【第二幕】序章 少女の声は届かない
屋台が並ぶ路地に赤い提灯が吊るされ、道行く人々に高揚感という赤い火が灯される。
焼きそばのソースが焼けた匂い、甘ったるい綿飴の香り、お祭りの賑わいが合わさる。
『こっちへ来なさい!』
大人の女性の声が響く。
『むむ!? オレとしたことが!!』
幼い少年の声が周囲の人々の耳に届く、その時には視線は女性と少年に集まっていた。
推定4歳の天パ頭の少年を抱き上げるショートカットの女性、刀を抜刀する11人の虚無僧に囲まれる。
虚無僧の1人が声を荒げる。
「その子を離せ!! 離さなくば斬る!?」
「何故この子を南桜臣本家が裁きの対象にする!?」
女性は虚無僧に問う。
「お前の知るところでは無い!」
「知るところでは無いですって!? あなた達この子を分かってい……」
「黙れ!! その子を離せ!!」
斬りかかる虚無僧、女性は少年を庇うように背中を向け肩を斬られる、その瞬間、野次馬の中から「お母さん!!」と声を上げる栗色髪の少女、母親を助けようと駆け出す。
「来てはダメ!!」
母親の荒げる声に足が止まる、泣きながら見る母親は刀を向けられ斬られている、躱してはいるが11人から振られる刃は少年を庇う事しか出来ずその身に受け続ける。
「お母さん!! 誰かお母さんを助けて! お母さんを助けて!」
近くにいる刀を腰に納める男性に言うが動かない、同じく刀を納める男性や女性に言うが少女の声は誰にも届かない、誰もが申し訳なさそうに顔を背ける。
「その子を離せぇ!!!!」
虚無僧が声を荒げ刀を振り上げた瞬間、バッ! と野次馬の中から前列の男性の腰にある刀を抜き取り、泣き崩れる少女の横を通る影が現れる。
その影は自分に気付く1人の虚無僧に鞘を投げ捨て刀身を光らせると、切れ長の目に殺気を籠らせ、女性に刀を振り上げる虚無僧に斬りかかる。
ズバッと背中に一刀入れる、しかし、虚無僧の袈裟を切ったのみで肌には届かない。
虚無僧は刀を降り下げながら振り向く、正面を見るが自分を切った相手はいない、視界を下に向けると自分を切った相手がいた、その容姿に身体を無理矢理硬直させ振り下げる刀を止める。
そこには切れ長の目に殺気を籠らせる黒髪の少女、ハッ! と身体の硬直を解いた時には腹に蹴りを入れられ少年を抱く女性に刀を投げられる。
黒髪の少女は間髪入れず振り返り走り出す。
「ムスメは任せろ!」
そう言うと泣き崩れる栗色髪の少女の腕を引っ張り野次馬の中に消える。
刀を受け取ったショートカットの女性は左腕で震える少年を抱き上げ、虚無僧11人に刀を向ける。
「ま! 待て!」
「問答無用!」
女性は虚無僧の1人を斬り、残り10人を圧倒し斬って行く。




