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巨人の一撃

 張りつめた試合の合間に訪れる一時の休息。

 観衆は決勝を控えた興奮からかざわつきを抑えきれず、試合場では数人の屈強な男たちがタイルの修復作業に追われている。

「決勝戦は予想通りの組み合わせになりましたね」

 メイド服に身を包んだサラはそう言いながら芳醇な香りと湯気の漂うティーカップを主であるヴィオラに差し出す。

「そうね」

 カップを何処か含みのある笑みで受け取り、紅茶を啜るヴィオラ。そして、こう漏らした。

「でも今回は一波乱あるかもしれないわね」

 今はアトワール領主としてこの場にいるため女神のような笑顔を湛えた領主の姿。だが心の中では湧き上がる興奮を抑え付けるので必死だった。

 だが、そんなことサラには全てお見通し。皮肉っぽく主を窘める。

「楽しみなのは分かりますが、この場では節度のある振る舞いを忘れないようにお願いしますよ」

「えぇ、善処はします」

 それだけ告げるとティーカップの紅茶を堪能し、高ぶった気を一緒に飲み下し落ち着かせる。

 決勝戦が始まるまであと五分ほど。

 観覧席の観衆たちはもう待ちきれないとばかりにボルテージが最高潮に達しており、ユニとグレイスの名が飛び交う。



『只今よりアトワール魔術闘技大会、決勝戦を始めます。両対戦者、試合場へ』

 そのアナウンスと同時に左右の選手入場口から両対戦者が姿を現す。

 左手は挑戦者。濃紺のワンピースに血の跡が痛々しい純白のローブを重ね着し、空色の髪に白いベレー帽を被った前回の準優勝者。ユニ・フローリアン。

 そして右手は前優勝者のグレイス・トレーメイル。出で立ちは黒のタンクトップに白の七分袖ロングジャケットを重ね着し、黒のショートパンツにレザーの指ぬきグローブという魔術師らしからぬ異質な出で立ちだった。

 だが、それに違和感を覚える者はいない。響を除いては。

 つまりそれが彼女のスタイルなのだ。

 お互いに視線を交差させるものの、言葉は交わさない。それに釣られるように会場の緊張感のボルテージが高まっていくのが分かる。

 その張りつめた空気を躊躇いもなく破ったのはグレイスだった。軽口を叩くように。

「準決勝で深手を負ったと聞いたが、元気そうで安心したわ」

 ユニの身を案じているようなこの発言も真意は単なる皮肉だ。

 たかが準決勝であんな無様な醜態を曝した上で、よく私と対等なこの決勝のリングに立てるな、と。

 グレイスが他人を気遣うなんてことはしないし、必要もない。彼女にとって大事なのは自分が何者に対しても引けを取らないという事実、ただそれだけで充分だ。

 もちろんユニもそのことは知っているし、こんな所で臆しているようでは勝算など見えはしないだろう。だから相応の皮肉で返すのだ。

「ご心配をおかけしたようですが、この通り傷は癒えました。手加減は無用です」

 ご期待いただいたようですが、傷は癒えてしまいました。なのでこちらも手加減は出来ません、と。

 それを察してかグレイスの殺気がみるみる鋭さを増し、その圧はエレーヌとほぼ互角かそれを凌ぐプレッシャーとなる。

 それ以上はグレイスも踏み込んで来ないし、ユニも余計なことは付け足さない。

 これは試合前の盤外戦術。軽いジャブで相手の精神状態や戦術を探り合う小手先の技術みたいなものなのだ。

 だが、グレイスが明らかにご機嫌斜めなのは準決勝で勝ちきれなかったためか。

 用心してかからねばと思いつつも、そこに勝機を見いだせるかもしれないと思うユニ。

 両者の睨み合いが数分続き、観客の声援が最好調に達した所で再びヴィオラの声がかかる。


『両者が出揃いましたので、決勝戦を開始します。いざ尋常に―――――――――――』


 ユニは観客の息を呑む音が手に取るように分かるほどに神経を研ぎ澄ませている。


『――――――――――始め!!』


 鋭く放たれた試合開始を告げる声に最初に反応したのはグレイスでも観衆でもなく、ユニだった。

 先制攻撃を仕掛けるべく地を駆け、グレイスとの間合いをみるみる詰めてゆく。その速さは人間の脚力の限界を超えており、それも風の加護があってこそ成せる技。

 そしてあと二歩で手が届く距離になろうという所で精霊への祈りを捧げる。


「《大気に宿りし風の精霊よ、我が願いを聞き届けたまえ。暴風の中で研ぎ澄まされた万物を切り裂くその刃を、我が腕に》」


 祝詞に反応し翡翠色に発光した右手をグレイスの胸部に向けて突き出すが、その手刀の輝きは目標に届くことなく霧散して消える。

「不意打ちとはね、悪いけど私は貴方が思っているほど冷静さを欠いてはいないわよ?」

 涼しい顔でそんなことを言うグレイスは腕の霊力を纏っていない手首より上の腕を的確に掴んでいた。その力は掴むというよりは握り潰そうとしていると表現する方が的確かもしれない。

 一瞬何が起きたのか分からない観衆たちは静まり返り、次第に広がるどよめき。グレイスを称賛する声にユニを鼓舞する声が入り混じる。

「こんな小手先の手が通じるなんて思ってませんよ」

 ユニがそう言うとグレイスは冷たく応じる。

「それならいいのだけれど」

 そう言うと余裕のためかグレイスは掴んだ腕を離す。仕切り直そうとでもいうのだろうか。

 プライドの高いグレイスのことだからこんな大衆の面前で仕切り直しと見せかけての不意打ちをするなんて真似しない。そう分かっていても、今は試合中。気を抜くわけにはいかない。

 ユニは跳び退るように距離を取り、呼吸を整え身構える。

 それを確認するとグレイスは詠唱を開始する。足元には淡く輝く幾何学模様、魔方陣が現れる。


「《術式展開、七式。中級支援術、肉体(ビルド)強化(アップ)》」


 変化はすぐに表れ、グレイスの肉体の張りが一段と増す。より強靭に、僅かな女性らしさを残しつつも身体を護る鋼の鎧へと変貌を遂げる。

 グレイスが得意とする戦術は支援系の術で肉体を強化して、近距離で殴り合う超近距離肉弾戦法。その様は術師というよりも武闘家のようだが、彼女の肉体への執着は常軌を逸しており遠距離魔法など断固として使おうとしないのだ。

 だが、その異質な戦闘スタイルこそが正統派の術師たちにはことごとく刺さるのだ。

 一度肉体を強化してしまえばその後は隙も少なく、鋼の拳から放たれる連撃は相手に詠唱の隙も与えない。そのため成す術なく散っていった術師がどれほどいたことか。

「準備は万端、みたいですね」

 ユニはグレイスの術が発動したのを確認し、次の術の発動に掛かる。

 ちなみにすぐに攻撃しなかったのは仕切り直しをしてくれたことにユニなりの敬意を示したつもりだった。


「《大気に宿りし風の精霊よ、我が願いを聞き届けたまえ。巻き起こるは岩をも砕く風の濁流、獅子の如く咆哮》」


 ユニの突き出した両掌を中心に風が渦を巻き始める。しかもその規模は準決勝の比ではない。

「手加減なしって感じかしらね」

 どこか嬉しそうにそう言いながらユニに向かって歩み寄るグレイス。

 二人の間合いが次第に縮まり、十メートルを切った瞬間。


「《風の咆哮》」


 収束していた空気の塊がダムの決壊した川の如く勢いで流れ出し、グレイスのもとにコンマ数秒で到達する。それに応戦するようにグレイスは右の拳を目一杯引き絞り、弓から放たれた矢の如く鋭さで突く。

 双方の攻撃がぶつかった瞬間、凄まじい衝撃波と轟音が辺りを震わせる。観客席からは悲鳴が起り、目を開けていられず顔を手で覆う者も少なくなかった。

 一見お互いの攻撃が相殺し合っているように見えるこの光景も、張本人である両者には優劣が手に取るように分かる。

 特に劣勢に立たされているユニには。

 グレイス相手では詠唱の隙が作れないのは過去二回の大会で痛感していた。それが原因で負けたといっても過言ではないのだから。

 だからこそ唯一大技が使えるのはこの最初の一撃のみ。勝負を決めることは出来なくとも、せめてグレイスに流れを掴ませないようにとユニも渾身の力を込めた。

 しかしそんな渾身の一撃も日々の修練で鍛え抜かれ、術で強化されたグレイスの肉体の前では脅威には到底成りえなかったのだ。

 この撃ち合いが終わったら、確実に殺られる……。

 ユニの風撃が止むのを確認するとグレイスがすぐに駆け出す。そこで勝負を決めようというのだろう。

 しかし、ユニもそう簡単に負けてやるつもりなんてこれっぽっちもない。もし勝てなくとも醜く足掻いて、足掻いて、足掻き倒してやろうと思っていた。

 だからこそ二人の試合は壮絶なものとなった。

 距離を取ることを許さないグレイスの近距離からの突きと蹴りが二段構えでユニに迫るが、それを風の加護で僅かに逸らすと、すれすれの所で躱し後方に跳ぶ。そして息吐く間もなく精霊に呼び掛ける。


「《大気に宿りし風の精霊よ、我が願いを聞き届けたまえ》」


 詠唱を始めたユニにグレイスは脱兎の如く速さで迫る。

 もう攻撃の術では間に合わない。そう判断したユニは咄嗟に防壁を張る。


「《いかなるものも通さぬ暴風の壁よ、我を守りたまえ》」


 突き出されたグレイスの拳は間一髪の所で何かに阻まれユニには届かない。

 だが一撃で届かないならと両拳の容赦ない連打が見えない壁を貫かんと叩き込まれる。その度に激しい衝撃と炸裂音が響く。

「くっ……――――――――!!」

 術の維持に神経をすり減らすユニは苦悶の表情を浮かべる。

 そこを攻め時と見たか、グレイスの猛攻は止まらない。このままでは決着は時間の問題。


「《拡散せよ》」


 その声に応じ、半球形にユニを覆っていた暴風が外側に拡散するように解き放たれる。その衝撃波には流石のグレイスもその場に踏み止まるので精一杯になり、そこに僅かな隙が生れた。

 ここしかありませんっ―――――――――――。

「はぁっ――――――――――!!」

 鋭い掛け声と共に風の精霊の加護を受けた右拳をグレイスの鍛え抜かれた腹部に叩き込むと、手の甲に激しい痛みが返ってくる。甲冑を素手で殴ったような感覚だ。

 しかし、確かな手応えがあった。

 風の加護の後押しもありグレイスの身体は宙を舞い、後方に二、三回バウンドして仰向けに倒れる。

 そこで再び大歓声が巻き起こる。

 この展開は予想外だったのか押し黙ってしまった一団も見られる。言うまでもなくグレイスのファン達だろう。

 だが、この程度のことで勝利を楽観視出来るほどグレイスが甘い相手じゃないことをユニは誰よりも知っている。

「なるほどね。確かに前よりも立ち回りは上手くなってるし、私の戦術を研究したのでしょうね……」

 そう言いながら立ち上がるグレイスの表情は引き攣った笑顔を浮かべていた。ダメージはほとんどないようだが、今の一撃は果実にグレイスの逆鱗に触れた。

 纏う殺気は一段と深みを増し、瞳に宿る光は飢えた獣のそれだった。


「《術式展開、七式……。上級支援術、肉体(ビルド)特殊(スペシャル)強化(アップ)》」


 詠唱が終わると先ほどまでの鍛え抜かれた美しい肉体は影を潜め、衣服越しでもはっきりと分るほどに隆起。その姿はお伽話に出てくる怪物の類だった。

「まだ終わらないわよ。もうここからは一切の手加減も出来ない。死にたくなかったら負けを認め、この舞台から立ち去りなさい。命の保証は出来ないわ……」

 言い終えると、大きく息を吸い込み吐く。


「《術式展開、八式。特殊魔術、獣化(ビースト)……》」


 それが試合中、グレイスの最後の言葉だった。

 彼女は次第に息苦しそうに呻き始め、前傾姿勢に蹲る。食いしばられた歯が激しく軋み、喉の奥からは低い唸り声が漏れる。

 そこでユニは悟る。これが自らを糧とする禁忌級(クラス)の術であることを。

 あなたは自尊(プライ)()と引き換えに、人であることも捨てようというのですか……。

 特殊魔法とは基本的に魔術師の戦闘スタイルを補うために各々が生み出すもので、その中には汎用性の高さから広く浸透するものもある。

 だが、その一方でその危険性から魔術協会によって禁忌登録され、その術式が広まらないように管理されているものも存在する。

 おそらくこの『獣化(ビースト)』というのもその類の術であろう。

「グルるるるぉぉぉぉ――――――――――――!!」

 巨大な獣と化したグレイスは咆哮し、ユニに飛び掛かる。その動きは単調で、衝動のみで行動する野蛮な獣のそれだった。

 だが、ユニにとってはこの方がやり易かった。衝動に任せた単調な攻撃スタイルの方が読みやすく、対処もしやすい。

 しかしユニが詠唱を始めようとした時グレイスの姿が揺らぎ、次の瞬間にはユニの左の肩口から鮮血が噴出していた。

「うっくああぁぁっ……!!」

 慌てて後退したユニは傷を確認する。切り口は鋭利だが浅く、致命傷にはならないようだ。戦況においては決定打となったわけだが。

 ユニは獣の行動パターンや習性について多少なりとも覚えがあった。そのため一瞬の傲りが生れてしまったのだ。

 そして一番の誤算だったのはグレイスの移動速度だった。ユニも「あれだけで大きくなっては俊敏には動けないでしょう」と自己完結し、無警戒だったのだ。

 しかし少し考えれば分かることだが膨れ上がったのは脂肪ではなく筋肉。ならば脚のバネが何倍になっても不思議はない。

 なるほど、これも作戦のうちというわけですか……。

 つまり、これはユニの思考を先読みした周到な作戦だった。

 怒りに我を忘れたグレイスは自我を糧とした最終手段に縋り、それは見るからに欲望にのみ忠実な獣そのもの。その場合ユニが普段の自分より過小評価するのではないかという憶測は容易に立てられただろう。

 作戦は見事に成功し、ユニは左手を満足に動かすことが出来なくなった。それによって戦況はグレイスに大きく傾いた。

 この状況で一番有効な策は準決勝で使ったユニの固有潜在能力でグレイスに掛けられた術を全て破壊すること。だがとっておきというだけあってあの大技は一日に一回、それも数分しか使うことが出来ないのだ。

 もし準決勝のあの場面で使っていなかったらおそらくこの舞台に立つことも叶わなかったのだから後悔はない。

 グレイスの猛攻は止まらない。攻撃は常に直線的で予測し回避しやすいのだが、獣並みのスタミナを備えたグレイスは休みなく襲い掛かる。ユニにとっては同時に何人も相手をしているようで、このまま詰められたら間違いなく殺られる。

 そこでユニは攻撃を躱しながら自分が大会中に使った術を思い出し、霊力のおおよその消費量を計算する。午前中はほぼ一撃決着で終わらせたため、午後に多少激しめの術を多用したが前大会に比べればまだ霊力に余裕があった。


 この分なら今年はいけそうです、師匠。それに、今のグレイスさんなら耐えられると信じてます……。

 ユニは覚悟を決めると、今度はグレイスの動きに集中。しかし、それは躱すことが目的ではない。そしてその時が訪れた。

 攻撃が終わり次の攻撃予備動作に入り襲い掛かってくるグレイスを躱したその瞬間ユニは、グレイスの右膝裏目がけて風の加護を受けたローキックを叩き込む。加護があれど体格差からして大してダメージは与えられないが、それが軸足の膝裏なら話は別だ。

 ローキックを受けた膝はくの字に折れ曲がり、勢いそのままに態勢を崩しながら倒れ込む。そこからグレイスが起き上がるまでの数秒、それがユニにとってこの試合最後の詠唱となる。


「《大気に宿りし風の精霊よ、我が願いを聞き届けたまえ。巨人の拳の如き強靭な一撃を以って大地を穿て》」


 グレイスの頭上に収束した空気の塊はまるで巨人の握り拳のような形状になる。直径にして五メートル弱。そして、その拳はユニの右手と連動(リンク)している。これがユニの扱える精霊術で最大規模の術で、前大会では霊力不足が不足していたこととグレイスの身を案じ使えなかった奥の手だった。

 ユニは右掌を渾身の力で握りしめ、高く掲げる。そして、地面に叩きつけるように全身を使って振り下ろす。


「《風の鉄槌―――――――――――――――――――――!!》」


 それと連動して巨大な見えざる拳がグレイス目がけて急速に落下する。それは大気圏を滑空して振ってくる隕石の様だった。

 見えるはずのないそれを野生の勘で敵と判断したのか、獣化したグレイスの左拳が迎え撃つ。

 双方の攻撃が激突した瞬間、舞台のタイルが衝撃に耐えきれず螺旋状に亀裂が入り捲れ、グレイスの両足は踝辺りまで埋まってしまう。だが、そこで拳の落下は止まる。

 その衝撃波が闘技場内に吹き荒れ、観客席の悲鳴すらもかき消されてしまう。

「くっ―――――。まだ、まだ……足りないの……―――――――――!?」

 いまだ霊力には余裕があり、術の出力も十分出ている。しかし、グレイスのタフさはユニの想像の更にその上を行っていたのだ。

 隆起する筋肉に、浮き上がる青筋。奥歯は食いしばり過ぎて少し擦り減ってしまっているがそんなことお構いなし。それほどにグレイスの勝利を貪欲に求める様は桁外れだった。

 このまま力比べをした場合、単純に獣と人間なら比べるまでもなくユニが先にヘタってしまうだろう。

 さらにこの術には大きな弱点があり、使用すると大気中の精霊の力をほとんど使ってしまうのだ。そのためしばらくの間付近の霊力は完全に枯渇してしまうため、そうなってしまえばユニに勝機はない。

 なら、もうここで踏ん張るしかない……。

「もう負けられないんだ―――――。優勝するって、約束したんだから――――――」

 折れそうになる心を奮い立たせるのは観衆の声援であり、後押ししてくれた人たちの存在。

 そして、ユニには勇気づけてあげたい少年がいる。

 ユニは右拳に再びありったけの力を込め、思い切り振り下ろす。一杯に握られた指の爪が手のひらに食い込み血が滲むが、今はそんな痛み他人(ひと)の事ように思える。

 今は目の前の相手を倒すことが全て。それ以外は全部後回し。

 その場に響き渡るのは激しい風音と獣の雄叫び、そして喘ぎながらも絞り出すユニの心からの叫び。


「だ、だから――――、だから、落ちろ――――――――――――――――――――――――っ!!」


 ユニの瞳が強い思いに反応するように強く輝き、ピクリとも動かなくなっていた不可視の拳が再び降下し始める。

 そして数秒後、その場に獣の苦悶に満ちた唸り声が木霊し、粉塵が巻き起こる。


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