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第一章サージエンス編⑦ オスカレッテ師範(?)の剣技指導

YouTubeにて音声動画上げてます


OP「今はまだヒミツ♡」


https://youtube.com/shorts/ztOAm6DjzNI


 サージエンス滞在3日目。

 フルルの手術は昨日の午後に行われ、その後もしばらく経過観察で入院、とのこと。

 ちょこちょこ見舞いには行くつもりだが、フルルが入院中ということで移動するわけにもいかず、オレたちはホテルで缶詰状態。

 初めのうちは面白がってあちこち設備を見て回ったが、流石に飽きた。

 部屋に篭ってみたところでテレビがあるわけでなし、寝る以外の暇つぶしがない。

 あまりにも暇なのでみんなに声を掛けたら相当暇だったんだろうな、全員即答でオレの部屋へやって来た。


「カナートは実体剣は持たないので?」

「実体剣?」

「エックスカリばーって実際のところ刀身がないじゃないですか。常に必殺技で使うならともかく、それまで凌ぐのに逃げ回るだけではまたザックリやられちゃうかもしれませんよ?」

 確かに…オラシオン=ハウウェルとやり合った時も、こっちは一撃必殺だからな、向こうから攻めてもらわにゃ間合いに入れんかった。おまけに微かな隙で攻撃喰らっちゃったからな。ユーリの言うことには一理ある。

「【設定】で作れるのか?」

「まぁそうなんですが…でもどんな剣がいいのか、自分に合うのか、分かりませんよね? 長さ、太さ、重さ、刃のつき方、などなど。その辺りをオスカレッテさんに相談してみてはいかがでしょう?」

「えー、アイツに頭下げんのー?」

「まぁまぁ。そう言うのも無理はないですが、彼女、プロですよ? 技術的にも」

 確かに。実際対峙したオレですら、見惚れてしまいそうなほどの剣捌きだったからな。

「確かにヤツの剣技は目を見張るものがある…」

「でしょう? まぁ彼女の顔を立てるとでも思って」

 顔を立てる、か。

「ユーリ先生はホント気遣い上手だな」

「それほどでも。それにこうした持ちつ持たれつというのも良好な人間関係を築くのに大切なことでもありますよ」

 人間関係、ね。オレの中で一番破綻してる部分だな。

「そうだなぁ…まぁ何より暇だしな。どれ、ちょっくら白騎士団に連絡してみるか」

 電話してみたら「今すぐ来い!」だそうだ。

 あっちも暇なのか?

「なんか楽しそうな話をしてるねー」

「わたしたちも行っていいかな?」

「いいんじゃねぇか? メルリも行くか?」

「ええ、もちろん」

「まぁカナっちが行くところならメルリちゃんも行くよねー」

 ニヤニヤと這い寄るパイセンに

「当然ですッ!」

 メルリはプイッと顔を膨らませ、横を向く。

「僕は別件で…よろしいですか?」

「構わんよ。むしろよろしく頼む」

 ユーリはこうした時、ちょこちょこ別行動をとる。

 怪しいわけでもボッチが好きとかでもなく、次の目的地を検討するなど、今後の行動計画を作っている。

 これまでも、ユーリの計画に基づいてパイセンたちも行動していたそうだ。

 ある時は一緒だったり、またある時は別行動だったり。

 その辺はそれぞれの好みで、とのこと。

 今回は特にこのサージエンスの街が協力的だということで、情報を集められるだけ集めている。

 まぁ地図も無いからね、この世界は。


◆


 指定された場所へぞろぞろと団体さんで行ってみる。

 でっけぇビル。白騎士団の支部の建物だそうだ。

 受付を顔パスで通ると5階に案内された。

 ここだと言われた部屋の、大きな扉を開ける。

 すると

「待ちかねたぞ」

 道場ってヤツだ。

 中でグランディールとリリアが待っていた。


「さてカナート。得物は好きなものを選ぶが良い。そこの壁だ」

 物騒なものが壁にズラーっと。

 だがオレは男の子だぜ?

 選ぶモンなんか一択でしょ!

「この大剣を」

「ほほう。アナタに使いこなせるかな?」

 グランディールめ、今日ばかりは自分の得意分野(フィールド)なせいかやけに威勢がいい。

「やってやるさ」


 付き添いのメルリは当然見学。

 リリアと一緒に道場脇の観覧席だ。

「メルリちゃん、調子はどうっすか?」

「あの、えっと、ぼちぼち、です」

「フルル様も手術、無事成功で良かったっすね。あ、始まるっすよ」

「え? あ、はい!」


ガキーン

 キンッ


 真剣同士のぶつかり合い。

 防具は無い。

 ケガがあってもメルリが治せるからというのもあるが、緊張感を高めるためとカナートの方から申し出た。

「よし! そこだ! 行けぇ! やっちゃえー! あー惜しいー!」

 カナートの応援で無邪気にはしゃぐメルリ。

「ねぇ…メルリちゃん…昨日は先輩を助けてくれてありがとうっす」

「え? あ、はい。いえいえ、大したお構いもしませんで」

「ん?(まぁいいか)…中央広場が大変なことになってるって聞いて駆けつけた時、ウチ、泣きそうなくらい絶望的になって…」


◆


「駅前の中央広場に派遣された治安部が苦戦してる! 総員武器を取れ! 民生部とて戦闘も免れんかもしれんぞ! みんなでサージエンスを護る!」

 最初…それを聞いた時、せいぜいちょっと大きめのミュータントでも迷い込んだんだと思った。

 でも実際に現場に行ってみて…その光景に驚愕した。

 オスカレッテ先輩が…負けた?

 先輩だけじゃない…集められたのはみんな、治安部のエースたち。

 それぞれがこの街を守るために、日々技術を力を磨いて来たというのに…こんな野蛮な盗賊なんかに負けるなんて。

 誰も…止められないのか?

 この街を護れる者は、他にないのか?


◆


「そんな時、カナートくんが現れて…メルリちゃんが現れて…盗賊をぶっ倒して救ってくれた…カナートくんとメルリちゃんは、サージエンスの救世主で、先輩の救世主なんっすよ。これは…偽ざるこの街の認識なんっす」

「そんな…メルリは…【役目】を果たしただけで…」

「【役目】?」

「メルリがいつでも笑顔でご主人様の側にいること。ご主人様がそんな【役目】を与えて下さいました」

「それで…先輩が回復を?」

「メルリの笑顔は【魔法】なんだそうですよ?」

「回復の?」

「はい」

 一片の曇りもない笑顔で、メルリは応える。

「は、はは…凄いっすね…先輩もね、凄いんすよ。強くて、優しい。それで、珍しいんすよ。今、カナートくんとやってるっすけど、あんなに長いのは」

「え? ご主人様が互角な勝負をしているのでは?」

「いやいやー、ウチも入団時は一通りやらされたんで少しは分かるっすけど、剣技なら圧倒的に先輩のが上っす。でも先輩は…この稽古でカナートくんに学ばせたいような…そんな感じに見えるっす」

「へぇ…」

「いつもなら格下相手ならさっさと決めちゃうっすよ?」

「そ、そうなんですか」

「あれが口下手な先輩流の恩返しなんじゃないっすかね、サージエンスを救ってくれたことへの」

「あの…失礼ながらリリアさんってお優しいのですね」

「え?」

「白騎士団の人って厳しい人ばかりなのかと」

「ああ…完全にファーストコンタクトを誤ったっす…その件は忘れていただけると…ね?」

「ハイっ。メルリは…みなさまから優しくしてもらっています。もったいないくらいに…」

「そりゃメルリちゃんの人徳ってヤツですよ」

「そういうものなんですか?」

「そういうものなんす」


◆


「ハァッ ハァッ」

「ハァッ 今日はこの辺にしておかないか?」

「ああ。そうだな」

「アナタはなかなかに筋がいい。まだスキはあるものの、大剣を使いこなせているようだ」

「そりゃどうも。団長様のお墨付きなら間違いないだろう」

「はいはーい! 次、わたし!」


ドォッ


「ごほぉ…」

「安心しろ。峰(フラー)で殴っただけだ。痛いだろうが、切れてはいない」

「ね?」

「あわわわ! ヒミコさーん!」

 慌ててメルリが駆け付ける。

 ヒミコは開始間も無く胴に一撃を喰らい、敢え無く撃沈、だった。

「大丈夫ですか?」


スゥゥゥ…


「ふぅぅぅ…ありがとう、メルリちゃん。回復したよ。オスカレッテさん! もう一本、お願いします!」

「ふふ。いいぞ。どこからでもかかって来い!」

「よろしくお願いします!」


◆


 オレだけでなくヒミコも稽古をつけてもらい、色々とアドバイスを受けた。

 それが的を得た的確なものだったのだろう、ヒミコはグングン上達した。

 オレ? まぁ…ほら、実体剣作るための参考だからさ!

「さてどうするか。剣技指導の礼をと思ってるんだが」

「いや、礼には及ばんぞ。ワタシの鍛錬にもなったからな。もう無様な負け方はしたくない」

「真面目なこって。そうだなぁ…部屋に来て茶でも飲むか?」

「は? そんなお邪魔しては悪い」

「違うんだ。暇なんだよ。フルルが入院中の間はここを出発するわけにもいかんし」

「それなら、馳走になろう」

「パイセンたちもどうだ?」

「行くに決まってんじゃーん!」

「メルリ! みんなの分のお茶、淹れてくれるか? もうルームサービスも飽きたし、何よりメルリが淹れてくれたお茶が一番だからな!」

「はい! 喜んで!」

「メルリちゃん、愛されてるっすねぇ」

「えへへ。そうですかね!」

 メルリは真っ赤になって照れってれだ。


◆


ED「この穏やかなぬくもりに」


https://youtube.com/shorts/TfUN7HlPlsI

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