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Time:Eater  作者: タングステン
第二話 『Zn』
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第07部

【2023年09月13日17時56分23秒】


「次の過去改変対象者は豊岡阿燕(とよおかあえん)さん。次元さんと同じ原子大学付属高等学校の2年生で、17歳、女性です。クラブには所属していない様です。また、その他にも特徴と呼べる様な物がありませんね」


 俺が問うと、湖晴はいつも通り淡々と説明し始めた。俺は湖晴の『いつも通り』をよく知っている訳ではないが、まあこの場合はその表現で構わないだろう。


「それで、俺はまた音穏の時と同じ様に過去改変をしなければならないのか?」


 俺は率直に数10分前に自分が考えていた疑問を湖晴に投げかけた。ここら辺で何故湖晴が俺に過去改変をさせようとしているのかをはっきりしておきたい。


 俺自身、別に湖晴を手伝うのは構わない。と言うか、気付いたら手伝っているだろうしな。しかし、その目的を知っても良い権利くらいはあるだろう。


「そうでしたね。まだ次元さんには説明していませんでした」


 どうやら湖晴も俺にその事について話す予定だったらしい。話がスムーズに進んで助かる。


「何故、私が次元さんに再び過去改変作業をして頂こうとしているのか、その理由をお話しましょう」

「ああ。俺もそれが聞きたかったんだ」

「それは『次元さんの高度な発想力と行動力』があれば、過去改変の際の他の影響を最小限に抑えて過去改変を行う事が出来ると私が判断したからです」

「・・・・・発想力?行動力?俺の?」

「はい」


 何の話をしているんだ、湖晴は。何処からか話の論点がずれてしまったのだろうか。俺にはそんな発想力は無い。皆無だ。俺は別に頭が良い訳でもないし、国語が得意な訳でもない。しかも、湖晴は英理親和学園とか言う天才高校の出身者だ。俺なんかがかなう訳無いじゃないか。


 だが、それでも湖晴は言った。俺の発想力が必要だ、と。


「実は、前回の音穏さんの過去改変の件なのですが、次元さんの過去での行動は実は全てが正しかったと言う事が判明したんです」

「どう言う事だ?」

「まず1つ目です。次元さんは過去改変後に気絶されていましたよね?」

「恥ずかしながら」

「しかし、次元さんが気絶されていなければ、過去の世界で過去の音穏さんに会う事は無かった。そうなりますよね?」

「確かにな。だが、それがどうしたんだ?」

「次元さんは過去の音穏さんに幾つかメッセージを送りましたよね。『俺がお前を救う』とか『何があっても絶対に絶望するな』とか」

「ああ。そんな事を言った気もする」

「その台詞なんですが、もしかしたらその台詞の影響を少なからず受けて、今の音穏さんがいるのかも知れません」

「すまん。全く分からん」

「小学生くらいの子は記憶力が良いですからね。その台詞を覚えていたのでしょう。それで、音穏さんは研究所連続爆破なんて事をしなくなったのです」

「全く関係性が無い様に思えるのだが。しかも、それはあまりにもこじつけな理論じゃないか?」

「いえ、そんな事も無いんです。このタイム・イーターの因果律計測機能もそうであると表示しています」

「ちょっと待て。またタイム・イーターの機能が追加されたぞ。何だよその因果律のなんちゃらってのは」


 再びタイム・イーターの機能が追加されてしまった。前から思っていたが、一体幾つ機能があるのだろうか。タイムトラベル、グーグルマップ的な何か、時間停止、爆破(?)と今回の因果なんちゃら、だ。


 これはもう完全に素粒子加速器では実現出来ない範囲に入っているだろう。そもそも、タイムトラベルが出来てしまっている時点でその考えは捨てた方が良いのかもしれないが。


「因果律計測機能ですよ。この機能は時空転移した人物が『過去』に行った際に、そこでの行動が『現在』にどのくらいの影響を与えているのかを示す物です。そして、次元さんが過去の音穏さんに放った言葉が『現在』に与えた影響は・・・」


 そして、湖晴はタイム・イーターの因果律計測機能とやらの画面を開いたタイム・イーターを俺に見せた。


 ここで誤解されるかもしれないので念の為言っておくと、別にタイム・イーターには大きな画面が取り付けられている訳ではない。『空間に映像が映されている』のだ。伝わりにくいのは分かるが、画面なんて存在せず画面の様な映像を空間に映し出している。取り合えずこれからはこれを画面と呼んでいく。


 見てみると、『上垣外次元』や『照沼湖晴』と書かれた文字のすぐ隣に、俺達が過去でしていた事がびっしりと書き込まれていた。秒単位で。タイムトラベルをして約20分間、俺の行動の欄が特に記載されていなかったのはここでは言わないでおいておく。


 そして、俺は『過去』でロリ音穏にあの台詞を言ったくらいの時間を見た。人物名、時間、行動と並んで表示されていたその画面の更に隣には因果律と書かれており、メーターの様な物が付いていた。そして、そのメーターの数値が・・・


「MAXになっている・・・・・」

「はい。この表示通り。この因果律計測機能では基本的には数値に変動はありませんが、時空転移者が変わった行動を起こすとその数値が大きくなるんです。しかも、この場合はMAXです。つまり、次元さんにとってあの台詞は何気ない一言でも、確実に時空を超越していたのです」

「・・・・・だが、それでも結果論に変わりはない。2回目は無いだろうな」

「そんな事も無いんです。あの過去改変の際に他の場面でも、因果律計測機能がMAXになっている部分があるんです」

「何だと?」


 何度も言うがこれは一体どう言う事だ?因果律計測機能の仕組みは詳しくは知らないが、取り合えずそのメーターの数値が高ければ高いほど『現在』に与える影響が最小限に、しかも確実に反映されると言う事で良いんだろうか。


 それに、この事はどうやらただ1回の結果論ではなく、2回目があったと湖晴は言った。


「2つ目ですが、次元さんは自分の考えに基づいて、研究所前に警備員がいたのにも関わらず特攻していきましたよね?」

「特攻言うな」

「それで、研究所に入る事も出来ずに摘み出されたんでしたよね?」

「知ってるから何度も言わんで良い」

「実はあの時、次元さんが不審者と認識されていたんです。また、その情報は研究所内の研究員の皆さんに伝わっていたんです」

「それもそうかもな」

「そして、当然の事ながら音穏さんのご両親にもその事が伝わりました。しかし、私達がお2人にあった時、音穏さんのご両親は他の研究員の皆さんと一緒にいなかったんです」

「何か不自然な事か?」


 不自然な事なんて無いだろう。むしろ話がスムーズに進んでいて喜ばしい事じゃないか。唯一不思議な事と言えば、俺が警備員に特攻(笑)した事くらいか。自分をいじめても全く楽しくないし、そもそも俺はマゾではないのでこの事をこれ以上を言うのは止めておく。


「不自然過ぎます。何故音穏さんのご両親だけ別室にいたのか。その答えは1つしかありません」

「・・・・・?」

「『別室に移動させられていた』からです」

「どう言う事だ?」


 『別室に移動させられていた』?何で受け身形なんだ?


「おそらく音穏さんのご両親は研究所の中でも優秀な方に入る方だったのでしょう。それで、不審者の次元さんの襲撃に備えて『あえて』別室に移動させられたんです」


 俺が湖晴に自然な流れで不審者呼ばわりされているが、こんな所で突っ込んでいても話が進まないのでスルーしておく。


「つまり、俺が警備員に捕まらなければ・・・」

「はい、その通りです。音穏さんのご両親に事情を話すには『他の研究員の目の前で話す』か『音穏さんのご両親を別の場所に連れて行ってから話す』必要があったんです」

「そうなると、前者は取り押さえられて通報されて、後者は誘拐事件として指名手配される事になりそうだな」

「どの程度状況が悪化していたかは分かりませんが、とにかく音穏さんのご両親に『現在』の音穏さんの状況を話す時間は無かったのだと思われますので、過去改変には成功していなかったでしょう」

「・・・・・」


 この事は明らかに結果論であり偶然が生み出した副産物だが、それでも全ての事柄に意味があった。それが俺の意図していない事だとしても。どれかが1つ欠けていただけで、あの過去改変は失敗していた。


 もし、あの過去改変に失敗してしまっていたら、『現在』の音穏はどうなってしまっていたのか。そんな事、想像したくもない。俺は今の平凡な生活で充分だ。それ以外の結末を知る必要はないし、知りたくもない。


 その後も、湖晴は俺が『過去』でした事の行動の意味を語った。その中でもやはり、音穏の両親に『音穏に何か言ってやってくれ』と言ったのが影響力が高かったらしく、因果律計測機能の数値がカンストしてしまって永遠と9が並んでいた。湖晴曰く、こんな事は始めてだったらしい。


 俺は湖晴から『何故俺に再び過去改変をさせようとするのか』と言う事の理由をしっかりと聞き取り、納得した。そして、始めに湖晴が言いかけていた『本題』に戻る。


「さて、私が次元さんを起用する理由を話し終えた事ですし、今回の過去改変対象者の豊岡阿燕さんについて、お話してもよろしいでしょうか」

「ああ」


 『起用』と言う言葉の言い回しが少し引っかかったが、俺は頷いた。


「阿燕さんの個人情報は先程話した通りです。それで、今回阿燕さんが引き起こした事件は『路地裏連続通り魔事件』です」

「通り魔・・・・・?」


 これまた物騒な事件だ。しかも、また連続事件だ。やはり犯人からすると1度に終わらせる事は難しいのだろうか。それもそうか。仮にも学生だもんな。時間が無いのは分かるし、学校を休みでもしたら確実に疑われるだろう。


「凶器は拳銃。被害者は3人。全員麻薬等の運び人で指名手配されている、と言う前科がありました」

「ほう。それで、その3人が何で狙われていたんだ?」

「それを見つけ出すのが次元さんの役目ですよ」

「・・・・・はい?」


 3人が狙われた理由を見つけ出すのが俺の役目?え?俺ってそう言う役割ですか、そうですか。ついさっきの会話の流れだと、過去でそれなりに行動するのが俺の役割だと思っていたのだが。


「ですから、阿燕さんが捕まる前に学校で事の経緯を聞いて来て下さい」

「いやいやいや!本人がそんな事簡単に話す訳ないだろ!?」

「でしたら、せめて、その3人と過去に何があったのかその事について聞いてきて下さい。別に阿燕さんを良く知る人物に聞いて来て頂いても構いません」

「湖晴が直接聞く事は出来ないのか?」

「・・・・・私は学校には入れませんし・・・入りたくもありません」

「それもそうか。他校の元生徒が入ってもトラブルの原因になるだけかもしれないしな」

「え、ええ。そうですね・・・・・」


 この時の俺は湖晴の行き詰る様なその返答に気付く事は無かった。


「そうか。分かった。明日、俺がその豊岡阿燕とか言う奴にアプローチして来てやる」

「はい!ありがとうございます!」


 そして俺の過去改変の下準備、つまりはアプローチが始まる。

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