第8章 見失った光 ― 数字の影に潜むもの ―
真実の最後のピースが、静かに姿を現す。
焦りと自信――その狭間で、見えなくなった“光”。
モニターに映る数字の列が、ゆっくりと並び変わっていく。
静かなオフィスに、キーボードを打つ音だけが響いていた。
凪が小さく息をのむ。
「……出ました。操作履歴の中に、外部アクセスの痕跡が残ってます。」
柊がモニターを覗き込む。
「永峰の端末じゃないな。……これは?」
「シナプステックの外部IDです。」
凪の声がわずかに硬くなる。
環は画面を見つめながら、どこか祈るように言った。
「……誰かの手違い、だといいんですけど。」
灯が静かに首を振る。
「数字は嘘をつかない。……でも、“数字を使う人”は、嘘をつくことがある。」
その一言で、空気が少し張り詰めた。
「……つまり、確定か。」
「はい。アクセス権の照合結果から見て、改ざんしたのは――」
言葉が途中で止まる。
永峰が代わりに、静かに言葉を継いだ。
「――西野、だな。」
沈黙が落ちた。
柊は腕を組み、深く息を吐く。
「永峰……知ってたのか?」
「なんとなくな。あいつは、昔から“早く終わらせようとする”タイプだった。
悪気があるというより……焦ってるんだ。」
灯がモニターの光を受けながら、静かに言う。
「焦りと自信、どちらも同じ場所でミスを生む。
彼はきっと、“間違いを正すチャンス”を見失ったのね。」
「……焦ると、見えなくなる。
灯さんが言ってた通りですね。」
柊が小さくうなずいた。
「信じることをやめた瞬間、人は光を見失う。
でも……まだ取り戻せるかもしれない。」
灯の目がやわらかく光る。
「ええ。
“数字は嘘をつかない”けれど――
人は、何度でも正直になれるものよ。」
モニターに映る数字の列が、ゆっくりと並び変わっていく。
静かなオフィスに、キーボードを打つ音だけが響いていた。
数字は嘘をつかない。
けれど、人は何度でも“正直”になれる。
それこそが、人の進化。




