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第十話「また、川の傍で」
女は、逝った。
春の終わりだった。
穏やかだった。
眠るように逝った。
最後に、男の手を握っていた。
男は、しばらくそこにいた。
長い間、そこにいた。
それから、外へ出た。
川沿いを、歩いた。
川が流れていた。
水が流れていた。
止まらなかった。
男は川を見た。
「また、ここで会う」と言った。
声には出さなかった。
心の中で言った。
川が流れていた。
それだけだった。
しかし、男は信じていた。
次の巡りで、また川の傍へ来る。
そこで、また会う。
どんな形であっても、また会う。
ずっとそうだったから。
何度離れても、また会ってきたから。
桜の花びらが、川に落ちた。
流れていった。
男は、川を見続けた。
長い間、見続けた。
それから、歩き始めた。
どこへ行くか、決まっていなかった。
しかし、歩いた。
この巡りを、歩いた。
次の巡りが来る。
また生まれる。
また川の傍へ行く。
そういう気がした。
確信に近い、気がした。
川が流れていた。
春の川が、静かに流れていた。
花びらを乗せて、流れていた。
男は歩いた。
川沿いを、歩いた。
どこかで、また会う。
それだけが、分かっていた。
それだけで、十分だった。
(第十話 了)
転生の果て――最後の巡りの話 完




