第十二話 客死のホトケさんこと。
客死。
ざっくり言うなら、本籍地不明で、死ぬことだ。
いつぞや、話したが、実家は葬儀屋だ。
自治体の紹介でそういうホトケさんを扱う。
ホテルや旅館での病死。
或いは、水死の結果流れ着く。
もしくは、格安アパートに入居していて、本籍地不明&身内不明なホトケさん。
何年かに一回はそういうホトケさんを扱う。
その中で、一番印象に残ってるのは、旅館で死んだしょぼくれたナイスミドル。
多少の現金などはあったけど、免許証などの身元証明ができる物は無かった。
少しやせ気味な彼は、検視からするなら、 朝方に死んだ関係で、うちで一晩 預かって、翌朝、燃やす。
預かる代金を抜けば、棺桶代含めて十万少々の仕事になる。
まぁ、一般的な棺桶に納棺して、ろうそくを灯して香をあげて最低限の鎮魂はするわけだ。
施錠はするし、ちょっと遅く帰るはするけども、一晩誰もいない。
私が、最終的に抹香とお鈴を鳴らした後のことだ。
『帰りたい』
誰かの声がした。
好み具合で言うなら、相棒の杉下右京やジョニー・デップ辺り並に、中年男性としては、それ並に好みな消えそうなかすれた声。
頭を上げれば、棺桶の頭側に、中で横たわってる筈のホトケさん。
『帰りたい』
どこに、なんて問うまでも無いだろうとは思う。
それが、何処かなんて具体的さなんてより、『故郷』なんだろうね。
だけど、ホトケさんもある程度、覚悟の上だったんだろうけども。
『帰りたい』
「まぁ、帰りたいよな、おっさん。」
『帰りたい』
「まぁ、緩慢で未必な自殺だけどもね。」
親戚の寺の和尚さんから貰った本式数珠を取り出す。
砕かしたら、怒られること受け合いの代物だ。
なんせ、透き通った傷のない水晶20ミリ玉を数十個だ。
参考までに、ペリドットで20ミリ玉で十数個で一万少々だ。
まぁ、二万以下はない代物。
書き下し文になるけども。
「自らを殺すのは罪なれど、罪を認めるのは幸いなり。」
「罪を認めし者よ、光の門を抜け、十王の裁きを受けよ。」
そういう、お経。
めっさ、意訳してるけど、お経って、「太陽は東から昇って西に沈む。夏は暑いし、冬は寒い。1+1は2になるけどあんた何悩んでるの?」みたいな自然科学的な話がお経だからね。
更に余談ではあるが、日本だと、閻魔様が一番エラいみたいな感じだが、十王の一人。
そのうち、七人に七日ごとに裁かれるのが、正式な奴らしい。
一応、それが兼業で留置期間みたいに現世にいるのが、所謂、四十九日だわな。
ただ、このお経。
祝詞もそうだけど、宗派が違うと聞かないんだよねぇ。
ざっくり、一般的なの使ってもそれだけは変わらない。
「すまんなぁ、坊主。」
結果だけ言うなら、おっさんは上がった。
上がったが、私は女だぞ?
おっさんが認識した時は、コート来てたが、女にしては声低いが私は、女だぞ?
まぁ、そういういつものお話。
色々、フェイクは入れてる。
客死に限らず、普通に居るからねぇ、ホトケさんの頭の方に半透明ホトケさん。
イヤな方向で慣れた。
その上で、某影走りで言うSINを法制化して欲しい。
帰りたいだろうから。




