランは目を丸くしながらそう呟いた。

 その困った様子を見て、少しだけギャリシーは溜飲を下げる事が出来た。


 しかしその五分後、クラスメイト達と談笑をして、まるで今までずっと居たかのように仲良くなったプランを見てやはり気に食わない存在である事に気づき、ギャリシーは顔を顰めた。




「……すいません。楽しそうに談笑しているところ申し訳ありませんがよろしいでしょうか?」

 そう言って話騒がしい集団の方にニコニコ顔で出て来たのはイースだった。

「えと、どちら様です?」

 プランはギャリシーとそのクラスメイトが緊張した様子となるの見て、きょとんとした顔で首を傾げた。

「彼らの担任です。イースと呼んでください」

「はいイース先生」

「素直ですねぇ。さすが地上の方。ええ、ええ。色々と言いたい事があるのですが、とりあえず……本来ここに来るのは駄目んですよプランさん」

「ありゃ。……うん。何となく理由はわかります」

「ええ。こちらの世界は独房の様なものですので、なので申し訳ありませんがお帰りを」

 そうイースが言葉にすると同時に、イースの背後からイヴが申し訳なさそうな顔で出てきてプランの顔を見ていた。


「あらイヴおねーさん」

「案内は彼女がしてくれますので、そのまま地上まで戻って下さい。それと……ここの事はあまり話さない様にしてくださいね。一応地上と地下は分けられた空間ですので」

 その言葉にプランは素直に頷き、そして悲しい目をイースに向けた。

「本当は何か言おうと思ってた。何か文句を付けて、なんならビンタの一発でもぶち込もうと思ってた。でも……うん。止めとくね。イース先生……」

 そう言ってプランはイヴに従い、そのまま地上に出て――。


「ちょいと待った」

 出て行こうとしたプランをギャリシーが引き留めた。

「ん? 何ギャリシー君。私と別れるのが名残惜しい?」

 さっきまでの悲しそうな目はどこに行ったのか、ニヤニヤした目をギャリシーに向けプランはそう言葉にした。


 ギャリシーの背後でクラスメイト達がやっぱり……と言うような事を口走りだす。

 イースは珍しく驚いた様な表情を浮かべた後、いつものにやけ面の三割増し位の顔でギャリシーを見つめた。

「違うわ糞女。お前には興味がない。まあちょっと待ってろ」

「ん。別に良いけどさギャリシー君。そんな強い口調を私に使うと……」

「使うと何なんだよ。あ?」

「……クラスメイトさん達にツンデレと思われて生暖かい目で見られるよ?」

 ギャリシーは後ろの視線に気づき、しかめっ面となった。

「……お前にはほどほどに無関心な感じで行くわ。まあちょっと待ってろ」

「あい」

 その言葉の後、ギャリシーはイースの方に目を向けた。


「おや。ラブラブはもう良いんですか?」

「そんな事よりも重要な事がございまして。そこの死体、俺がやりました」

「ええ。知ってますよ。おめでとうございます」

「二人で、やりました」

「愛の力ですねぇ」

 ギャリシーは顔を顰め文句を言おうとして……堪えた。


 プランの所為で今かなりぬるい空気になっているが、それでもちょいと反抗するだけで殺されるのに代わりはない。

 生殺与奪権を持つイースに逆らうなんて出来るわけがなかった。


「だから……ですので、報酬は俺とそいつの二人、って事で良いんですよね?」

 その言葉にイースは微笑み頷いた。

「もちろんです。プランさんの場合は地下ルールに生きていないので後日別の形で……まあお金とか物とかでお支払いする予定ですが……それがどうかしました?」

「いえ。それだけわかれば良いです」

 そう言った後、ギャリシーは再度プランの方に目を向けた。


「さっき俺らが戦った化け物には報酬がかかってた。んでお前にもその権利がある」

「うん。それでどうして欲しいの?」

 決して善意で尋ねたわけではないとわかるプランはそう言葉を返した。

「その権利を俺に譲れ。代わりに俺が何かお前にやる」

「……ふむふむ。理由は?」

「ひとつはクラスメイトの為、一つは俺の為に使いたい願いがある」

「……でもさ、それって私払い損にならない? いやどうでも良いんだけどね。ゲーナ君の分と考えたらそれの方が正解だろうし」

「だから俺が出来る事はしてやる。何でも良いぞ。なんなら抱いてやろうか? もちろんそういう意味で」

「それただの罰ゲームじゃん。しかもお互いの」

「違いねぇ」

 そう言ってギャリシーは苦笑を浮かべた。


「オッケー。代わりにギャリシー君。私に貸し一ねー」

 そう言ってプランはウィンクをしながら指を一本立てて見せた。

「……まあ、そうなるわな」

「そして貸しがあるうちは私とその友達に対して悪い事するの禁止ね。悪口も含めて」

「……は?」

「利子にしては軽い方じゃない?」

 そういってプランは再度ニヤニヤした表情を浮かべた。

「……オーケーだ。俺のプライドを無視するなら受けるべき内容に違いはない。ほれ。話しは終わりだ。さっさと戻って二度とこんな場所に来るなよ」

「はいはーい。じゃギャリシー君またねー。みんなもさよならー」

 そう言ってプランは笑顔で手を振り、困った顔を浮かべるイヴと共にその場を後にした。


「それで、強欲なギャリシー君は何をお願いするのですか?」

 プランがいなくなったのを確認し、イースはニコニコした顔でそう尋ねた。

 何時もと同じ、上っ面だけの恐ろしい笑顔である。

「ああ。一つは前言った通り、ダリアンを地上に返して欲しい。ぎっちぎちに契約書で縛っても良いから。どういう形であれ、こいつはここにいるべき奴じゃない」

「ええ。それは当然。悪い事をすればどうなるかの教育にはなったでしょうしね」

「……ちっ。最初からそのつもりかよ」

「さて、どうでしょうかね」

 そう言ってイースはニコニコとした顔のままとぼけて見せた。


「それで、もう一つは何ですかね?」

 そうイースが尋ねると、ギャリシーは後ろにいるクラスメイトの方を見つめた。


「お前ら、悪いが俺は行く場所がある。だからお前ら、俺がいなくても頑張って生き延びろ。ゲーナ団。お前ら四人が俺の代わりになれ。良いな?」

「え?」

 全員何を言っているのかわからず茫然とする中でも、ギャリシーは真剣な表情で全員に目で訴えた。


 それは決して崩せぬ決意であり、それを受け取ったクラスメイトは数分ほどざわついた後、全員が納得した表情で頷き返した。


「……ギャリシー君。君は地上には帰れませんよ?」

 イースは地上に行きたいのだと考えギャリシーに何か言われる前にそう言葉に出した。

「わかってるよ……。俺の行きたいものは地上じゃなに。むしろ逆だ」

 そう言葉にして、ギャリシーは下を指差した。


「あるんだろ? ここよりももっとひでー世界が。ここがぬるま湯に感じる様な腐った場所がよ。俺をそこに連れて行け」

「……理由は?」

「力がいる。ここじゃあ何もかも足りないんだよ」

 その言葉には、憎悪、憤怒、嫉妬、後悔、様々な感情が強く入り交じっており、情に厚いギャリシーにしては珍しく友情を一切考慮しない重たい感情だった。


「……ええ……ええ。良いですよ。()()()()に来る事ですね。それはむしろありがたい位です。私は歓迎しましょう」

 そう言ってイースはいつもと違った笑みでギャリシーを見つめた。


ありがとうございました。

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