悪役令嬢リナ④
リナは次あたりでまとめる予定です。
他のヒロインはどうしよう・・・
カインとリナが楽しく話してるといつのまにか夜も遅い時間になってきた。
火の番をカインがするのでリナは馬車の中で寝ていた。
人一人は楽々と寝れるスペースのある馬車でリナはなんとなく眠れずにいた。
カインにはリナのことは話せることは全て話した。
しかし、リナはカインのことを何も知らない。
これからゆっくり知っていけばいいというのも確かだけど、リナはカインのことが少しでも知りたかった。
自分を助けてくれた恩人のことを。
リナが恋をした相手のことを。
そう思うとリナはいてもたってもいられず馬車の外に出た。
火の番をしていたカインはリナをみると驚いた表情をしたあとに心配そうにリナをみた。
「どうかしたの?」
「ええ・・・そのね・・・」
外に出てからリナはノープランだったことを思い出して後悔した。
そんなしどろもどろな様子のリナに何かを察したのかカインは手に持っていたカップを指してリナに聞いた。
「とりあえず、お茶でもどう?」
リナはそれに頷いてカインの側に向かう。
カインは手早くお茶を入れるとカップをリナに渡した。
「熱いから気を付けて。」
「ありがとうございます・・・なんか見たことないお茶ね・・・」
「あ、こっちじゃ珍しいかな。緑茶っていって東洋の独特のお茶なんだよ。」
不思議にカップをみつめていたリナはおそるおそる一口飲んでみた。
「美味しいわね・・・」
「でしょ?」
「カインさんはずっと冒険者を?」
その質問にカインは少し考えてから首をふった。
「いや、冒険者をし始めたのは最近だよ。」
「そうなのですか?」
「うん。その前は1年ほどとある目的で旅をしてたんだ。」
「とある目的?」
「うん。魔王の討伐だよ。」
その一言にリナは絶句してしまう。
魔王。
かつての人類の最大の敵だ。
その力は絶大で魔物を操り、暇潰しに人間を蹂躙したとされるほどの狂人。
しかし、魔王は討伐された。
勇者と呼ばれる存在によって。
そして、その勇者の名前は・・・
「たぶんリナの想像通りだよ。」
そこまで考えていたらリナはカインの声で意識を戻した。
「じゃあ、カインさんは・・・」
「うん。巷では勇者と呼ばれる存在かな?」
信じれない気持ちもあったが、納得もできた。
魔の森を一人で歩き回れるほどの実力を持ち、リナの話を聞いても受け入れてくれる度量の広さ。
それに、妙に貴族にも詳しかった。
そんなリナの様子にカインは苦笑した。
「驚かせたかな?とはいえ、勇者とか言っても爵位とはないし、特別な権限もない。強いて言えば力とあと報償金でのお金くらいしかないよ。」
「そうですか・・・カインさん。本当に私はあなたといても大丈夫なんでしょうか?」
「どういうこと?」
不安そうにカインを見つめるリナ。
「カインさんが勇者ってことは女の子の一人や二人はいるでしょう・・・それなのに、私みたいな罪人が一緒でカインさんの足を引っ張ってしまうんじゃないかと・・・」
「ああ、そんなこと。」
リナの心配をカインはなんでもないことのように笑った。
「俺には家族はいないし、恋人もいないよ。それに勇者と呼ばれているとはいえ、勝手にそう呼ばれただけで評判とかはどうでもいいから。むしろ、リナは大丈夫かい?」
「私ですか・・・」
「うん。勇者なんて呼ばれる面倒な男と一緒で大丈夫かい?」
「そ、そんなこと・・・!」
あわてて否定しようとしたリナは、カインが冗談で言ってるのに気づくと恥ずかしそうに俯いた。
「カインさんは意地悪ですね・・・」
「まあね。」
くすりと笑うカインにリナは拗ねたような表情を浮かべた。
辺りは沈黙が広がる。
不思議とリナはこの静けさも心地よかった。
何故かと考えて・・・分かった。
「好きだから・・・」
「え・・・?リナ?」
はっとあわてて口を隠すリナ。
声に出してしまったことへの羞恥と否定しようと思いながらも否定するのは寂しいという感情にリナは支配される。
そんなリナを見つめていたカインはふっと笑ってから立ちあがり、リナの側へと寄った。
先程まで対面だったが、カインはリナの真横に移動する。
「ねぇ、リナ。正直に答えて欲しいんだけど・・・さっきの好きは何に対して?」
「それは・・・」
「自惚れじゃなければ、俺のことだよね?そうなんだよね?」
否定しようとしたリナはカインのその迫力に思わず首を縦にふっていた。
「そうか・・・よかったよ。今ので俺も確信できたしね。」
カインはそう言うとリナの方に腕を伸ばしてそのまはまリナの体を抱き締めた。
「か、カインさん?」
「俺もリナのことが好きになったみたいだ。」
「えっ・・・?」
カインの言葉がリナは最初理解できなかった。
しかし、徐々にその言葉の意味を理解すると顔を真っ赤にして驚かせた表情を浮かべた。
「うそ・・・」
「本当だよ。」
「だって・・・そんな・・・私なんかを好きになるなんて・・・」
リナはこれまで誰かに好きだと言ってもらえたことはない。
婚約者はもちろん、家族にすら道具としてしか見られてなかったからだ。
たがらリナは信じられなかった。
そんなリナにカインは言葉を紡ぐ。
「リナだからこそだよ。こんなに可愛いのに、芯の部分は誰よりも強くて、心が優しい・・・そして誰よりも頑張ってしまう君だからこそ俺は好きになれた。」
「か、カインさん・・・?」
「なあ、リナ。言葉は確かに信じられないよな。でも、俺の気持ちは否定しないで。何より自分の気持ちも否定しちゃダメだ。」
真っ直ぐにリナを見つめるカイン。
「リナは魅力的な女の子なんだから。好きになるに決まってるし、俺の気持ちは本物だと思う。だからリナ・・・俺のことを受け入れてくれ。」
「わ、私は・・・」
「うん?」
「私は・・・カインさんを好きになっても・・・いいの?」
震えながらリナはカインを見つめた。
「私は・・・カインさんと一緒でいいの?」
信じたい。孤独な心はカインを欲している。
だからこその言葉。
「私は・・カインさんに好きだと言ってももらって・・・いいの?」
不安そうなリナにカインは優しく頬笑みながら言った。
「もちろん。」
「・・!?カイン・・・ざん・・・」
抱き合ったまま、カインの胸の中でリナは泣いた。
「すき・・・大好きです・・・カインさん・・・」
「うん。俺もだよ。」
幼子のように泣くリナを優しく慰めながらカインはリナを抱き締めた。
伝わってくる体温が心まで温かくしてくれるような気がして、リナはこの日・・・
ーーーーー初めて誰かに好きと言ってもらえたーーーーー