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目指せ1位の体育祭!2


待って…私が秘密兵器?


驚いて思わず鳥羽さんを見た。


「私は自分で言ってなんだけど、運動神経がいい方だと思う。でも、白雪さんは私以上に走るの速いし、体育テストも文句無しのAだったよね?全部、10点のAだったよね?」


鳥羽さんは途中で私の方を向いて確認するように聞いてきた。確かに、体力テストは10点満点のAだった。


体育委員として私の記録を見ることが出来た鳥羽さんに嘘などつけなくて私は頷いた。体力テストも平均目指せば良かったかな…。


私が頷くと同時に感嘆の声が聞こえた。


「という訳で、まずは白雪さんをどのように割り振るか決めるべきだと私は思います。そして、先生。競技の中で一番点数が高いのはどの競技ですか?」


「まあ、一番点数が高くなるのは全員リレーだな。後は他の競技内容によるな」


後ろで腕を組んで様子を見ていた先生がそう答えた。近くの女子が少し嬉しそうなのが見える。


「…じゃあ、白雪さんの競技は全ての競技が決まってから決めた方がいいんじゃないかな?」


木村くんが鳥羽さんに提案した。


「そうだね。じゃあ、各種目ごとに記録がいい人から入れていくのはどうかな?」


鳥羽さんの言葉にみんなが頷いた。


「よし、じゃあそんな感じで決まりでいいかな?」


「あ、日向運動会当日来れそうとか分かるか?」


木村くんが心配そうに日向に言った。


「…わからないな。仕事が急に入るかもしれない」


「そうか…じゃあ、とりあえず好きな競技選ぶといいよ。駄目だったら代理立てとくから」


「ありがとう」


「じゃあ、みんな各自やりたい競技に名前を書いてくれ。あと、何でもいい人は黒板の端に名前を書いてくれ。じゃあ、廊下側の席からお願いします」


木村くんがそう言うと同時に廊下側の席の人から名前を書き出す。これは第1希望であって希望が通らない人もいるのか…。


「あ、皆さん。希望が通らない可能性があるのでそこは了承お願いします!そして、皆さんが書き終わったら、急いで集計するのでその後第2希望を書いてください!」


まあ、こうすればきっとみんな納得してくれるはず。


様子を伺えば、みんなが了承したというように頷いてくれる。良かった、とホッとして笑えば名前を書こうと立ち上がった男子の数名が後ろへひっくり返った。


…あ、ブサイク笑顔ごめんなさい。




「よし、丁度いい時間になったな。木村と白雪はこの用紙を生徒会室へよろしくな。他のみんなはホームルーム始めるぞ!」


木村くんが用紙を貰ってくれたので私は立ち上がってそのまま教室を出る。


「生徒会室は確か、4階にあるんだよね?」


生徒会室の場所は知っているけど、一応木村くんに聞いてみる。


「そうだよ。俺も行ったことないけどね。…あの木村晶がいる場所だな」


ん?木村?木村くん?


「あれ、生徒会長って木村くんのお兄さん?」


木村くんが慌てたように首を振った。


「違う違う!ただ中学が同じなだけだよ!よくそう言われるけど俺らそんなに似てる?」


そう聞かれて木村くんと生徒会長の顔を横に並べてみる。


「うーん、確かに似てないかな…生徒会長ははっきりと分かる黒色の髪だけど、木村くんは少し茶色っぽいし…」


「…まあ、再従兄弟はとこだけどな」


「そうなんだ」


「俺は姉貴と弟がいるな」


「三人兄弟か!羨ましいな」


「白雪さんは兄弟いるの?」


兄弟…ね。私も欲しかったな。


「ううん、いないよ」


「1人っ子なのか」


「うん。あ、生徒会室に着いたね」


「そうだな。生徒会へ誘われても上手いこと躱すんだよ?」


ん?木村くんがなにか言ったよね?生徒会へ誘われる?


「…いや、誘われるわけないよ~」


「…生徒会長の木村は目ざといから、出来るやつは見抜かれるんだよ。白雪さんは運動もできるし、しっかり副委員長を出来ている。目をつけられる可能性が高い」


「…わかった。私はバイトがあるし断るよ」


木村くんにそこまで言われると不安になってきた。しっかりと官僚張りの答弁をして断らなくちゃ。まあ、誘われることがあるかも分からないけどもね!


木村くんがドアをノックする。コンコンという音の後にどうぞという声が聞こえる。そう言えば、まだホームルームやってる時間だよね?生徒会の人たちはもしかしてホームルーム免除なのかな?


「失礼します。1-2の委員長の木村です」


「失礼します。同じく副委員長の白雪です」


木村くんの真似をして中に入る。生徒会室の中は普通の教室と同じくらいの広さで端にパソコンが4台並んでいて、真ん中に机が寄せてあり、紙がたくさん積まれていた。


「あ、いらっしゃい。運動会のテーマの紙を持ってきてくれたのかな?お、再従兄弟はとこ時雨しぐれか!元気だったかい?」


ドアと向き合う形で座っていた生徒会長が木村くんへ声をかけた。


「久しぶり、晶。この通りプリントな。じゃあ、白雪さん帰ろう」


生徒会長を綺麗にスルーして踵を返す木村くん。私もその後に続く。すると、自分の肩に手がかかった。驚いて後ろを振り向けばニコニコ顔の生徒会長がいた。


「生徒会はいつでも君を歓迎してるよ。白雪さん」


「白雪さんはバイトが忙しいから生徒会へは入りません。失礼しました」


木村くんが生徒会長の手を払って私を引っ張り始める。私は生徒会長が後ろにいる気配がしなかったことに驚いて、そのやりとりの間、口をぽかんと開けていた。何処のアホだ、私。官僚張りの答弁を、とか恥ずかしすぎる。


「残念。また、今度会おうね。白雪さんのこともっと知りたいな」


「もっと他に知りたい候補を作るべきだな!たらし生徒会長!」


廊下へ出て生徒会長に木村くんが叫んだ。私はそこではっとして失礼しましたとお辞儀をした。


「さ、白雪さん。あのたらし生徒会長はほっといてクラスへ戻ろう」


「うん」


頷くと自分の手が見えた。木村くんが私の手を握って先導してくれている。木村くんの手は私よりも大きくてごつごつしている。書記やおじさん、純と同じく男の人の手だ。私が無言で手を見てるのに気づいたのか、木村くんが慌てたように手を離した。


「ご、ごめん。気づかなかった!」


そう言ってすぐに前を向く木村くん。耳が少し赤かった。


「いや、こちらこそありがとう。生徒会の勧誘断ってくれて助かったよ。私だったら長期戦になってただろうし…」


「いやいや、白雪さん勧誘困るだろうし。俺らのクラスの副委員長は絶対に渡さないぞって思ったらつい動いてた。それに晶はいつもあんな感じでムカついてたし」


「再従兄弟って結構会うの?」


「まあ、家が2軒隣だからな…」


「…近いね」


木村くんが遠い目をしていたので何となく心の中で合掌しておいた。南無。


「…その手、嫌じゃなかった?」


木村くんが間を置いて小声で尋ねてくる。


「手?繋いだこと?別に嫌じゃなかったよ。むしろ私の手を握るの嫌じゃなかった!?」


「いやいや!むしろ役…あ、教室着いたね」


やく?やく…なに?何かの言葉だよね?役損?役者!?約束!?役場!?


教室のドアが開くのを見ながら私はひたすらやくの着く言葉を考えていた。


…まさか役得じゃあるまいし。



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