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抱くもの

雨が降っている。静かな雨音は木々の葉をしならせて、ゆっくりしずくとなって地上へ落ちていく。去年の落ち葉は、くしゃくしゃになって土の中へと滴を拒まずに通して自らを湿らす。

風は雨をあちらこちらに散らさぬように、やさしく、穏やかに、ささやかに、吹くだけ吹いていた。

時折、ザザッと葉擦(はず)れの音がする。何かが動いたのだろう。


森のはずれ。一人たたずんでいた。雨に濡れるのもかまわずにじっと地面を見つめていた。視線の先には、ユーストマ、ブーゲンビレアなどの花がきれいに並べられていた。真新しい石板の上に。朽ちていく棺の中にいる、もう目をあわすことのできない相手に向けた、最後の彩りとして。

笑った顔を思い出す。泣いた顔を思い出す。怒った顔を・・・・。

雨はやまない。このまますべて流れてしまえばいいのにと思いながら、次々と浮かぶ思い出に身をゆだねていた。

ふと、ある一言を思い出す。

「愛するべきは“人”だろうけれど、この年ならばもう思うべきは母なる大地だよ。優しく(いだ)いたままその身に取り込み命に返してくれるのだから。」

彼はそういって夕焼けがきれいだね。と笑った。

今、彼は最後の愛すべきところにいる。優しくされているといいなと、柄にもなく願った。

どうか、抱かれながら笑って泣いて怒って愛して愛されていますように。

2013/12/29

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