閑話:クリスマス
メリークリスマスです。最初は、三人称で始まります。
これは白雪社が結成されて2年目の冬。まだ建てたばかりの40階建ての本社の会議室ではある話し合いが行われていた。
「どうするか…。去年はなにをやったのか」
「覚えてないんだよね。副社長が覚えているのでは?」
顔の整った男性とメガネをかけた顔の整った女性が話をしている。その話し合いの場にいるのは6人。藤堂吹雪、発芽茜、大峰進、秋風琴音、夏目亮、東原純の6人だ。部屋には他にはおらず、全員が悩ましげな顔を浮かべている。
「…誰か、副社長に聞いてきてよ」
夏目亮がそう言ってため息を吐く。
「…行けないよな。副社長室には絶対いないだろうし、社内を散歩しているのかもしれないし、…自宅にいるのかもしれない」
大峰進がそう言ってため息を吐いた。
「社長に聞くのも気が引ける。新たな事業の開拓の為に必死に伝手を探している所だろうしな」
東原純がそう言って悩ましげに顔を手で覆う。
「絶望しかないな」
真顔で発芽茜がそう言う。若干きりりとした目で言っていたので恐らくドヤ顔なのだろう。進がそれを見通してツッコミを入れている。
「茜…考えることを放棄するなよ」
「ん?何の音?外から音が聞こえない?」
ふと、夏目亮の言葉に室内の全員が黙る。するとかすかにだが音が聞こえる。どんどんどんと大きな音が段々近くなってくる。
「だ、段々と大きくなっているような気がしますが…」
秋風琴音が顔をひきつらせてメガネを元の位置に戻した。
ドン!
大きな音と共に少し振動が来てドアが開いた。
「みんな!今年はビンゴ大会を行うよ!ビンゴの景品は社内のものなんでも自由権!かっこ1日限り!」
けたたましい音と共に登場したのはこの白雪社の社長、白雪誠であった。皆が驚いて沈黙した中、白雪誠の後ろにいた男だけがおろおろと声を発している。
「しゃ、社長。レディが大きな音を立てて扉を開けるのははしたないですよ。それに、社長の手もドアノブに手をついて汚れているに違いありません。拭かせてください」
そう言って懐から出したハンカチを除菌スプレーで濡らし、社長の手を取り優しく拭きだす。そんな男に気にした様子もなく、白雪誠は一つの書類を目の前につきだす。
「ほら!もう企画書はできて、副社長を通じて社内に通達してあるから!明日はよろしく!」
「「「…」」」
決めるべき企画を決められてしまった6人は意気消沈しながらその日準備をして家に帰った。
~~
朝、清々しい朝と共に25日がやって来た。子供であるからと保護者から送られてきたサッカーボールのプレゼントに少しにんまりしながらももうそんな歳じゃねーしと呟き、ベットにそっとサッカーボールを置いて家を出た。会社ではもう社長が会議室にいて騒ぎまくっているのではないかと予想しながらも息が白くなる外を歩く。俺の家は会社がもう見える。通勤時間徒歩3分。走れば1分ちょいで着くだろう。会社へと入り、会議室へ向かうと案の定、社長はもう来ていた。
「亮君!メリークリスマス!」
そう言ってクラッカーを俺に向けて撃ってくる社長を一睨みしながら、
「クラッカーは人に向けて撃っちゃダメなんだよ」
と注意をして、いつもの席へと座る。社長はしょぼくれながらも人が来るたびにクラッカーを撃っていた。全員が揃うと朝議が始まる。今日のやることを聞いて、解散する。今日はビンゴ大会があるそうだけど、俺は仕事で参加できない。今日は『ラディアン』のクリスマスライブに着いて行き、あいさつもする仕事があるので休むことはできない。夕方には帰って来れるけど、その頃にはみんな退社しているだろう。少しさびしい気もしながらも仕事へと向かう。
~
仕事が終わって秘書に車で送ってもらい家に着く。ふと、会社を見ると、すっかり暗くなっている夜空に明かりが見える。最上階の部屋。社長の部屋だ。なんとなく顔を見たくなって、暗い夜道を歩き会社へと入る。夜勤警備の人に一瞬怪しげな目で見られたが、俺が誰だかわかるとすぐに通してくれた。エレベーターに乗り、40階で降りるとやっぱり明かりがついていた。
ドアをノックすると明るい返事が返ってくる。
「はーい?」
「失礼します」
そう言ってドアを開けると大きくクラッカーの鳴る音が聞こえた。驚いて声を上げ、腰を抜かすと社長が嬉しそうに笑った。
「ドッキリ大成功!おかえり亮君」
それから俺は社長と一緒にクリスマスケーキを食べた。社長はやっぱりとても優しい。そして世界で一番かわいい女の子なんだと改めて確認した。
世界で一番素敵な君に。メリークリスマス。
サブタイトルは亮の思い出のクリスマスですね。
いつも読んでくださりありがとうございます。




