↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
10/16

第10話:平和の響き (第1章グランドフィナーレ)

【前書き】


お読みいただきありがとうございます! 作者です。


「宇宙の謎が解き明かされそうなこの時代に、爆弾を投げ合っている場合じゃないのでは?」

そんな思い立ちから、この物語の空想がスタートしました。


ちなみに作中にも出てきた「イルン」という国と「アレリカ合衆国」ですが、かつては非常に親密な関係でした。なんと、あの映画『トップガン』でも有名な「F-14トムキャット」という可変翼戦闘機が、世界で唯一イルンにだけ輸出され、現在も奇跡的に現役配備されていると言われているほどです。


国家の指導者が変わるだけで、国同士の待遇や関係性がガラッと真逆に変わってしまう……政治や歴史の恐ろしさと儚さを感じますね。


本作では、そんな「人間の都合でコロコロ変わる理不尽な国境や対立」を、DWASの絶対的なテクノロジーで根底から乗り越えていきます!


それでは、第1章の完結回となる第10話をお楽しみください!

### 1. アウロラへ集う万国の代表と、世界不活性化の完成


成層圏に神聖なる輝きを放ちながら滞空する『超高度戦術空中母艦 アウロラ』。

その全長700メートルにおよぶ白銀と結晶装甲で覆われたメインブリッジには、今、歴史上あり得なかった光景が広がっていた。


ホログラム通信回線を通じて一堂に会しているのは、ウクライン、ルシア、アレリカ、イルン、中東、アフリカ、カリブ海諸国、そしてアジア各国から集まった全主要国の軍関係者、首脳陣、そして現場で銃を捨てた元兵士たちの代表者たちだった。


「四条殿……。いや、マスター・ワタル」


ブリッジ中央で凛と立つロベルト・ヴァイスマン大佐(40)が、胸を張って画面越しの四条亘に語りかけた。


「地球上のあらゆる激戦地帯、治安危機領域、そして言葉の壁で途絶していた孤立地域まで……すべての不活性化および完全人道支援プログラムが定着した。銃弾が一発も飛ばず、爆弾がひとつも起爆しない『絶対平和領域』が、地球全土を包み込んでいる」


『ありがとうございます、ロベルト大佐。そして、アリアーナさん、ユーリア』


四条邸・研究棟のオペレーションルームで、亘はコンソールからゆっくりと立ち上がり、画面の向こうに並ぶ世界中の人々を見つめた。


「ワタル先輩……! 見て、地球中の人たちが笑顔で手を振ってくれてるよ!」


スカイブルーのユールスーツを纏ったユーリアが、弾けるような笑顔でホログラム画面を指差し、身を乗り出す。


「ええ……。かつて憎しみ合い、互いに『敵』と呼び合っていた国々の方々が、同じ画面の中で言葉を交わし、笑い合っていらっしゃいます……」


アリアーナも目頭を押さえ、隣の父・ロベルト大佐の腕を力強く握り締めた。


画面の中では、かつてアレリカから供給された古いF-14戦闘機を大切に維持し続けていたイルンの元パイロットと、アレリカの軍人が、DWASの即時言語翻訳を経由して「あの名機の整備は大変だっただろう」「ああ、パーツを作るのに骨を折ったよ」と笑いながら戦闘機の思い出話に花を咲かせていた。


指導者の意思や利権によって引かれた「国境」や「敵味方の壁」。

そんなものが、DWASの圧倒的な資源無償供給と、兵器の不活性化の前には、どれほどちっぽけで無意味なものであったかが証明された瞬間だった。


---


### 2. 全地球武力放棄宣言と『誓いの波動』


「マスター・ワタル。地球上の全戦闘勢力ならびに国防組織より、自発的な『完全武力放棄および全兵器解体要請』が届きました。署名率は100%です」


実体化AIルナが可憐にお辞儀をし、透明なサファイア色のホログラムウィンドウを開いた。


「自発的な全兵器の解体要請……! 国連の歴史上、一度として達成できなかった全地球規模の軍縮が……本当に現実になったのですね」


アリアーナが感極まった声で呟く。


『ええ。兵器を撃つことができず、奪い合わなくても食料もエネルギーも無限に手に入る世界では、莫大な予算をかけて兵器を維持すること自体が愚かな選択になりますから』


四条邸・研究棟で、亘はデスクに並べられたDWASチタンカードの最後に位置する一枚——【Global Coherence & Universal Covenant】を取り上げた。


『世界中の皆さん。俺は四条亘です。俺はかつて、黒海の上空で起きた理不尽な戦争の混乱によって、愛する父と母、そして兄を一度に失いました』


亘の静かで澄んだ声が、アウロラの主機DWASジェネレーターを通じて、地球上のすべてのラジオ、テレビ、スマートフォン、そして人々の心の中へと直接響き渡った。


『憎くてたまりませんでした。理不尽な戦争を起こす世界が、奪い合う人間が許せなかった。……ですが、俺を救ってくれたのは、ウクラインから避難してきた少女・ユーリアが作ってくれた一杯の温かいボルシチでした。人に必要なのは、他者を撃ち抜く弾丸ではなく、温かな食事と、大切な人と過ごす平和な時間だったんです』


世界中で、何十億もの人々が息を呑んで少年の言葉に耳を傾けていた。


『本日をもって、地球上からすべての戦争、紛争、暴力、そして飢餓と人種差別を永久に追放します! これより全兵器を、全人類の未来を支える「平和インフラ」へと高次元錬成(コンバート)します!』


亘がチタンカードをスロットへと力強く叩き込んだ。


キーーーーーーン……!!


成層圏のアウロラから放たれた虹色の『誓いの波動』が、地球全体を優しく包み込んだ。

世界中の軍事基地に眠っていた戦車、戦闘機、ミサイル、巨大な護衛艦群が、光の粒子となって分解され、その場で超高性能な海水淡水化プラットフォーム、大気浄化タワー、そして無限の食料を育む自動農園へと瞬時に姿を変えていった。


「うわあぁぁぁ……! 兵器が……戦車が温かいビニールハウスに変わっていくぞ!」

「ミサイル発射台が、綺麗な水を生み出すタワーになった!」


世界中で歓声と嬉し涙が弾けた。

奪うための道具が、すべてを生かすための恵みへと変わり果てたのだ。


---


### 3. 日本の我が家と、ヴァイスマン家族の絆


——作戦完了から数時間後。


夕暮れの茜色に染まる日本、埼玉県川口市にある四条邸。

父と兄が膨大な研究機材を残した広大な敷地内の『研究棟』。その重厚なドアが開き、疲れ果てたけれど晴れやかな顔をした亘がオペレーションルームから母屋へと戻ってきた。


「ワタル先輩っ!!」


バタバタと廊下を走ってきたのは、普段着の可愛らしいワンピース姿に戻ったユーリアだった。


「ユーリア。お疲れ様。スーツを脱いでも元気いっぱいだな」


「うん! だってね、お母さんが『今日は特別な日だから』って、お台所で腕を振るってくれてるの!」


母屋の大きなダイニングルームへ進むと、そこには温かな湯気と、芳醇なスパイスの香りが満ちていた。

キッチンには、日本語をペラペラと話せるようになり、弾けるような笑みを浮かべる母ナターリア(38)と、エプロン姿で手伝いをする長女アリアーナ(18)。


そして、リビングのソファでは、ナノ医療で完全に健康を取り戻した元連隊長・ロベルト大佐(40)が、誇らしげに腕を組んで亘を出迎えた。


「お帰り、ワタル殿。いや……私たちの誇り高き若い英雄よ」


「ただいま戻りました、大佐」


「さあさあ! ワタルさん、座ってくださいな! 今日は我がヴァイスマン家の秘伝のボルシチと、できたてのピロシキがたくさんありますよ!」


ナターリアが満面の笑みで、大きな煮込み鍋を食卓の中央へと運んできた。

鮮やかなビーツの赤色と、サワークリームの白いコントラスト。それは、亘が孤独のどん底にいたあの日、ユーリアが届けてくれた命の味そのものだった。


「いただきます……!」


スープを一口口に含むと、温かなうま味が全身に染み渡り、亘の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。


「ワタル先輩……? どうしたの、どこか痛いの……?」


ユーリアが心配そうに顔を覗き込む。


「ううん、違うんだ。美味しくて……すごく温かくて。俺の家族はもういないけれど……今、こうして新しい家族と一緒にご飯を食べられていることが、本当に嬉しいんだ」


亘が微笑むと、ロベルト大佐が大きな手で亘の肩をドンと叩いた。


「何を言っているのだ、ワタル殿。君はもう、私たちの家族だ! この命とヴァイスマン家の名にかけて、君を永遠の家族として愛し、支えることを誓おう!」


「そうですわ、ワタルさん。あなたが私たちを地獄から救ってくださったように、私たちはいつだってあなたの温かな家になります」


アリアーナが優しく微笑み、ナターリアも深々と頷いた。


「えへへ! ワタル先輩、ずっとずっと一緒だよ!」


ユーリアが亘の腕にぎゅっと抱きつき、幸せそうに頬を寄せる。

かつて黒海で家族を失い、絶望の暗闇の中にいた少年の心に、本当の「家族の温もり」と「平和の響き」が満ちていった。


---


### 4. 第1章の完結、そして次なる『支配の構造』へ


賑やかな夕食が終わり、夜深くなった四条邸・研究棟。


静まり返ったオペレーションルームで、亘は一人、メインコンソールに向き合っていた。

モニターには、美しい青一色に染まった地球のホログラムが静かに自転している。


『マスター・ワタル。地球上の全紛争不活性化率、100%。全兵器解体シークエンス完了を確認しました。第1章【紛争・貧困・差別からの解放】の全工程が完璧に完遂されました』


ルナの透き通るような声が響く。


『ですが……世界各国の旧暗号通信プロトコルより、異常な兆候を検知。兵器を奪われ、利権と支配力を失った地球の既存権益者、軍需複合体の裏出資者、そして差別と格差の構造で富を独占してきた『国際金融資本の最高指導者たち』が、暗闇の中で密号を交わしています』


コンソールの一角に、赤く不気味に点滅する暗号データが浮かび上がった。


兵器という物理的な武力を奪われた旧時代の支配者たち。

彼らは次に、世界を裏で縛り付ける「お金の仕組み(法定通貨システム)」と「経済的支配の罠」を悪用し、亘たちのDWASテクノロジーを「世界経済を破壊する非合法テロ」と定義して、世界規模の金融封鎖と情報工作を仕掛けようと蠢いていた。


『彼らは、兵器がなくなってもなお「お金と格差の罠」で人類を繋ぎ止め、支配し続けようとしています。……彼らが握る「資本主義の構造的バグ」を修正しない限り、人類の真の解放はありません』


亘は静かに立ち上がり、研究棟の窓から夜空に輝く月を見上げた。


「ああ、分かっているよ、ルナ。武力を奪われた旧時代の権力者たちが、最後につがみつく『支配のバグ』……。資本主義と差別を生み出す金融システムそのものを、DWASの力で書き換える」


亘の胸の中には、もう恐怖も迷いもなかった。

傍らには、かけがえのない家族——ロベルト大佐、アリアーナ、ユーリア、ナターリアがいて、頭上には最強の母艦アウロラが控えている。


「行くぞ、ルナ。地球の歪んだ支配構造を正し、人類を地球の狭い泥沼から解き放って、太陽系全域へと進出する新たな時代の扉を開くんだ!」


『了解しました、マスター・ワタル。第2章【支配構造の是正と太陽系進出編】へ移行します』


夜空に浮かぶ月と無数の星々が、少年の新たな挑戦を祝福するように、どこまでも深く、眩しく輝いていた。


(第1章:地球編・完 / 第2章へ続く)


【後書き】

第10話をお読みいただき、本当にありがとうございました!


これにて【第1章:地球編(前編)— 覚醒のDWASと紛争・貧困・差別への挑戦】(全10話)が堂々の完結となります!


前書きでお話ししたイラン(イルン)のF-14トムキャットの雑学から始まり、地球上の全兵器解体、言葉の壁の撤廃、そしてヴァイスマン家族とワタルが本当の家族として温かなボルシチを囲む感動のフィナーレ、いかがでしたでしょうか。


そして次回からは、いよいよ【第2章:地球編(後編)— 支配構造の是正と太陽系進出】が開幕いたします!

武器を無力化された地球の旧権力者たち(大統領、書記長、金融の支配者たち)が仕掛ける裏の罠に対し、ワタルたちが「世界の金融システム(資本主義の構造的バグ)」をDWASの圧倒的テクノロジーで書き換え、太陽系へと人類の拠点を広げていく怒涛の展開をお届けします!


ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました!

もし面白いと思っていただけましたら、ぜひブックマークや評価(★★★★★)で応援していただけると非常に大きな執筆の励みになります! 第2章(第11話〜)もどうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。