人生はギャンブル
「すげえ!!こんなでけえ黒龍初めてみたぜっ!!…ぎゃっ」
黒龍の尻尾が一振りされ、煌びやかな格好をしたB級ハンターは一瞬で息たえた
おそらく彼は自分が死んだことを認識する時間も与えられなかった
「彼は幸せ者だな…」
思わず口から漏れた言葉に困惑した
俺は諦めないぞ、絶対に、家に帰る、そして娘と妻をこの腕に抱き締める
「バフ&バフ&バフ!!15倍!!」
これは俺が俺にかけられる最強の身体強化だ、1分も持たない
「うおおおおおらあああああああ」
美しい銀色の装備に全身を纏った騎士はその人生をかけて黒龍に突進する
しかし、その槍は黒曜石の様なその皮膚に弾かれた
騎士は自らの死を悟りつぶやく
「そうか、ミナ、レイラ、お父さんはここで死ぬ」
その時、一瞬ダンジョン内が明るくなり
ギャリッ!!!!
という音が鳴り響くと、黒龍はその首を失い、血を噴き出していた
「な、なんだ…何が起きたんだ…」
「ははは!思ったよりも柔らかいな!」
ラフな格好をした若者が現れる
「君がやったのか、ありがとう…本当に…」
「どういたしまして!」
しかし、その青年をよく見ると、
彼の左目、右手、胸部、両脚のくるぶしは複雑な色の光とオーラを放っていた
「君のその圧倒的な力は一体…」
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ーーー 1年前
「絶対這い上がってやる…」
薄暗いアパートの洗面所の鏡に映る自分の目をみてつぶやく
「俺の人生がこんなもんで終わるはずないんだ」
「絶対這い上がって死ぬほど金持ちになってやる」
その日は最近出会った友達の家に遊びに行っていた
六本木にある低層マンションにそいつは住んでいた
「サラリーマンとか尊敬するよほんとにww」
といって高笑いしていた彼を前にサラリーマンの俺は苦笑するしかなかった
ランバルガーネに乗ってクソ高いシャンパンをポンポン開けるそいつが自分と同じ歳だとはとても思えなかった
「ケン君もハンターやってみればいいじゃん!」
「いやでも、リスクすごいじゃん?」
そうだ、ハンターにはなるだけで多大なリスクがある
「え、なんか人生に意味とか見出してるタイプ?」
「どう言う事?」
「どうせ死ぬんだからいいじゃん、いつ死んだって」
「ま、まあね…」
彼は僕に飽きたのか、バーカウンターにいるモデルに絡みに行ってしまった
このギラギラとした空間で、僕が彼らに提供できるものは何もなかった
飲み慣れない高級シャンパンで火照った自分を冷やすように外を歩く
「やはり、リスクを取ってハンターになるしかないか…」
そもそも天涯孤独で生まれた俺には、死んで悲しむ人間もいなかった
翌朝、渋谷にあるハンター協会に赴く
ここでは “ハンターとして自分の命を賭ける“ と誓う事でスキルを得ることができる
ハンターについて一般庶民が知っていることは大きく3つ
1 簡単に死ぬ
2 才能が全て
3 一部のハンターは死ぬほど儲かる
これ以上は情報開示がされていない、ネット上も徹底的に統制されている
「ハンターになる」とは、「会社員を辞めてYouTuberになる」、とかそんな次元のリスクでは無い
その代わり当たったら超デカい
昨日会った友達は元々東北で林業をやっていたらしい
それが一念発起ハンターを志し、運良くB級スキルを得てから人生が激変した
2時間ダンジョンに潜って数百万を簡単に稼ぐ
ダンジョン攻略の報酬はハンターネームと共に公表されるため、めちゃくちゃリスペクトされる
モデルも芸能人もインスパでDMしたらそっこーくる
江戸時代にはもてる男は3マラといったらしい
白マラ、砂マラ、傷マラ
それぞれ、
役者(芸能人)、相撲取り(スポーツ選手)、ヤクザ(闇稼業)
派手な世界で、野生的で、暴力的
現代のハンターはまさにこれらを全部合わせたような存在だ、その気になれば落ちない女はいなかった
死ぬ気でやろう、ハンターには「なるだけでもリスク」があるのだから
やるしかない、やるしかない、やるしかない
ハンター協会の本部ビルがある渋谷駅に降り立つ
駅を出てそれを見ればすぐに見つかる、地上200階の摩天楼、ここでのしあがってやる
入り口に入ると受付係と目が合う
「ハンター志望の方ですか?」
俺の身なりを見てか、受付係が俺を促す
「はい、俺は近間 仁です、ハンター志望です」
…




