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スリハモ7 新しい家族

【偽りの強さ、本当の願い 〜カイリの過去〜】


──それは、今より少しだけ昔のこと。


古びた団地の一室。

そこには、わずかに灯る蛍光灯の下で、おにぎりを分け合う3人の姉妹がいた。


長女:カイリ(当時中2)

次女:ハルネ(小5)

三女:ツムギ(年長)


両親は、突然の事故で他界。

頼れる親戚もおらず、生活保護とバイトで、3人は必死に毎日を繋いでいた。


カイリは、泣くヒマなんてなかった。

葬式の夜、妹たちの前で決意したのだ。


「私が、あんたたちを守る。絶対に、誰にも傷つけさせない」


それから、カイリは男のふりを始めた。


小柄な体じゃ誰も言うことを聞かない。

舐められれば、妹にまで被害が及ぶ。


髪を切り、声を低くし、喧嘩を覚え、街で名を広めた。

気づけば“鉄牙”のリーダーに祭り上げられ、喧嘩が日常になった。


でも、妹たちの前では、ずっと優しい姉だった。


朝食を作り、寝かしつけ、読み聞かせをして、

ツムギに「カイ兄ちゃん大好き!」と言われた時だけ、涙がこぼれそうになった。


ある夜、ハルネに言われた。


「ねぇ、お姉ちゃんはいつまで男のふりするの?」


「……もうちょっとだけ。あたしたちが、胸張って生きられるようになるまで」


そう言っていた矢先、ユリたちをさらってしまったあの事件が起きた。


あのおじさんとの戦いが、カイリのすべてを変えた。


初めてだった。

本当の姿も知らないくせに、ちゃんと向き合って、怒って、叱ってくれて、でも最後には認めてくれた人。


カイリは心の中で誓った。


「今度は、強さを“演じる”んじゃなく、“本当の私”で守る」


そして今、彼女は制服を着直し、肩までの髪を揺らして、妹たちの手を取りながら、

少しずつ“自分らしく生きる”道を歩みはじめていた。


【うち、空き部屋あるよ?】


カイリが「本当の自分」として生きる決意をしたある放課後。

校舎裏のベンチには、いつものメンバー――ユリ、ミカ、ナツキ、アオイ、そしてカイリの姿があった。


みんなで笑い合っていたその時、ふとユリが何気なく尋ねた。


「ねぇ、カイリって、いまどこに住んでるの?」


カイリは少し口ごもる。


「……古い団地。妹二人と3人暮らし。狭いし、壁も薄くて…まぁ、慣れてっから平気だけどな」


その返事を聞いたユリは、すっと真面目な目になり、まるで日常会話みたいにサラッとこう言った。


「じゃあさ、うち来なよ。一緒に暮らさない?」


カイリ「は……?」


ユリ「うち、客間もあるし、人数増えても全然困らないよ? ミカもナツキもアオイも慣れてるし」


ミカ「家族増えるのはウェルカムですから」


ナツキ「お姉ちゃんっぽい人増えるの、アガる〜!」


アオイ「にぎやかになるの、楽しそう……♪」


カイリはしばらく言葉が出なかった。


これまで、助けられることに慣れていなかった。

“守る”ことしか知らなかった。


でも、今は少しだけ涙腺がゆるくなっていた。


「……いいのか? 私なんかが甘えて……」

「いいとか悪いとかじゃなくてさ。困ってるなら、助ける。私たち、そういう関係じゃん」


その時カイリの胸の奥で、何かが“ほどける”音がした気がした。


そして──


数日後、カイリ、ハルネ、ツムギの姉妹は「おじさんファミリー」に加わり、

新しい共同生活が、にぎやかにスタートしたのだった。


【未来の花嫁はゆずれませんっ!】


新生活も少しずつ慣れてきた頃。

朝ごはんの食卓では、もうひとつの“問題”が浮上していた。


ツムギ「パパー!お味噌汁もっとー!」

おじさん「はいはい、もう“パパ”で定着しちゃったな〜」

ツムギ「うんっ!ツムギのミライの旦那様なんだもん!」


全員「…………!?」


ナツキ「え、ミライの……!?」

ミカ「は、早いよ!? ツムギまだ小学生じゃん!」

アオイ「いやでも、かわいいから困る…!」

ユリ(くっ…ツムギ、恐るべし…!)


おじさんは困り笑いを浮かべながら、そっとツムギの頭をなでる。


「ツムギは元気で優しい子だから、きっと将来素敵な人と出会うよ。…その時は、俺も祝福するよ」


ツムギ「やだー!ツムギは絶対おじさんとけっこーんするのーっ!」


ナツキ「だぁーーっ、反則ーーっ!」


アオイ「これは…ライバル増えたってこと…?」


ユリ「むしろ“最年少ラスボス”出現って感じ……」


ミカ「なんなら私たちの誰よりもスキンシップ多くない!?」


◆その日のおじさん:

・登校時にツムギがランドセル背負って手を握ってくる

・掃除中に雑巾渡しながら「旦那様はお仕事がんばってね♡」

・放課後にみんなでベンチ座ると、膝の上に座って離れない


カイリ「……あいつ、小悪魔じゃん。なんで妹ってこうなんだよ…」


だけど、夜になるとツムギは寝る前にぽつりと言う。


「……おじさん、ツムギ、ほんとはちょっとこわかったの。

おうち変わるのも、学校も、知らない人ばっかも。

でも、おじさんが“家族だよ”って言ってくれたから、安心したの」


おじさんは優しく抱きしめて答えた。


「俺も、ツムギが来てくれて嬉しかったよ。

旦那様は無理かもしれないけど、“ずっと一緒の家族”なら、約束できる」


ツムギ「……じゃあツムギ、おじさんとずっと家族でいる!」


そんな愛と笑いとドタバタが詰まった、新しい1日が終わっていく。


【ハルネの声】


みんなが毎日楽しそうにおじさんを囲んでいる中、ハルネは少し距離を感じていた。


学校の話も、家でのドタバタも、笑い声も、どこか自分だけが置いてけぼりのようで、言葉にできないもどかしさが胸にあった。


ある日、夕食の席で――


ハルネ「ねぇ…私も、話に入りたいんだけど…どうしたらいいのかな?」


ユリ「ハルネ、そんなこと気にしなくていいよ。みんな忙しいだけだよ」


ミカ「そうそう!でも、ハルネの意見も聞きたいから、何か話してみて?」


ナツキ「ねえねえ、ハルネの好きなことって何?」


ハルネは少し照れながら話し始める。


「私は…絵を描くことが好き。将来は、誰かの心を動かせる絵を描きたいなって思ってる」


それを聞いたみんなは目を輝かせた。


アオイ「すごい!私も絵、好きかも!」


ミカ「じゃあ、今度みんなでお絵描き会しようよ!」


ユリ「それいいね。ハルネがリーダーで!」


ハルネの顔に少しずつ笑顔が戻る。


「ありがとう。私も、みんなともっと仲良くなりたい」


その夜、ハルネは日記にこう書いた。


『みんなが優しくしてくれて、少しずつ私の居場所ができてきた。私も、この家族の一員なんだって、心から思える日が来るといいな』


【7婚!?おじさんのハーレム事情】

※この世界では多妻制が認められています※


みんながリビングで和やかに過ごすある日。

ツムギが突然、みんなの会話に割り込んだ。


ツムギ「ねぇねぇ、ユリちゃんとミカちゃんはおじさんの奥さんなんだよね?」


ユリ「えっ、まあそうだけど…」


ミカ「そうそう!でもまだまだ増えるかもよ〜」ニヤリ


ツムギ「じゃあアオイちゃんとナツキちゃんもおじさんとけっこんしたいの?」


ナツキ「うん!絶対に!」


アオイ「にぎやかで楽しい家族になりそうだよね♪」


ツムギ「カイリ姉とハル姉も奥さん狙ってるし…えっと…7婚っていうの?」


みんな一瞬キョトンとして、続いて大爆笑!


おじさん(苦笑い)「俺、大丈夫かなこれ…」


ユリ「でも、みんな仲良くやってるんだし、きっと大丈夫だよね」


ミカ「そうそう!これが私たちの家族スタイル!」


ツムギ「じゃあおじさん、だいじょうぶぅ〜?」


おじさん「うん…がんばるよ」


そんなドタバタで笑顔あふれる一幕。

7婚家族のにぎやかな日々は今日も続くのであった。


続く

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