でぷ
こんにちは
あなたの体型は?
でぷ、です
ほう、それは新時代の幕開け
「生まれつき体は大きかったんです。だからなりたくてなったわけではないんですけど、いつからかステーキよりも白飯の美味しさに、その芳醇な官能的な、素晴らしい舌触りと甘さに打ちのめされてしまうま」
と、言うと?
「つまりわたしはでぷなのです」
ほう、それで?
「でぷ、という言葉は聞き馴染みがないでしょう。まずはそこから説明致しますね」
ここで一時間話が進んだ
「わお、でぷって生きづらいんですね」
そうなんです、でも先から言ってますけども、なりたくてなったわけじゃないんです
「だからって他人の所為にするのはいささか」
でもわたしのせいではないでしょう
「うーむ」
でぷであることの弊害は、
・みにくい
・うごきづらい
・寿命が短い
「うーむ」
それならいっそでぷをやめてみては
「どうやって、まさかトレーニングセンターに行けと言うのですか。このカラダで辿り着くにはとてもシンドイんデスよね」
そのまさかだよね
「それならトレーニングセンターに連れていってくださいよ」
分かりました、では一歩前へ踏み出してみてご覧なさい
「こうですか?」
でぷは一歩だけよろよろと右足を前へ出す
「なにも起きませんよ」
いえ、あなたが越えたその敷居からこちらはトレイニングセンタアです
「ぇえ、やだでぷなのに」
そうです、あなたはでぷですけども、遂にトレイニングセンタアに来たのです、ただしここで喜んでばかりはいられません
「まさか腕立て伏せをやらされるんじゃないですか、わたしでぷなのでスゴクムリナンデス」
まかせて下さい、あなたの中に入って操作しますから、身を委ねてもらえば良いのです
「それっ、ひとおもいにっ」
するとでぷの体はやんわりと軽くなり、
地面に這いつくばって芋虫の律動を開始した
「こ、これが腕立て伏せ?」
口をあんぐりと開けたままよだれをまき散らしでぷは恍惚の表情を浮かべる
「腕立て伏せがこれほど素晴らしいものだったなんて、白米よりもやみつきになりそ」
でぷの上腕はこれまでに蓄積した脂肪と引き換えに疲労を獲得した
トレイニングセンタアでの腕立て伏せはそれから毎日実施された
「これであなたはもうでぷではありませんね」
はい、その通りです
「肉体は引き締まり、あなたは利点しかない」
・うつくしい
・うごきやすい
・長生きできそう
でもなぜか寂しいです
ほう、それはなぜ
「分からないけれど、自分がなにかを得ることで、大切なものを失ったような」
ではまたでぷになりたいですか?
「いつでも戻れますかね」
ええ、と言ってトレイニングセンタアの隅っこに積み上げられたでぷの残骸が手招きしている方を指さされる
なんだかでぷの掃き溜めは愉快そうに笑っている
でぷってそんなに悪いものなのかしらん
振り返りながらトレイニングセンタアのしきいを左足で踏み越えた
でぷ




