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EVOLVE〜エヴォルブ〜Season4 ― 信じる力 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜Season4 ― 信じる力 ―
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第6章 涙の再会

過去の傷跡が、再び痛み出す。

環と灯、ふたりの再会は、涙の中から始まった。


カフェのドアベルが鳴った。

三浦環みうらたまきさんですよね?」

声をかけてきたのは、どこかで見覚えのある男だった。


「えっと……クロノスで一緒でしたか?」

「やっぱり、あの三浦環さんですよね?」

「“あの”って……?」


男は笑った。

「情報漏洩の……あの。」

環の胸がざわつく。


「……なにを言ってるんですか?」

「ほら、前の職場でも書類紛失で、先輩に罪をなすりつけたって聞きましたよ。」


空気が一瞬で凍る。

そこへ――。


たまきちゃん?」

入口にあかりが立っていた。

環は振り返るなり、涙をこぼした。


「灯さん……! 私のせいだったんですか? 灯さんが辞めたの……!」

「何言ってるの。違うわよ。環ちゃんのせいじゃない。」


「だって……だって……!」

環は言葉を詰まらせ、泣き続けた。

灯は彼女をしっかり抱きしめる。


「よしよし……大丈夫よ。大丈夫。」


灯はすぐにしゅうへ電話を入れ、迎えを頼んだ。

車の中でも環は泣きやまず、灯の腕にすがりついていた。



◇◇◇



ぽかぽか邸のリビング


柊となぎが静かに見守る中、環は震える声で話した。

「さっきのカフェで……クロノスにいた人が……私に……情報漏洩のことを……

 それに、前の会社でも書類紛失で、灯さんを辞めさせたって……」


灯は環の手を握った。

「環ちゃん、それは違う。

 環ちゃんがあの日、休みを取っていたこと、私はちゃんと覚えてる。

 あの書類をなくすことなんて、できなかったのよ。

 だから、環ちゃんは何も悪くない。」


「……でも、どうしてあの人が……」

環の声がかすれる。


灯は深く息を吸い、静かに言った。

「……そうね。もう、話すときなのかもしれないわ。」


「教えてください、灯さん。私、知りたいの。」

「うん……。でもその前に、約束して。

 この話を聞いても、自分を責めないって。

 守れる?」


「……守る。絶対に。」


「ありがとう。じゃあ、話すね。」


灯は少し間を置き、語り始めた。



◇◇◇



灯の真実


「あの日ね、Aさんって覚えてる?

 その子が、発送直前の書類を入れ替えようとしていたの。

 私ともう一人でチェックしたときは問題なかったのに、

 封をするときには書類が一部なくなっていた。


 Aさんは焦ってた。

 封をしようとしていた別の子が騒いでしまって、

 その拍子に――環ちゃんのロッカーに書類を入れたの。」


環は息をのむ。


「私、それを見ちゃって。

 “そこ、環ちゃんのロッカーよね?”って聞いただけなのに、

 翌日には“パワハラされた”って上司に報告されてたの。

 事情を話しても、誰も聞いてくれなかった。」


柊と凪は言葉を失った。


「だから、辞めるしかなかったの。

 環ちゃんが関わったと誤解される前に。

 あのときは、他にどうすることもできなかった。」


環はしばらく黙っていたが、

次の瞬間、目に大粒の涙があふれた。


「……ははぁ……!」


泣き声は途切れ途切れで、

幼い子が母親を求めるようだった。


「はは……何も知らなくて……!

 ごめんなさい……私……!」


灯は驚きながらも、すぐに環を抱きしめた。

その腕は包み込むようにあたたかい。


「違うの、環。謝るのは私よ。

 あなたを守るって決めたのに、逃げてしまったの。

 だから、泣いていいの。いっぱい泣いて。」


「……はは〜〜っ……!」


環はしゃくりあげながら、

まるで子どものように灯の胸に顔をうずめた。

涙が灯の服を濡らしても、灯は何も言わず、

ただ背中をやさしく撫で続けた。


「よしよし。環、泣いてもいいのよ。

 “はは”の前では、がんばらなくていいの。」


柊と凪は言葉を失い、

ただその光景を見守っていた。



凪がぽつりとつぶやく。

「環さんがこんなに泣くの、初めて見ました。」


柊も微笑む。

「……そうだな。灯さんに甘えてる。」


灯は穏やかに笑った。

「ふふ。これは“はは”の特権よ。」


窓の外では、春の風がやさしくカーテンを揺らしていた。

泣きつかれて眠った環の頬を撫でながら、

灯はそっとつぶやいた。


「……やっと、言えたわね。」


柊が小さく答える。

「……はい。」


灯は穏やかに笑い、環の手を握った。

その手は、少し冷たく、でも確かに生きている温度をしていた。


部屋に静かなぬくもりが満ちていった。

涙のあとには、

ほんのりとした光と、やさしい春の匂いが漂っていた。


言えなかった言葉が、ようやく届く。

“はは”と呼ぶその声に、愛が満ちていく。


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