友達候補
「フォンレイ公爵家と、カルヴァン家ですね」
エマは確認するように紙を見る。
フィアはソファへ埋まりながら、こくりと頷いた。
「適当」
「見ればわかります」
「じゃあ聞かないでよ……」
交流会の翌日。
フィアは完全にやる気を失っていた。
朝から本を抱え、窓際でごろごろしている。
「もう交流終わったじゃん」
「始まってすらいません」
「なんで……」
「友達を作るためです」
「いらない……」
エマは静かに微笑む。
「お嬢様」
「なに」
「そのままだと、一生本棚としか会話しない人生になりますよ」
「別に最高では?」
「よくありません」
即答だった。
フィアはむぅ、と頬を膨らませる。
「だって疲れるんだもん。みんな硬いし」
「貴族ですから」
「本の話してくれる人いないし」
「だから探すんです」
「うぅ……」
エマはこれから送る招待状を机へ紙を置いた。
「三日後、小規模なお茶会を開きます」
「三日後? はやすぎる」
「熱が冷める前が大事です」
「友達ってそんな食べ物みたいに言う?」
「お嬢様は放っておくと図書館から出てこないので」
否定できない。
フィアは諦めたように本を閉じる。
「……どっちがどっちだっけ」
「フォンレイ様が金髪の方です」
「あぁ、真面目そうな子」
「カルヴァン様は赤茶の髪の方です」
「元気な子」
ざっくりしていた。だが間違ってはいない。
「お嬢様は、どちらが気になったんですか?」
「んー……」
フィアは少し考える。
「別に?」
「聞いた私が悪かったですね」
「でも」
フィアはぽつりと続けた。
「フォンレイ様、なんか疲れそうだった」
エマは少し目を瞬かせる。
「疲れそう、ですか?」
「うん。ずっと気張ってる感じ」
誰が見ても完璧だった。
礼儀も、動きも、話し方も。
でも、どこか窮屈そうだった。
「あとカルヴァン様は、たぶんずっと元気」
「それもわかるんですか」
「うるさかったから」
「失礼ですよ」
エマはため息を吐く。
だが少しだけ安心もしていた。
フィアは人へ興味を持たない。
しっかりと覚えるのは、本か、魔法か、面白いものだけ。
だから今回、相手のことをちゃんと見ていたのは珍しい。
「お茶会では、もう少し会話してくださいね」
「努力する」
「本当に?」
「……半分くらい」
信用ならなかった。
◇◇◇
一方その頃。フォンレイ公爵家では。
「ヴァルディア家から……?」
リゼは届いた招待状を見つめていた。
交流会で軽く挨拶した程度。
まさか個人的に招待されるとは思っていなかった。
「お父様、これはどうすれば……」
「行ってきなさい」
フォンレイ公爵は即答した。
「良い機会だ」
「ですが……」
「相手はヴァルディア家だ、それに同年代との交流は必要だ」
厳格な父だった。
姿勢を崩さず、常に冷静。
リゼは幼い頃から、
“フォンレイ家の令嬢として相応しくあれ”
と言われ続けてきた。
だから失敗は怖い。恥をかくのも怖い。
交流会でも、ずっと気を張っていた。
そんな中で。
『よろしくね』
ふわりと笑った銀髪の少女を思い出す。
思っていたより柔らかかった。
不思議な人だった。
「……行ってまいります」
◇◇◇
そしてカルヴァン家。
「フィア様のお茶会!?」
ミナは目を輝かせた。
「行く!今すぐ準備して!」
「まだ返事もしていませんお嬢様!」
「する!」
使用人が頭を抱える。
「楽しそう!」
「理由が軽い!」
「だって面白そうだったし!」
ミナは交流会を思い出す。
噂の天才令嬢。
もっと怖い人かと思っていた。
でも実際は、違った
なんだか眠そうで、そして少し変な感じだった。
なのに、周囲の空気だけはちゃんと見ている感じがした。
「あと綺麗だった!」
「そこですか」
「あと退屈そうだった!」
「失礼ですよ。絶対本人の前でそんなこと言ってはいけません」
「絶対話したら面白いって!」
ミナはにこにこ笑う。
「お土産持っていこうかなー」
「まずは礼儀を持っていってください」
それは本当にそうだった。
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