第14話
ここは、バロールの精神世界。
ゲンブを倒したフィーネは、再びリリィを探して荒野を彷徨い始めた。
「リリィ......どこにいるの?」
見渡す限りの荒野。しばらく歩くと小さな影がぼんやりと見えた。その少年は耳が尖り、白銀色の髪が風に揺れている。
「......ハンス......?」
フィーネの瞳から涙が溢れ出す。
「ハンス! 会いたかった!」
「僕もだよフィーネ。大人になったね」
二人は抱きしめ合った。
ハンスの姿は900年前の少年のままだ。
「ハンス......助けられなくて、ごめんね」
「フィーネ、僕は大丈夫。君は君の人生を生きるんだよ」
ハンスはフィーネの眼を見つめて言う。
「嫌よ! ハンス。もう失うのは嫌!」
フィーネの涙は止まらない。
頭の中では分かっている。ハンスはもうこの世には居ない。でも感情がそれを否定する。
「フィーネ、じゃあ一緒に行こう」
ハンスはフィーネの手を引く。
フィーネの身体は900年前の少女に戻っていた。
「うん、ハンス。行こう!」
二人は荒野を歩き出した。
ノーザリア国の雪原。
ノーザリア国軍とイストリア国軍の睨み合いが続いている。
「我がノーザリアの精鋭よ! 異国の軍勢から国を守るのだ!」
バロールが鼓舞すると、
「うおーっ!」
ノーザリアの軍勢が吼える。
「射てー!」
ノーザリアの弓兵が一斉に矢を放つ。
と、同時にイストリア側からも無数の矢が飛んで来た。
「ぐぁっ!」
矢が命中した兵士が倒れていく。
「突撃ーっ!」
バロールの指揮で軍勢が動き出す。
ついに、ノーザリアとイストリアの戦争が始まってしまった。
オルガたちはノーザリアの軍勢を横目に見ながら最前戦を目指す。
「戦いが始まったぞ! 急げ!」
オルガが叫ぶ。
「皆んな! バロールはあそこよ!」
スザクが叫びながら指し示した方向に一際大きな身体の男が腕を振り回し、イストリア兵を圧倒していた。
「よし! あそこに向かうぞ! 兵士は誰も殺すなよ!」
ゴブローが先陣を斬る。
大剣を軽々と振り回し、周りの兵士を倒していく。
「風よ吹け、ウインド!」
イブが魔法を唱えると、周囲の兵士が吹き飛んだ。
「ダークネスストーム!」
ミカも魔法で兵士たちをなぎ払う。
シュー!バシュッ!
スザクが矢を放つ。
「ぐぁ!」
放たれた矢は的確に相手の急所を外して命中する。
「姉さん!」
「スザク! 行くわよ!」
ホウオウは物凄い勢いで軍勢に突っ込んでいく。あっという間に周囲の兵士は薙ぎ払われる。
「おいらもいるぞ!」
竜に変身したハクは、その身体で楽々と兵士たちを倒していく。
「にゃー! ハク、もっと倒すにゃー!」
エリーゼ(猫)は、ハクに乗って指示していく。
気がつけば、オルガたちはバロールを取り囲んでいた。
「やるではないか、エルフの家族とやら」
バロールは、苦虫を噛み潰すような顔で吐き捨てるように言った。
「バロール! お前の好きなようにはさせないぞ!」
オルガが叫ぶ。
「人間風情に何が出来る!」
バロールがオルガを威圧する。
「ゴブロー! ハク! 行くぞ!」
オルガはそう言うとバロールに剣先を向けた。
「受けて立つ! さあ、来い!」
バロールは両手を上げて構える。
「うぉー!」
オルガとゴブローが斬りかかる。
「おいらも行くぞ!」
「にゃー!」
ハクとエリーゼが、バロールに突っ込む。
バロールはハクの身体を掴んで放り投げた。
ガキンッ!
ゴブローの大剣がバロールの身体に食い込むが力を込めても動かない。
「こ、この!」
大剣が食い込んだままバロールはゴブローとオルガを振り払う。
「くそっ!」
二人は地面に叩きつけられた。
「スザク!」
ホウオウが間髪入れずに斬りかかる。
「姉さん! 任せて!」
スザクが矢を放つ。
しかし、バロールは容易く矢を振り払う。その手でホウオウも弾き飛ばされた。
「くっ!」
スザクとホウオウは、何とか受け身を取ったが、直ぐには起き上がれない。
「どうした? これで終わりか?」
バロールは仁王立ちでイブたちを睨みつける。
イブ、アイリス、ミカの三人がバロールと対峙する。
「女神に精霊神に魔王か、面白い」
バロールは両手を開いて地面を叩きつけた。
ドンッ!
地面が大きく震える。
すると遠くから地鳴りのような音がし出した。
「何だ?」
ミカが身構える。
「これは......皆さん! 飛んでください!」
アイリスが叫ぶ。
「わかった! 浮遊せよ! フロート!」
イブが魔法を唱えるとオルガたちが宙に浮かんだ。
ドドドドドッ!
山から白い雪煙が迫って来る。
「雪崩だ!」
ミカが叫ぶ。
巨大な雪の津波が雪原を襲う。
ノーザリア軍とイストリア軍の兵士たちは、ひとたまりも無く雪崩に飲み込まれていく。
「綺麗に片付いたな」
ミカが言う。
「バロールは何処に行った?」
イブが辺りを見回す。
「あれは?」
アイリスが指差した先。そこだけ雪が解けている。
その中心には、巨大な影。バロールが居た。
「人間を始末する手間が省けたな」
バロールが言う。
「ここからが本番ですわね」
アイリスがつぶやく。
イブ、アイリス、ミカとバロールとの戦いが始まる。




