第8話:数字が語る絶望の街へ! 治安危機地域の完全浄化作戦
【前書き】
お読みいただきありがとうございます! 作者です。
「宇宙の謎が解き明かされそうなこの時代に、爆弾を投げ合っている場合じゃないのでは?」
そんな思い立ちから、この物語の空想がスタートしました。
もし、物理学の先にある真理によって「あらゆる物質やエネルギーを生成できる」ようになったら? 答えはシンプルです。戦争や奪い合いをする意味そのものが無くなります。
かつて地球が回っているかどうかで揉めていた人類も、今では当たり前に宇宙を見上げていますよね。同じように、新しい真理を知ることで、人類は次の思考のレイヤーへと進化できるはずです。
超弦理論のその先にあるワクワクするような未来の世界を、エンターテインメントとして皆様にお届けします。思考のひとときとして、ぜひ楽しんでいってください!
1. ヴァイスマン大佐の記憶と、統計データが示す惨状
超高度戦術空中母艦アウロラのブリッジ。
洗練された結晶装甲の空間に、地球全土の犯罪・殺人発生率を示すホログラム・マップが浮かび上がっていた。
「四条殿……。いや、ワタル殿」
ロベルト・ヴァイスマン大佐(40)は、深く静かな眼差しでマップを見つめながら呟いた。
「かつて私が青年だった2004年頃のウクラインは、誰もが『戦争など起こるはずがない』と信じ切っていた。職業軍人の立場は弱く、給料の遅配は当たり前、徴兵された若者たちへの先輩軍人のイジメも横行していた時代だ。だが私は、軍人の尊厳を取り戻したい一心で従軍を選んだ」
「お父さん……」
アリアーナが優しく父の肩に手を置く。
「軍の給料だけでは妻のナターリア(38)や幼いアリアーナ、ユーリアを養うのも厳しかった。だが、旧東ドイツ出身だった私の父がウクラインの娘と結婚し、南部に残してくれた広大な麦畑があった……。その麦畑の恵みがあったからこそ、私たちは幸福に生きてこられたのだ。……あのクリミワ半島の併合によって、すべての歯車が狂い出すまではな」
ロベルト大佐は拳を強く握り締め、画面に表示された過酷な「数字」を指し示した。
「だからこそ分かるのだ。平和を当たり前だと思い込み、一度歯車が狂うと、人は容易に狂気と暴力に落ちていく。見てほしい。この100万人あたりの殺人発生率データを」
* **1位:タークス・カイコス諸島(103.15)**
* **2位:ハイチ(64.34)**
* **3位:セントクリストファー・ネイビス(59.77)**
* **4位:セントビンセント・グレナディーン(50.69)**
* **5位:トリニダード・トバゴ(41.52)**
* **6位:セントルシア(40.61)**
* **7位:ジャマイカ(40.36)**
* **8位:南アフリカ(39.72)**
* **9位:エクアドル(38.94)**
* **10位:バハマ(10.00超)**
「タークス・カイコス諸島やハイチ、ジャマイカ、南アフリカ、エクアドル……。ここでは国家の警察機能が崩壊し、街全体が重武装ギャングや密輸組織に支配されている。戦場のような大規模爆撃はなくとも、市民が一瞬の不注意で路上で射殺され、子供たちが明日をも知れぬ恐怖の中で泣いているのだ」
『ええ、分かっています、ロベルト大佐』
四条邸・研究棟の中央オペレーションルームから、亘の声が力強く響く。
『戦場での砲撃も、路上での一発の拳銃も、命の重さに違いはありません。食料や医療が足りず、生きていくために犯罪に手を染めざるを得なかった人々も含め、すべてを根本から解放します!』
「ワタル先輩! 私、パパの麦畑みたいに、世界中の街を温かい笑顔でいっぱいにしたい!」
ユーリアが元気いっぱいに胸を張る。
『よし! アウロラ、タークス・カイコス諸島、ハイチ、南アフリカ、エクアドル等の最危険領域へ向けて多重超空間跳躍! DWASチタンカード【Global Public Safety & Wealth Flattening】発動!』
『了解しました、マスター・ワタル。全対象領域への一括不活性化・人道救済プログラムをセットします』
ルナのアナウンスとともに、全長700mの母艦アウロラから無数の光の分身が派生し、地球上の「最も危険な街々」の上空へと同時に現出した。
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### 2. ハイチ・カリブ諸国の解放と『生きるための犯罪』の解体
殺人発生率ワーストの上位を占めるカリブ海諸国、そして無政府状態に近い絶望の中にあったハイチの首都。
「おい! 荷物を全部渡せ! 渡さないと打ち殺すぞ!」
路上で自動小銃を構え、支援物資を奪おうとする重武装ギャングの男たち。
貧困と飢餓が極限に達した街では、生き残るために銃を握るしか選択肢がなかった若者たちが溢れていた。
だが、その頭上に突如として巨大な純白の母艦影が現出し、温かな光のカーテン(DWAS不活性化波動)が街全体を包み込んだ。
キーーーーーーン……!
「な……なんだ!? 銃が打てねえ! 火薬が燃えねえぞ!?」
男たちが焦って引き金を引くが、銃身は沈黙し、握っていたナイフは分子構造の書き換えによってフニャフニャのゴムへと変質した。
そこへ、空から舞い降りましたのは数千機の『食料錬成ドローン』と『全自動医療・住宅建設プラットフォーム』、そして白銀の強化外装を纏ったユーリアとアリアーナだった。
ドサッ、ドサッ!
「みんな、もう奪い合わなくていいの!!」
ユーリアの強化外装から放たれた『感情共振波』が、街中の人々の脳裏へと届く。
『(現地の言葉で)お腹がすいていたんだよね!? 怖かったんだよね!? このドローンから、温かいご飯も、綺麗なお水も、病気を治すお薬も、全部タダでいくらでも出てくるよ! 誰も殺さなくていいんだよ!!』
ドローンのハッチが開き、湯気を立てる温かな料理や焼き立てのパン、そして高純度の清浄水が街の広場に山のように具現化された。
「あ……温かい……! 飯だ……! 本物の飯だ……!」
銃を捨て、涙を流しながらパンに飛びつくギャングの若者たち。
彼らが犯罪に手を染めていたのは、邪悪だったからではない。そうしなければ家族が飢え死にするという「構造的絶望」の中にいたからだ。
アリアーナのナノ医療スプレーが撒き散らされ、路上で病に伏していた市民や子供たちの感染症が一瞬で治癒していく。さらに、DWAS土壌再生技術によって、荒れ果てていた土地が一瞬にして豊かな農地へと姿を変えた。
「これは……ロベルト大佐のお父様の麦畑と同じ……素晴らしい恵みですわ」
アリアーナが感極まったように呟いた。
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### 3. 南アフリカ・エクアドルの治安劇的改善と、大佐の決意
「ワタル殿! カリブ海諸国の不活性化に続き、南アフリカのヨハネスブルグ、エクアドルの港湾都市における治安危機領域への介入が完了した!」
アウロラのブリッジで、ロベルト大佐が誇らしげに報告する。
世界屈指の殺人率と強盗発生率を誇っていた南アフリカのタウンシップ(貧困地区)や、密輸ルートの争奪戦で荒廃していたエクアドルの街街。
そこでも、すべての銃器と過酷な兵器が物理法則レベルで不活性化され、同時に莫大な生活支援とインフラ整備が無償で提供された。
重武装ギャングのボスたちは、武器を無力化され、配下の若者たちが無償の食料と教育を手に入れて足を洗ったことで、組織そのものを維持できなくなり、完全に失脚した。
『ロベルト大佐。かつてウクラインの軍人で苦しんでいた大佐の経験があったからこそ、俺たちは「生きるために追い詰められた人々」の心理を正しく理解し、救うことができました』
四条邸・研究棟から亘が温かく語りかける。
「感謝する、ワタル殿。私は2004年のあの貧しかった時代、父の麦畑と妻のナターリアの笑顔に救われた。だからこそ理解できるのだ。人に必要なのは、他者を踏みにじるための武器などではない。家族と温かく囲む食卓と、未来への安心なのだと」
ロベルト大佐は胸を張り、大隊長としての威厳に満ちた敬礼を送った。
「タークス・カイコス、ハイチ、南アフリカ、エクアドル……! 殺人発生率上位に名を連ねていた地獄の街々から、完全に暴力が消え去ったぞ!」
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### 4. 第1章クライマックスへ——残された最後の火種
「ワタル先輩……! 見て、地球中の数字が……悲しいデータが全部消えていくよ!」
ユーリアがモニターを見つめながら、涙を浮かべて笑った。
ホログラムマップ上に表示されていた高殺人率を示す赤い警戒マーカーが、次々と平穏と平等を証明する希望の青色へと塗り替えられていく。
「ええ。暴力と貧困の連鎖によって人々が殺し合っていた悲劇が、根底から解決されましたわ」
アリアーナも安堵の息を漏らし、ナターリア母親の無事を祈るように胸の前で手を組む。
『皆さん、素晴らしい成果です。……ですが、地球上にはまだ、私たちが救うべき最後の人々が残されています』
四条邸・研究棟の亘は、メインコンソールに最後の未解決エリアを表示させた。
『人権が完全に踏みにじられている極寒の孤島収容所、宗教的狂信によって人々が外部から遮断されている密閉地域、そして海賊が横行する公海……。地球上のすべての理不尽を叩き潰すまで、俺たちの歩みは止まりません!』
「うむ! どんな過酷な現場であろうと、このロベルト・ヴァイスマンとアウロラが先陣を切ろう! 全人類が平和な麦畑のような笑顔を取り戻す、その日まで!」
ロベルト大佐の参謀のもと、世界中の治安危機を激変させた亘たち。
地球上のあらゆる惨劇を過去のものとし、真の全解放を達成するための第1章クライマックスへ向け、アウロラは更なる空へと飛翔するのだった。
【後書き】
第8話をお読みいただき、本当にありがとうございました!
今回はロベルト・ヴァイスマン大佐(40)の重厚なバックグラウンド(2004年当時の軍の貧困、父の麦畑、妻ナターリアとの家族愛、クリミワ併合への思い)を軸に、リアルな「殺人発生率ワースト地域(タークス・カイコス、ハイチ、南アフリカ、エクアドル等)」への圧巻の救済劇を描かせていただきました!
次回第9話では、地球上に残された「人権侵害の極寒孤島収容所」や「閉鎖された狂信地域」「公海の海賊被害」を破竹の勢いで人道解放し、いよいよ第1章の感動の大フィナーレ(第10話)へと突き進んでまいります!
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