第5話 「新しい令嬢が、怖すぎました」
最近の私は、少し油断していた。
セシルは重い。
でも優しい。
たぶん、私を大切にしている。
(……まあ、多少の執着はあるけど)
そう思っていた。
――この日までは。
◆ 転校生(問題人物)の登場
朝のホームルーム。
担任が咳払いをした。
「今日は、新しい生徒を紹介する」
教室がざわつく。
「王都から来た、ローゼリア・フォン・ヴァレンシュタイン嬢だ」
……長い。
そして、強そう。
扉が開く。
入ってきたのは――
銀髪に近いプラチナブロンド。
完璧な縦ロール。
気品オーラ全開の美少女。
(うわ……ザ・貴族……)
「ローゼリアですわ。
本日より、よろしくお願いいたします」
にっこり。
でも目は笑っていない。
危険。
◆ 初手マウント
席は――
よりにもよって、セシルの隣。
神よ。
(配置考えて!?)
ローゼリアは、優雅に腰掛けると、即ささやいた。
「……セシル様」
「なに?」
彼は淡々。
「お久しぶりですわ。覚えていらして?」
「……ああ。昔、舞踏会で会ったね」
最低限。
でも。
彼女の瞳が輝いた。
「覚えていてくださったのですね……!」
(温度差すご)
◆ ヒロインへの攻撃開始
昼休み。
私は一人で食堂に向かっていた。
すると。
「ごきげんよう、リリアーナ様」
後ろから声。
振り向くと、ローゼリア。
……もう来た。
「突然ですが」
にっこり。
「セシル様とは、いつからのご関係?」
「えっ?」
直球!?
「い、今は……婚約者で……」
「まあ」
目が細くなる。
「“今は”、ですのね」
怖い。
◆ 宣戦布告
彼女は、扇子を広げて微笑んだ。
「実は、我が家とアルディス家では、
再縁談の話が出ておりますの」
「……再縁談?」
「ええ。昔、一度だけ」
意味深。
「ですから……」
じっと私を見る。
「正直に申し上げますわ」
「セシル様は、わたくしがいただきます」
宣戦布告だった。
(始まったーーー!!)
◆ ヤンデレ公爵、即反応
放課後。
私は、ふらふらと中庭を歩いていた。
(乙女ゲーっぽくなってきた……)
そこに。
「……何を言われた?」
背後から、低い声。
セシルだ。
「え? な、なんで……」
「君、顔に出る」
じっと見る。
「泣きそう」
(そんなに!?…そっか、自分は思ったよりショックを受けてたのね。)
そう思うと私はセシルに自然と話してた。
再縁談のことも。
宣戦布告も。
全部。
◆ 静かな怒り
話し終えると。
セシルは、しばらく黙った。
……怖い沈黙。
「……なるほど」
やがて、静かに言う。
「安心して」
私の手を握る。
「君は、誰にも渡さない」
低音。
本気。
「政治も、家同士も、全部潰す」
さらっと物騒。
「……つ、潰すって……」
「合法的に」
そこ大事。
◆ 正妻ムーブ開始
翌日から。
セシルは露骨になった。
✔ 常に隣
✔ 公開エスコート
✔ 手を離さない
✔ 「僕の婚約者です」連呼
学園中に宣言。
ローゼリアの前でも。
「紹介するよ。
僕の、最愛の人だ」
私、真っ赤。
彼女、真っ青。
◆ ヒロイン日記
『新キャラ:強敵』
『でも』
『うちの公爵様が一番怖い』
私は、そう記した。




