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【第二部】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!ーそれでも世界はのんびりを許さない  作者: DAI


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第30話


深淵の国の奥深く。魔神城地下の研究室。


三司祭メルティナが机に向かって何かの薬品を調合している。

「きゃはは。もうすぐだよ、さあ、おいで」

メルティナが手招きすると、物陰から小さな犬が出てきた。


ワンワンッ


犬は尻尾を振っている。

「さあ、これを飲んで」

メルティナは今完成したばかりの薬品を犬に飲ませた。

すると犬の全身が妖しく光出す。


グルルルルッ


唸り声を上げる犬。

しばらくすると大人しくなった。

「さて、上手くいくかな?」

メルティナは犬の額と自分の額をつけて念じる......

メルティナの視界が歪み、別の視点に切り替わる。妙に地面が近い。

「成功だね。あたしの分身くん、頼んだわよ、きゃはは」


茶色の毛並みの犬はワンッと一声吠えた。


「きゃはは、何が起こるか楽しみね」


メルティナは狂気じみた笑みを浮かべた。





数日後、ウエスの森の丸太小屋。


「ぼくたちが留守の間、くれぐれも頼んだぞ」

「よろしくお願いしますわ」

イブとアイリスは天上界で開かれる重要な会議に出席するため、丸太小屋をしばらく留守にすることになった。

「アホ女神が居なくなって清々するな」

ミカエルは腕組みをしてニヤニヤしている。

「イブ、アイリス、留守の間は任せておいて」

フィーネが二人を見て微笑んだ。


青白いオーラに包まれたイブとアイリスは宙に高く舞い上がり、ふっと消えた。


「じゃあ、僕は薪割りに行くよ」

オルガが森の中に入って行く。

ドンキーとモック、ハクは早速追いかけっこを始めた。

リリィとエリーゼは2階の自室に上がって行く。

フィーネはロッキングチェアに座って紅茶を啜る。


それぞれが思い思いに時間を過ごす。ウエスの森はいつも通り平和だった。





オルガは、一人で薪割りに精を出していた。


ブンッ!

バキッ!


同じ間隔で森の中に音が響く。


すると、


ハァハァハァッ

何処からか荒い息遣いが聞こえてくる。

オルガはふと手を止めて、耳に意識を集中した。


ガサガサッ!


森の中から黒い影が飛び出してきた。

オルガは咄嗟に身構える。


ワンワンッ!


茶色い毛の犬が飛びかかってきた。

「ウワッ!」

オルガは思わず倒れて尻餅をついた。

飛びかかってきた犬は人懐っこくオルガの顔を舐め回す。


「おい、やめろ!」

オルガは笑いながら犬を引き離した。

茶色い毛の可愛らしい犬だ。何処から迷い込んだのだろう?オルガのことが気に入ったようだ。

「ウチの子になるか?」

オルガは、犬の目を見て話しかけた。


犬の目が真っ赤に光る、オルガは人形のようにうごかなくなった。

オルガの目が一瞬、赤くなり瞳孔が開いた様に瞳が大きくなったが、すぐに元に戻った。

意識が戻ったオルガは何事もなかったかのように薪を集め、丸太小屋に向かって歩き出した。

犬もオルガの後をついて行く。



ウエスの森の木々が騒ついた。





丸太小屋では、フィーネ、リリィ、エリーゼたちが並んで昼寝をしている。



「ただいま!」

薪を担いだオルガが丸太小屋に帰って来た。

昼寝をしていたリリィが起き上がる。

「オルガ!お帰り」

「薪を置いてくるよ」

オルガはそう言うと裏の倉庫に歩いて行く。その後をついて行く小さな犬にリリィは気づいた。

「その犬、どうしたの?」

オルガの後ろをちょこまかとついてくる犬は、リリィに向かって走ってきた。

「きゃっ!やめて、くすぐったい!」

犬はリリィに向かって飛びかかり、顔を舐め回した。

「人懐っこいだろ?森で会ったんだ」

オルガがリリィの前に座って犬を撫でながら話す。

フィーネ、エリーゼ、ハクもいつの間にか起きて話を聞いている。

「可愛いワンちゃんですにゃ」

エリーゼが言う。

「その辺の野犬とは大違いだな」

ハクが笑いながら言う。


「ねぇ、フィーネ。この子飼って良い?」

リリィがフィーネの方を向いてお願いする。フィーネは諦め顔で、

「ダメって言っても聞かないでしょ?良いわよ」

リリィに向かって言った。

「ありがとう!フィーネ!この子の名前を決めなきゃ......」

リリィは目を閉じ眉間に皺を寄せて考える。

「決めた!あなたの名前は"ハチ"よ!」

リリィが叫んだ。

「ハチって、まさか日本の......」

フィーネがつぶやく。

「そう!忠犬ハチ公の"ハチ"!」

リリィが満面の笑みで言う。


こうして丸太小屋に、もう一匹の家族が加わった。



その夜の夕食後。


「今日のご飯も美味しかった!」

リリィはロッキングチェアに座って、食後の紅茶を飲んでいる。膝の上には家族になったばかりのハチが丸くなっている。


「ハチも美味しかったよね?」

リリィがハチを両手で持ち上げると、リリィとハチの目が合った。ハチの目が真っ赤に染まり、それに吸い込まれる様にリリィの視線が釘付けになる。

リリィの瞳が、一瞬真っ赤に染まり、すぐに元に戻った。


「リリィ?どうしたの?」

リリィの異変に気づいたフィーネが話しかける。

「ううん?別に、何でもないよ」

リリィは、笑って返した。しかし、その瞳の奥の色は真紅に濁っていた。



ワンワンッ!

人懐っこいハチの瞳の向こうでは、メルティナが狂気の笑みを浮かべていた。




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