台風とツキノワグマのそう太(10)
「ちょっとおばあちゃんの様子を見てくるわね」
別に焦らすわけじゃなく、私は本当におばあちゃんのことが心配になっていた。
風のせいでさっきから雨戸が音を立てて揺れていた。その音でおばあちゃんが起き出して、一人で怖がっているんじゃないかと思ったんだ。
それでも改めて意識してみると、雨足はさっきよりも少し弱まっているように感じた。
廊下を進み、おばあちゃんの部屋を覗いてみる。おばあちゃんは本当にぐっすりと眠っていた。それは本当に子どもみたいに安心しきった寝顔で、自然と私の表情もほころんでしまう。
あのまま話を続けていたら、私は泣いてしまっていたかもしれない。お母さんと離れた私は、さっきのくすぐったい時間を思い出してそう思う。
体は私の望む望まないに関わらず勝手に大人になっていくのに、どうして心はいつまでたっても大人になれないんだろう。
「おばあちゃんの様子、どうだった?」
私が部屋に戻るとお母さんは言った。
化粧を落としたお母さんははっとするように色が白く、私は見とれてしまわないようにお母さんの胸元に視線を落とした。
「ぐっすりと眠ってた。あの様子だと、きっと明日の朝までは目を覚まさないと思うよ」
「良かった」
「お母さんは眠たくない?」
「あら、私の心配をしてくれるの? 私は大丈夫、それよりもあなたよ。こんな時間まで起きていて平気なの?」
十二時を少し過ぎたところだった。いつもはとっくに眠っている時間だったけど、不思議とまったく眠たくなかったし、それから私とそう太がどうなったのか話してしまいたかった。
もっと時間があれば、他にもたくさん話をしたかったけれど、お母さんの話を聞きたかったけれど、それは今日じゃなくたっていいんだ。
私とお母さんは一緒に暮らしてはいないけれど、親子なんだ。
だからきっとこれからいくらだって、覚えきれないくらいたくさんの話をする時間がやって来るんだ。
ベッドに入り込むと、お母さんにくっつく。まるでカンガルーの赤ん坊にでもなった気分だ。私はまた話し始める。




