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刀一本で世界を救う  作者: 破壊と絶望の申し子
9/12

町への襲撃

朝になり、アーデリアを出た。途中で魔物に出くわしたが、たいした相手ではなくすぐに倒して先に進む。途中宿で作ってもらった軽食を食べつつ、15時頃にはアデレートを確認できる距離までたどり着いた。


「帰りは特に問題なく進んで良かったですわ」

「まあ、これが普通なんだと思うけど…ん?」


アリシアと2人でそんな話をしながら町を眺めていると、異変に気付く。町から黒煙が上がっていた。2人も気がついたようだ。


「おい、アレ」

「一体何が起きているのでしょう…」


アリシアは不安そうに煙を眺める。煙が出ているのは一ヶ所。火事だろうか?


「く、クロ様!お嬢様!あれをご覧下さい!」


慌ててゲイルが空を指差し叫ぶ。空に何か飛んでいるが、遠くてよく分からない。だが、アリシアは理解したのか、顔が青くなっている。


「あれは[ブラストドラゴン]。この辺りに空を飛ぶ魔物はそのドラゴンだけです。火を吐くこともなく、ドラゴンの中では劣等種ではありますが、それでもドラゴン。このままでは町が…」


ゲイルは悲痛な面持ちで言う。強さはBランク上位。町にはそれに対抗できるものがいるのかどうか。放っておくと町は壊滅してしまう。自分にとって、アデレートはもうただの町ではなくなっている。


「先に行く」

「「え?」」

「走った方が速い」


バックパックから回復薬だけ取り、町に向かおうとする。


「キュッ!」


ラトが自分も連れてけと訴える。正直勝てるかどうか分からないので、連れて行くことにした。運を味方につけた方がいい。ラトを頭に乗せた。


「じゃあ、行ってくる」


俺は馬車を飛び降り、走り出す。馬車を置き去りにしてどんどん進んで行く。



「本当に馬車より速いのですね…」

「流石はクロ様です…」


残された2人は呟く。もうクロの姿はなかった。



馬車で2時間かかるであろう距離を数十分に短縮した。町に着くと被害は思ったより抑えられていた。


「住民の皆さん!落ち着いて教会に避難して下さい!こっちです!」


声の方を見ると、見たことある少年たちがいた。


「あ!兄ちゃん!こんなところになんでいるんだ?ここは危ないから速く教会に避難して!」


ああ、そういえば一緒に町まで同行したな、こいつらと。


少年たちは住民を最も頑丈な造りをしている教会に避難させていると言った。[ブラストドラゴン]相手に駆け出し冒険者では挑んでも無駄に死ぬだけだから、できることをしているとのこと。元を含むDランク以上の冒険者は戦闘に参加し、何とか一ヶ所に留めているらしい。


「で、[ブラストドラゴン]はどこにいる?」

「え?さっきまた空から降りて来てあっちの方に…あれ?兄ちゃんどこいった?」


[ブラストドラゴン]がいるという方に向かうと、徐々に町の傷跡が大きくなっている。激しい攻撃にあっているようだ。


「グアァァァ!」

「またアレが来るぞ!」

「ひ、ひょほほ……わたくしに任せなさい。《シールド》」


[ブラストドラゴン]は近くで見ると全長5メートルほどの大きさだった。その口から風の塊を吐き出す。それを魔法障壁がなんとか食い止めるが、ヒビがはいってしまっている。


「くそ、救援はまだか!」

「じきにAランクの冒険者が来るはず!それまで何としてでもここで食い止めるわよ!」


斧を担いだ親父と短剣を構えた女将がいた。2人ともボロボロな姿になっている。《シールド》を展開しているアランも今にも倒れそうだ。立っているのはこの3人のみ。周りには10数人倒れている。


俺は[ブラストドラゴン]の元まで走り跳躍、翼を狙って刀を振り下ろす。


ーーガキィィン!


硬い。表面に少し傷がついた程度だ。ドラゴンの注意がこちらに向いた。


「おい、お前さんがなんでここに!?」


親父と話している余裕はない。着地と同時に風の塊が飛んで来たので、ラトを抱え転がって避ける。


ボコッ!


地面が抉れた。まともに食らったらやばいな。ラトを遠くに避難させて、地に降りて来たドラゴンに連続で斬撃を食らわせる。


ガン!ガキッ!ガッ!ガキン!


どこを切ってもあまり変わらない。腹は多少柔らかいが、それでも刀は通さない。


「無駄だ!生半可な力や刃物では傷はほとんどつかない!魔法でないと効果は薄い!」

「ひょほ…わたくしは防御の魔道士。わたくしでは力不足だったのですよ…」


だとしても。このまま放置するわけにはいかない。


ドラゴンの尻尾を避けて、顔に力を込めて刀を振り下ろす。やはりダメージはほとんどない。すると、ドラゴンは息を大きく吸い込み、渦巻く風の塊を吐いた。

とっさにその場を離れるが、


「……っ!危ない!その攻撃はっ!!」


女将が叫ぶが、遅かった。風は地面に着弾すると同時に大きな爆風を生み出した。俺は体に激しい風の壁がぶつかり、吹き飛ばされる。立っていた3人も風圧の余波で壁に叩きつけられ、気を失っていた。


「くそ、とんでもない風だな…」


傷付いた体を癒すため、回復薬を飲む。傷を負った部分が温かくなり徐々に癒えていく。このままでは勝てないと判断し、


「《リミッターブレイク》!」


固有技を発動した。解放するのは50%まで。体に黒い光が宿る。勝負は3分間。それまでに倒さなければ確実に死んでしまう。


ガシュッ!


素早く接近して斬りつけると、浅いがようやく刀が通った。


「よし、これなら」


ドラゴンの爪攻撃を飛んでかわし、顔に刀を叩きつける。顔は特に硬く傷はほとんどつかないが、衝撃で少し怯む。その隙に懐に接近し、限界を越えた力を込め、刀を握りしめる。筋肉がギシギシと悲鳴をあげるが関係ない。


「オラアァァァ!!」


全力を越えた一撃を腹に突き刺す。ズブリと音を立て、肉に食い込んでいく。


「ギョアァァァ!」


ドラゴンは苦しそうに叫ぶ。トドメとはいかないものの、致命傷は負わせることが出来た。そのまま刀を引き抜き、切り刻んでいく。浅い傷だが徐々にダメージを蓄積していき、とうとうドラゴンは絶命して、その場に【ブラストドラゴンの鱗】を残した。倒したのを確認して、ラトが駆け寄ってくる。


「ふう、なんとか……っ!」


3分経って反動が来た。激しく動いたからか、前回より痛みが酷く、まともに動けない。立っているのも辛い。なんとか気絶した3人の方に向かおうとすると、後ろに何かが降りて来た。


「…嘘だろ?」


そこには2体目の[ブラストドラゴン]がいた。


「グルアァァァ!!」


ドラゴンは怒り狂って叫ぶ。直感で倒したドラゴンのつがいであると察する。俺めがけて風の塊を吐くが、反動の影響で動きが鈍くなっているためほとんど避けることが出来なかった。凄まじい暴風に吹き飛ばされ、倒れてしまう。体は動かない。ドラゴンはのっしのっしと歩き、俺にトドメを刺そうとする。


「キュー!」


ラトが鳴く。すると突然近くの建物が爆発し建物が倒れ、ドラゴンを押しつぶそうとする。しかし相手はドラゴン。押し潰されることはなく、無傷で建物を破壊し、歩みを進める。ラトは早く起きろと言わんばかりに俺の頭をペチペチ叩く。


「グアァァァ!」


風の塊が襲いかかる。なんとかラトを抱き寄せ、これから来る衝撃に備えようとするが、


「《リフレクトフレイム》!」


突如、俺の目の前に逆巻く炎が出現し、風の塊を包み込んだかと思えば、弾かれるように炎の塊となってドラゴンに返した。顔に命中し、思わず怯んでいる。霞む視界で声の方を見ると、白銀の鎧を身につけた赤髪の人が見えた。顔はよく見えないが、声からして女性だろう。


「《フレイムペイン》」


炎が放射状に放たれ、ドラゴンを覆い尽くす。風を起こして消そうともがいているが、火は強くなる一方だ。その間に赤髪の女性はいとも簡単にドラゴンを真っ二つにしていた。手に持つ剣には青い炎を纏っている。


その光景を見ながら、とうとう意識を失った。







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