表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/93

地獄の新入社員選考8

約1カ月ぶりです…。


 白雪社に興味を持ったのは1つの雑誌からだった。『White』という名の雑誌を2年前に友人が持っていたのがきっかけだった。その雑誌を熱心に読み込む友人を見て、なんの雑誌を読んでいるのかと聞いてみた。友達が答えたのはホワイトという言葉だった。ホワイトと言われて思い浮かぶのは白。何となくこの言葉が気になり大学の帰りに本屋に行きその雑誌を探してみた。そうして見つけたのが『White』。友人の持っていた雑誌と同じパッケージを見つけ、手に取ってみる。そこには知っている芸能人が載っていた。それは、茜である。発芽茜はある会社でバリバリと働きながらも、モデルとして、デザイナーとして働いているできる女だ。そうある番組で取り上げていた。雑誌には発行所が書かれていた。『SNOW WHITE』。今度は白い雪…。どういうことだろうかと疑問に思いながらも雑誌を購入し、家に帰宅。家で『SNOW WHITE』について調べてみると『SNOW WHITE』のホームページを見つけた。そこには


 「白雪社の事務所『SNOW WHITE』へようこそ。本事務所では様々な分野に渡る芸能人がおります。興味のある方はぜひともアクセスしてみてください」


と書いてあった。このことから、『SNOW WHITE』は白雪社という会社の一部らしい。私は今度は白雪社について調べてみる。そして調べてみて驚いた。この会社はできてからまだ1年も経ってないのだ。そこからの私は早かった。白雪社の情報を集めに集めて、そして、すごさを知ると同時に自分もこの会社の一員として働きたいと思った。この会社と共に成長していき、日本を見ていきたい。漠然とした思いが胸を駆け上がった。


 そして、2年の歳月が過ぎ、大学2年だった私は現在憧れに憧れていた本社の前にいる。本社は40階建てでとても大きく、そして綺麗な建物であった。私は自分の聖地を見上げて心を震わせた。これから、この中に入り、社員として雇われるために頑張らなくてはいけない。心を落ち着かせて周囲を見回せば、たくさんの人がビルに吸い込まれていく。恐らく、ここにいる人全員が敵なのだ。私は意を決してビルの中へと入りこむ。


 現在は8時。受け付けは今丁度開いたばかりであるはずなのに多くの人が受付に並んでいて広く見えるはずの玄関ホールが狭く見える。私はその長蛇の列の最後尾にちょこんと並びながらも社内を見回す。とても綺麗な玄関ホールだ。会社の顔はエントランスからと何処かの著名人が本で言っていたけれど、この会社の良さがこの玄関で分かる。手入れの行き届いた室内。高級そうな家具。受付の制服も遠くからではあるけれどとても綺麗で品がある。そして、この玄関の造りがなによりも良いと感じる。確か、設計は大峰進。デザインは発芽茜。この2人の共同制作はかなりの出来栄えで、建築界を一時騎騒がしたこともあると聞いた。そして、今並んでいる列が乱れないように捌いている会社員。笑顔でさりげなく誘導している所にプロの腕前を感じる。この会社を建てた社長はどれほどすごい人なのだろうか。年齢も性別も名前も分からない社長を私はこっそり渋めのイケメンと想像している。きっと何でもできる天才的でハイスペックな男性なのだろう。このまま妄想を続けると渋めでハイスペックでパーフェクトなイケメンと新人OL(私)の恋物語が始まりそうなので控えておく。列はこの妄想している間にすごい進み、あと2名ほどで私の番だ。相変わらず捌くのが速い会社員たちである。


「はい、次の方」


そうこうしているうちに私の番になり、あらかじめ手に持っていた書類を受け付けの方に見せる。と同時にその人の顔を見ると、美人だった。黒い髪を後ろでお団子に縛り、切れ長の目はさりげなくアイシャドウが施されている。薄いぐらいの化粧が丁度似合うのであろう、美女だ。きっとすっぴんでも美女だ。


「はい、ありがとうございます。高村たかむら愛良あいらさんですね。こちらを持ちあちらの係の方について行ってください」


笑顔でそう言われ、思わずお辞儀をして言われた人の所へ向かった。


「こんにちは。待合室へご案内しますのでこちらへどうぞ」


カッコいい男の人がそう言って私を案内してくれる。私は静かに男の人について行きながらも周囲の観察をする。タイル貼りの床が通路に入ると絨毯の床に変わっている。灰色の絨毯はどこか無機質に見えながらも暖かみを私に与えてくれる。踏み心地はとてもいい。フサフサしすぎて歩きにくいなどということはなく、さりげなく足音を和らげてくれるといった毛心地だ。壁には一定ごとに扉がつけられ、部屋の数はかなりあるように見える。その通路を係りの人はまっすぐ進み、通路を通って行く。その後には階段が続いている。その階段の一番近くにある扉を係りの人が開ける。


「ここでお待ちください」


そう言われ、部屋の中に入るとそこには沢山の就職活動生がいた。面接ブックを見直したり、勉強をしている人たちもいるので音を立てないように静かに座る。


その後も続々と部屋に人が入ってきて、200人程がこの部屋に入った。シーンとしている中、緊張のあまりにトイレに行く人も何人かいる。暫くしたのち、部屋の中に放送が流れた。


「皆さん。おはようございます。本日はわざわざこの白雪社にお越しくださり、ありがとうございます。現在9時20分を回っております。あと10分ほどで面接が始まりますのでお手洗いが必要な方は早めにお済ませください」


この優しげなイケメンボイスは…副社長の西条葉月様だ!副社長がわざわざしてくれるアナウンスで室内が僅かに騒つく。そして、おそらく会社の人であろう人が書類を片手に入ってくる。その瞬間に静まり返る室内。私も少し嫌な汗をかきながらも静かにその人の動向を伺う。


「トイレに行きたい方はどうぞお行きください。半には点呼が始まりますのでその時にはいてください」


会社の人…女性はニコリと笑ってそう言い、壁の隅へと歩いて行った。そして、1人の男の人が部屋を出た。恐らくトイレへと向かったのだろう。それを皮切りにしてほとんどの人がトイレへと向かう。私も無性にトイレに行きたくなり、その大勢に加わった。


 トイレはたくさんの人がいたが係の人がトイレの整列及び、案内をしてくれたためそんなに待たずに出てこれた。私が出てきたころにはもう行列は消えていた。


 部屋に戻ると相変わらずの重たい空気。音を立てないように静かに席に座り、最後の1人が席に着くと点呼が始まった。


 「では、名前と番号を確認していくので受付で渡された受験票を見せてください」


女の係の人がそう言うと、部屋には4人の人が入ってくる。5人で分担して見るのだろう。まるで大学受験をしているような気持ちでそれを見守る。


 点呼が終わり、とうとう面接となった。


 「では、1番から5番の方こちらへどうぞ」


 「6番から10番の方こちらへ」


どうやら、一気にやってしまうみたいで部屋には4分の3しか部屋に残っていない。つまり、50人が面接でいなくなった。


 「51番目以降の方は呼ばれるまでお待ちください」


そう言って点呼をしてくれた女の人は去って行った。再び静かな部屋。私は心を落ち着かせるために読書をすることにした。白雪社の社長が書いたと噂される『私の理想論』という本を読みながら。



――しばらくして、ドアが開く。どうやら次の面接グループが呼ばれるらしい。


 「66番から70番までの方どうぞ」


私は68番だ。静かに立ち上がり係の人の前に行く。係の人は私達を番号順に並べ、先頭を歩き出す。先頭の係の人の頭を見ながら進む。階段を上り二階へと向かう。2階は2階でとても綺麗な廊下が広がっていた。2階は1階よりも明るい。その廊下の真ん中ら辺の扉を開け、私たちを通す係の人。部屋に一人一人「失礼します」という言葉を言って入る。私もお辞儀をして顔を上げると面接官3人の顔がしっかりと見える。真ん中は…第一課の藤堂課長だ。食品界のプリンスの麗しくもカッコいい姿に思わずときめくが、脳内の冷静な部分が訴えかける。そうだ。もしかしたらこれは罠かもしれない。プリンスのイケメンっぷりにメロメロになる女=男目的=雇う必要なし。そうだ。冷静になれ。


 冷静になった私は椅子の後ろを通り椅子の左側に立つ。


 「どうぞ。座って下さい」


プリンスの声が響き、私たちは失礼しますと席に着く。…やばい。声もイケメン。ささやかれたら腰が抜けるレベルのかっこよさだ。少しテノールで甘い響きのその声に、酔いそうになるのを耐える。


 「では、65番の方から自己紹介お願いします」


カッコいい声がこだます部屋で65番の人も緊張しているのか少し上ずった声で自己紹介を始める。それを見たプリンスはクスリと柔らかい王子スマイルを浮かべこうおっしゃった。


 「緊張しなくても大丈夫ですよ。私たちはただ質問しているだけですから。友人に話すような感覚で大丈夫です」


お、恐れ多い!!!そのイケメンで歯がきらりと光るようなスマイルで敬語を使うなんて!次元が違う。まるで天界と人間界の如く次元が違う。全身の汗という汗が噴き出るが、私はなんとか無表情でそして、これで見納めとばかりにプリンスの顔を凝視する。瞬きを忘れ、目が乾きそうな時だった。


 「では、68番さん。自己紹介をお願いします」


遂に私の番が来たのだ。


震える声で、かといって相手に悟られないように冷静を装って話す。


 「私は詩島うたしま大学情報経営学部、高村愛良と申します。パソコン関係に関しては得意です。よろしくお願いします」


 「高村さんですね。よろしくお願いします」


イケメンプリンスが私の名前を呼んだ。綺麗なボイスが私の中でリピートされる。けれど今はそれどころではないのだ。


 「よろしくお願いします」


悶える心を押さえてお辞儀をする。その後、質問は別の人に移る。


そして面接は続き、終了した。


 「これで面接は終わりです。お疲れ様でした。これより、待機時間になります。午後1時半に点呼になりますので、それまで外でご飯なり、社内の1階で休憩するなりしてください」


 プリンスがそう締めくくり、私たちは部屋を出た。


 部屋を出てからも警備員がいるので気が抜けない。私は社外へ行き、ご飯を食べることにした。あとは筆記試験。頑張ろう。



悩みに悩んで気づいたら1か月…。しかもクリスマス前。こ、今後もよろしくお願いします!(クリスマスの閑話を出そうか悩んでいます。時間があったら出そうと思います)


本編に出てきた書籍、覚えてますか?(どうでもいいので覚えていなくて大丈夫です)


アップル

白雪社の出版雑誌。売れ行きがいい。夏目 亮がプロジュースしたモデルが出たり、発芽 茜がモデルとして出たり、西条 葉月がきちんとした格好で出ていたり、藤堂 吹雪が出たりしており、ファンが買っていくからだ。


ノエル

小説。ページ数は436ページの長編。53ページの8行目は「ちょっとばかしのいたずらをやってみた」という言葉から始まり、むかつく相手に主人公が仕返しをしようとするシーンである。


White

白雪事務所が発行している雑誌。新人モデルから、人気モデルまで事務所に属している人を紹介していく雑誌。西条 葉月もモデルとして登場する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ