スリハモ5 新たな命
【帰ってきた家族】
ある日の夕方。
ユリの家のドアが静かに開いた。
「ただいま」
久しぶりに帰ってきたパパの声に、ユリは驚きと戸惑いを隠せなかった。
パパは仕事の疲れを見せつつも、家族の顔を見てほっとした様子。
「ずっと会いたかったよ、ユリ」
ユリは複雑な思いで、返事をした。
「おかえり、パパ」
翌日。
ユリはおじさんとミカにパパの帰還を伝えた。
「家の空気が変わりそう……」
ミカは少し不安げ。
「ユリ、どうする?」
数日後、3人とパパは偶然、近所の公園で顔を合わせた。
パパは初めておじさんとミカに会い、驚きと警戒を隠せなかった。
「ユリ、君のことは心配している。大丈夫か?」
ユリはしっかりと答えた。
「うん。みんな私の大切な人たち」
パパとおじさんの間に微妙な緊張が走る。
でも、おじさんは静かに言った。
「私はユリのことを大事に思っています。これからも彼女を支えたい」
パパは一瞬沈黙し、やがて頷いた。
「分かった。君たちがユリの支えなら、認めよう」
その日から、家族と3人の関係は新たな局面を迎えた。
【届かない願い】
夜の公園。
ユリは一人で星空を見上げていた。
胸の奥が痛くて、どうしていいかわからない。
「おじさんに……パパになってほしい。だけど、そんなの無理だってわかってる」
涙がひとすじ頬を伝う。
翌日、ユリはミカに打ち明けた。
「ミカ、私、どうしたらいいかわからない。おじさんのことが好き。でも、家族になれない気がする」
ミカはそっと手を握りながら言った。
「ユリ……それってすごく辛いよね。でも、一人で抱え込まないで。私たちがいる」
ユリは少し微笑んだ。
「ありがとう、ミカ。おじさんは大切だけど、私にはパパもいる。でも……」
「でも?」
「どうしても、おじさんに甘えたい時がある。どうしていいかわからなくて」
おじさんもまた、その気持ちに気づいていた。
ある日、三人で過ごす時間に静かに話し始めた。
「ユリ、無理に何かになろうとしなくていい。僕はパパにはなれないけど、君の味方だ」
「私は、ユリの“もうひとりの大人”でいたい」
ユリは涙をこらえながら頷いた。
「それだけで、十分かもしれない」
三人の間に、言葉にならない絆が深まっていった。
【託された想い】
夕暮れのリビング。
ユリのパパは深いため息をついた。
「また、単身赴任に行くことになった」
ユリは複雑な表情でうなずく。
「寂しいけど、わかってる」
数日後。
ユリのパパはおじさんを訪ねた。
「君にお願いがある。私がいない間、ユリのことを頼みたい」
おじさんは驚きながらも、真剣な表情で答えた。
「分かった。ユリさんをしっかり守る」
ユリにそのことを伝えると、彼女は涙ぐみながらも微笑んだ。
「おじさんと一緒なら、安心できる」
次の日の放課後。
ミカはいつものベンチに座りながら、スマホの画面を見つめていた。
そこには、ユリとおじさんが一緒に暮らすことになったと連絡が入っていた。
「え……?」
胸の中に、知らず知らずのうちにモヤモヤとした感情が広がる。
翌日、ミカはユリに直接話を切り出した。
「ねぇ、ユリ……ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
ユリは驚いたように顔を上げる。
「何?」
「おじさんと、一緒に暮らすって……どういうこと?」
ユリは戸惑いながらも、真剣に答えた。
「パパが単身赴任でいない間、私のことをお願いしたいって言われて……。おじさんも快く引き受けてくれたの」
ミカは言葉を選びながらも、素直な気持ちを伝えた。
「……なんか、モヤモヤするんだ。正直、ちょっとヤキモチかも」
ユリは微笑みながら、ミカの手を握る。
「わかるよ。でも、大丈夫。おじさんは私たちの味方だから」
その夜。
ミカはひとり星空を見上げて、深く息をついた。
「どうしよう……でも、私も大人にならなきゃ」
【ふたりの願い】
ある日の夕方、ユリの家の前。
ミカは少し緊張した様子でユリとおじさんに話を切り出した。
「ねぇ、ユリ、おじさん……私も一緒に、ユリの家に住みたい」
ユリは驚いた顔をしながらも、優しく笑った。
「ミカ……?」
おじさんは少し驚きながらも、真剣な表情で聞いた。
「その気持ちは本気か?」
ミカはうなずいた。
「うん。ずっと一緒にいたいし、支え合いたい。私たち3人で、家族みたいに暮らせたら……って思ってる」
ユリは少し考え込んだ後、決意を込めて言った。
「私もそれ、嬉しい。みんなで一緒にいられたら安心だよね」
おじさんは静かに笑みを浮かべた。
「そうだな。家族は形じゃない。心がつながっていれば、それでいい」
その日から、3人の新しい暮らしが始まった。
小さな幸せが積み重なり、毎日が輝いていく。
【新しい命の輝き】
一年後。
春の風がやわらかく吹く産院の待合室。
おじさんは緊張しながらも、二人のそばに寄り添っていた。
ユリの陣痛が始まり、力強く頑張っている。
ミカも、少し遅れて同じく出産の時を迎えていた。
数時間後、元気な産声が病院に響き渡る。
「元気な女の子です!」
助産師さんの声に、涙を浮かべるユリ。
ミカも優しい笑顔で我が子を見つめていた。
病室で3人が初めての赤ちゃんたちと対面。
おじさんは感動で言葉を詰まらせながらも、そっと手を伸ばす。
「みんな、これからはもっと大切な家族だな」
ユリは母となり、強く優しく輝いていた。
ミカも、母の顔を見せ、二人の笑顔が病室を満たす。
3人の絆はさらに深まり、愛は新たな命へとつながっていく。
続く