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EVOLVE〜エヴォルブ〜Season4 ― 信じる力 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜Season4 ― 信じる力 ―
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第7章 ぽかぽか邸の夜

涙のあとに訪れた、静かな夜。

灯と環の心が、ようやくひとつに溶けていく。


――責められると思っていた。


この子を置いて逃げた私を、

きっと恨んでいると思っていた。


でも環(たまき)は、泣きながら“はは”と呼んでくれた。


その瞬間、

私の中の何かが、静かに解けた。


もうこの子だけは、

二度と悲しい思いをさせない。


環(たまき)が笑う限り、

私は何度でも立ち上がる。



◇◇◇



灯(あかり)は環(たまき)の隣に腰を下ろし、

眠っている環の髪をそっと撫でていた。


窓の外はすっかり夕暮れ。

キッチンからは、柊(しゅう)と凪(なぎ)の話し声と味噌汁の香りが漂ってくる。


やがて、環(たまき)が目を覚ます。

ぼんやりとした瞳で周囲を見回し、

灯(あかり)の胸に顔をうずめたまま、小さな声でつぶやいた。


「……はは……」


「起きたのね、環(たまき)。」


灯(あかり)が優しく微笑むと、環(たまき)は甘えるように抱きついた。


「はは……。今日はははに甘えたいです〜」


「ふふ。こんなに甘えん坊だったかしら?」


「いいじゃないですか、今日くらい〜」


環(たまき)は子どものように頬をすり寄せる。

灯(あかり)はくすぐったそうに笑い、そっと背中を撫でた。


「はいはい、よしよし。」


そこへキッチンから柊(しゅう)の声が届く。


「いつまで甘えてる気だ〜?」


凪(なぎ)もおかしそうに笑う。


「子どもみたいな環(たまき)さん、かわいいですね〜」


「でしょ?」と灯(あかり)が得意げに笑った。


「でも、ずいぶん長居しちゃったわね。そろそろ帰らないと。」


環(たまき)はぎゅっと抱きしめた腕を離さない。


「環(たまき)?どうしたの?」


「ははが、“環(たまき)”って呼んでくれたから……うれしいの。」


「そう……もう、“環(たまき)”って呼ばれてもビクッてしない?」


「うん! 大丈夫。ははに“環(たまき)”って呼ばれたい。」


「そう……よかった。もう大丈夫なのね。

 環(たまき)、よくがんばったわね。柊(しゅう)くんたちのおかげかしら?」


「うん! あの人とちゃんと向き合って言えたの。

 “あなたのようにはなりたくない”って。」


灯(あかり)の目に、やさしい涙が光る。


「そう……言えたのね。ちゃんと勇気出せたのね。えらかったね。

 環(たまき)は、ははの自慢の娘よ。」


柊(しゅう)が首をかしげる。


「どういうことですか?」


灯(あかり)は懐かしそうに笑った。


「昔、“環《たまき》”って呼んだら、震えてしまってね。

 それからずっと“環(たまき)ちゃん”って呼んでたのよ。実母のことがあって。」


環(たまき)が小さくうなずく。


「でももう大丈夫。

 さっき“環(たまき)”って言われても、ビクッとしなかった。

 ぽかぽかしたの。

 だから、ははには“環(たまき)”って呼ばれたいんだと思います。」


「そうか……よかったな。」


柊(しゅう)が穏やかに微笑む。


「はい!」


環(たまき)はうれしそうに笑い、また灯(あかり)に抱きついた。


「環(たまき)、そろそろ私を離してくれないかしら?」


「あ! ごめんなさい。」


「いいのよ。いつまでも甘えてくれて、私はうれしいけど……

 そろそろ帰らなくちゃね。」


「はは……また来てね。ありがとう。」


そう言って、また灯(あかり)にしがみつく環(たまき)。


灯(あかり)は笑って、柊(しゅう)のほうをちらりと見る。


「環(たまき)、ぎゅ〜ってする相手、間違ってるわよ。ね、柊(しゅう)くん?」


柊(しゅう)が苦笑する。


「……次は、俺の番だな。」


その言葉に、環(たまき)は真っ赤になって顔を埋めた。


凪(なぎ)が「わ〜イチャイチャ始まった〜!」と笑い、

リビングには温かな笑い声が満ちていった。

もう「環ちゃん」ではなく「環」と呼べる日。

信じる力は、いつしか親子を超えた絆になりました。


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