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第15章

 【アイヒマンの遺言ゆいごん


 ゲシュタポ(= ナチスドイツの国家警察)のユダヤ人担当者で、ガス室など、ユダヤ人皆殺しに腕をふるったアドルフ・アイヒマンが、イスラエルの法廷で、絞首刑こうしゅけいを宣告された。


 裁判長は、ユダヤの律法りっぽうにより、死刑囚はひとつだけ希望を述べることができる、とアイヒマンに説明した。


 アイヒマンは少考しょうこうの後、「ユダヤ教」に改宗かいしゅうしたいという希望を述べた。


 これはつまり、ユダヤ人になりたいということと同じ意味である。


 裁判長は、その理由を説明することをアイヒマンに求めた。


 アイヒマンは、答えた。


 「そうなれば、またひとり、ユダヤ人が死ぬことになるからです。」


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 【あんたのものだ】


 すばしこそうな都会の若者が、道路端どうろばたに車を停め、種子たねまきしている農夫のうふを眺めていた。


 「しっかりやんな、おっさん。」


 都会男とかいおとこが、農夫に呼びかけた。


 「お前さんがタネをまき、おれができたものを頂くことになる、ってわけだからな。」


 すると農夫は、破顔一笑はがんいっしょうして言った。


 「・・・きっと、そうなることだろうよ。俺がいままいているのは、絞首台こうしゅだいのロープになるあさだからな。」

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