第一章サージエンス編⑧ やっぱこうでなくちゃね!
YouTubeにて音声動画上げてます
OP「今はまだヒミツ♡」
https://youtube.com/shorts/ztOAm6DjzNI
翌日。
フルルの様子を見に、病院へ。
今日もみんなには留守番を頼み、メルリと共に向かう。
みんなは来たがるが、そんなに大きな病院ではないからな。
ここしばらくでは珍しく、メルリがオレの腕に抱きつかない。
「メルリ。やっぱフルルが心配か?」
「ええ…そうではありますが…」
来た。
今、語尾に逆接の接続助詞『が』が付いた。
つまり本音は他のところにある、ということだ。
メルリクイズもこれは難問だぞ。
ノーヒントな上に誤答は余計に沈むこませかねない。
慎重な回答が望まれる。
…と昨日のことを思い出してみれば、フルルの件以外になんか…あるな。
アレか? アレなのか?
「あの、そのなんだ、メルリ。昨日のアレ、似合ってた、ぞ?」
「え? あ、あの…恥ずかしい…」
しまった! 違ったか!?
「でも…嬉しい…です」
と言って腕に抱きついてきた。
…が、少し勢いが弱い気も。
不正解ではなかったが、大正解でもない、ってところか。
◆
病室のフルルは上半身が包帯でぐるぐる巻きだった。
そりゃ手術した後だからもっともなことなのだが、やはり見た目は痛々しい。
「大丈夫、フルルちゃん。痛かったりしない?」
「だいじょうぶなのでして」
「術後経過も順調なようなので、明日には包帯を取っても良いと思うんだがね」
「そうですか。よかったな、フルル」
「ハイなのでして。カナート。ちょっとちょっと」
フルルが手招きをする。
耳を貸せ、と?
「メルリがげんきなさそうでして。カナートがしっかりするのでして」
「っ!」
ニンフだからなのか?
女の子だからなのか?
鋭いなぁ…よく見てる。
「ああ、分かった。まずはお前がしっかり治せ」
「ハイなのでして!」
帰り道。
「あの、フルルちゃんは…何と?」
「ああ、うん。メルリをしっかり頼むよ、って」
「…ふふ。しっかり治してもらわなくちゃいけないのはフルルちゃんの方なのに。ねぇ?」
そう明るく言って腕にしがみついてくる。
わっかんないなー、女の子って。
杞憂、なんだろうか?
メルリは何かあればオレに話してくれた。
だからオレは待とう、メルリが話してくれるのを。
◆
「ふぅ、ただいまー」
ホテル住まいではあるがとりあえず言ってしまう。
「お疲れ様です。今、お茶淹れますね」
あれ? …まぁいいか。
いや、普通に自然にメルリがオレの部屋にいるんだが。
来いとも言ってないし、行くとも言われていない。
ただただ、それが当たり前のように一緒に部屋へ帰って来た。
…寝る時は…自分の部屋へ行くと思うんだけど。
ピンポーン
客?
「はーい」
〈メルリぢゃんいるー?〉
パイセンだ。
カチャ
「おっす、カナっち。メルリちゃんは一緒?」
「ああ、そうだが」
「ミキミキさん、何でしょう?」
ミニキッチンからメルリが顔を出す。
「頼んでたヤツ。アレ、出来たってー。さっきリリアさんから連絡あったんだけど、どうするー?」
「あ! ホントですか? 行きます! 取りに伺います!」
「あたしらも一緒に行っていいー?」
「もちろんです!」
「それじゃ、あ、いけない! ご主人様! お茶を」
「いいよー。行っといで。お茶は戻って来たらお願いするよ」
「あ、の…はい。わかりました! じゃ、あの、行って来ます!」
と、慌てて出て行った。
何を頼んだんだ?
…また共謀者が良からぬ企みをしてなければいいが…
◆
それから1時間ほども経たず
ピンポーン
また呼び鈴。
ベッドでゴロつく暇もねぇ。
「はいよー」
〈メルリです〉
おや。もう帰って来た。
カチャ
「おかえ…あっ!」
ちょっとビックリして声出ちゃった。
そこには…メイド服姿のメルリが立っていた。
…あ…
「エプロンドレス…」
「はい。直していただきました」
「それを取りに行ったのか」
「はい! あの、やっぱりこの服が一番落ち着くなって…」
と、顔を赤らめながらちょっともじもじ。
「ああ、そうだな。やっぱり似合うぞ、メルリ」
「はぁぁぁ…ありがとうございます! あ、お茶! 淹れますね!」
「ああ、頼む」
何となく、いつもの調子に戻った気がする。
やっぱアレよ。邪念渦巻く服装はメルリに似合わんってことよ。
ん?
開けたドアの隙間から見える不審者2名。
「何やってんの? パイセン、それにヒミコも」
「いやー、別にー」
「なんでもないよ、なんでも」
そんなわきゃねぇだろ、オマエら!
まぁいい。
「二人とも、お茶飲んでくか?」
「おう、行く行くー。だってメルリちゃん、途中でお茶してこうぜって誘ってもすぐ帰るって聞かないんだもん!」
「やっぱカナートくんに最初に見てもらいたかったんだもんねー!」
やべーよ、そんなこと聞かされたら、オレ、泣いちゃうじゃん。
その後は…オレはただ座っているだけの飾りだった。
だって女三人が喋ってるんだぜ?
◆
ED「この穏やかなぬくもりに」
https://youtube.com/shorts/TfUN7HlPlsI