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File №010 疑惑

どんどんと開いてきてます、更新頻度。

待って下さっている方はいるのでしょうか……。

 最近、特Bはマンネリ化が進んでいる。会議といってもそれらしいことはやっていない。皆なにかを待っているような…そんな雰囲気だ。先週、部長は「来週は嬉しいお知らせがあるかもよ?」と言って士気を上げていた。事件が起こっていないので、あまり効果は見込めないが。

 そして、今日はその来週の定例会議である。

 「先週言った嬉しいお知らせの件だが」

 お知らせから会議が始まる。最早会議をする気はないのか。そんな僕の逸物の不安をよそに、一同は固唾を呑む。

―――今日、お知らせのことだけで会議終わるな

 そんな予感がした。僕のその手の勘は、はずす事を知らない。


 「特Bのメンバーで温泉旅行に行くことが決まったぁ!!」 

 「「おおおぉぉーーー!!」」

 その瞬間、警察署の一角にある、学生だけで組織された部署は、約一名を除き歓喜に包まれた。

 「部長、上に許可とってるんですか?」

 浮かれている仲間を横目に、僕は冷めた目で反射的に上司を睨む。

 「とってるよー?」

 「…そうですか」

 本当に許可が下りているのか疑わしくなる。心底心配で仕方がないが、部長が言うのだからちゃんと話はついているのだろう。

―――温泉か、たまには良いかもな。できれば、1人でゆっくりのんびりしたんだけどなぁ

 温泉旅行という魅惑の四文字熟語に僕の思考は支配されつつあった。

―――って、そうじゃなくて

 「盛り上がっているところ、失礼なんですが…」

 気を取り直し、わざと全員に聞こえる声でそう言った。だが、予想通りというか。僕がそんな発言をしても、場の温度が下がることはなかった。いや、みんな聞こえていないふりをしている。どれだけおき楽な部署なんだと落胆していると、部長が1人こちらを向いた。言うまでもなく、部長の表情はまだ浮かれていた。

 「うん?なんだ、どうした?」

 「人探しのほうはどうなったんですか。ほら、あの写真の少女の件です」

 僕が今日ここに来たのは、これを言う為だ。温泉旅行という響きに血迷いそうになったのは、今となってはもう昔の話だ。

 「あぁ、あれかー」

 警視庁から捜索願がでてから、早1ヶ月経とうとしている。そんな状況で旅行になど、僕にはできない。そんな僕の心情を察知ってか知らずか、部長は僕の肩を「生真面目だな」と笑いながら叩いた。そして、戯けた様子でこう付け加えた。

 「そんなに気になるんだったら、1人残って捜索するか?」

 「是非、一緒に行かせていただきます」

 即答してしまった。頭で考えるよりも先に、脊髄反射で口が動いた。


 「薄情者め」

 「薄情者!」

 「薄情な奴」

 「薄情ですね」

 「人でなし!」

 「捜索そっちのけで今もはしゃいでいるお前らが言えることじゃないだろ!?それと、最後誰だ!人でなしって言った奴!」

 遠くではしゃいでいた藤森たちが、自分たちのことを棚に上げて僕にブーイングをしてくる。


 いつの間にか、僕も一緒になって笑っていた。

―――仲間って面倒だけど、なかなか楽しいものなんだよね

 たまにはいいか、と僕もみんなの輪の中に入る。


 「で、どこに行くんです?」

 努力のできる落ちこぼれ、吉谷が嬉々とした顔で、みんなが気になる旅行先を訊く。

 「近場の温泉宿ですか?」

 と、僕も一緒になって煽る。

 「お前ら、夢がねーなぁ」

 藤森が答える。

 「お前は夢見過ぎなんじゃないか?」

 「そんなことは……ある」

 「「あるんかい!」」

 ちょっとした漫談で場を和ませたところで、指倉が改めて部長に問う。

 「結局、どこ行くんです?」

 「なんと……静岡、熱海温泉だぁ!」

 「熱海ーー!!」

 熱気がひしひしと伝わってくる。捜索の方にもこれくらいの熱意を持ってしてもらいたいものだ。


 「遠いな………旅費はどうすんだろ」

 「だなー」

 皆のテンションがどんどんとあがる中、経費の指倉と僕は旅費のことを考えていた。

―――新幹線で行くとすれば、往復で2万はかかるだろ、それから宿代。熱海で、しかも夏休みだからなぁ…1泊2日で1万~2万いくか?1人3万5千とすると……24万超えるっ!?そんな大金どこから……

 「熱海、っていう格安のとこだったりして」

 「不吉なこと言うなよ、指倉」

 よく当たる、悲しい勘もそれを危惧したことは黙っておいた。

 「さすがにそれはないっしょ」

 吉谷も会話に加わっていた。

 遠くで輝く笑顔が眩しい3人だった。

 「アスカ、ちょっといいか?」

 「あ、はい。大丈夫です」

 自分が呼ばれていることが一瞬、わからなかった。会議らしい会議が最近なかったせいで、この名前で呼ばれるのは久しぶりだったからだ。

 「さっき言っていた、例の写真の少女の件なんだが…」

 「はい」

 部長の眼差しは真剣そのものだった。熱海っていうここら辺の宿だったらどうするよ?とさっき聞いたばかりの話題を口にしている他のメンバーを一瞥したあと、少し躊躇う素振りを見せ、 

 「アスカ、君に一任する」

 半ば脅迫のような眼力で、僕は一瞬たじろいだ。

 「分かりました部長、頑張りま……え?」

 僕は忘れていた、部長は重度のサドだったことを。

 「温泉旅行は新メンバーの歓迎会を兼ねているのでそのつもりでよろしく」

 「1人で夏休みに入る前に探し出せと!?」

 「ま、そういうことだな」

 そう言い残して、部長は皆の輪の中に戻っていく。

 「嘘……」

 「「ドンマイ♪」」

 僕は両肩をそれぞれの悪友に叩かれた。

―――冗談なら良いなぁ…………出来るか?いや、やるしかないか

 「しかたない」

―――でも何で僕に一任したんだろ

 「日時はまた後日知らせるからなー」

―――指倉と吉谷はガン無視されてたな 

 「夏休みは皆予定を空けて置くようにぃ!」

―――新メンバーの歓迎会を兼ねた温泉旅行

 「「おおおぉぉーーー!!」」

―――そして、それまでに写真の少女を……

 僕の脳裏にはあの、この世のものとは思えない、異国の人形のような少女が焼き付いて離れない。そして、それに瓜二つのクラスメイトのことも。

―――まさか、ね。考えすぎだな

 「最近、ラノベ読みすぎかな」

 「ラノベは中高生向けに読みやすくされた小説ノベルスだから、読みすぎも何もないと思うぞ」

 遠くに行ってしまった吉谷とは違い、群れることが嫌いな指倉はまだ横にいる。

 「そういうもんかね」

 「そういうもんだ」

 最近は自分さえ、忘れている時がある。藤森と指倉のせいでもあるのだが、夜霧に対する見方が変わってきてしまっている。警察官もどきからの目線ではなく、一人の人間として、夜霧を見ている感じがする。それに、ミステリアスな美少女、というものはなんだか、ロマンあふれるじゃないか。観察していて飽きが来ない。

 「なぁ、ルル?」

 ルル、というのは指倉のニックネームだったりする。僕と同じく、部長の趣味により付けられた悲しき名である。

 「ん?どした?」

 「捜索手伝って」

 「断る」

 ルルと呼ばれたメガネ青年は即答を決めた。

 「………」

 「………」

 「捜索てt」

 「でも断る」

 仲間の協力は見込めない。やはりひとりでやるしかないようだ。

 

次回、やっと物語に変化らしい変化が訪れる予定です。

どうぞ、よろしくお願いします。

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