お掃除!
じめじめした少女クロエを加えて三人は他のクラスメイトがやって来るまでの時間つぶしに先んじて掃除を始めることにした。
「水を汲んでくる必要があるな、ちょっと待っててくれ。それまでに・・・あそこに掃除用具入れがあるから箒とか探しといてくれ」
「「はーい」」
アダムが教室の隅を指さすとそこにはロッカーが。数年の放置によって古びてはいるもののその機能を損なうほどではない。
「綺麗にするのは大変だろうけどここを私達だけで使えるとなると頑張れるかな」
「・・・だね、本館は常にどこかのクラスで設備を使ってるらしいから」
AからEまでの五クラスと上級生のクラス、それだけの人が使っているとなると設備は常にフル回転しているだろう。そんな中古くて汚いということを除けば自分達が好きに使っていいというのはとても便利なことだ。
しかもこの旧館にはかつての寮を兼ねているのでこちらも整備すれば宿泊施設としての機能も、学生としてはこれほど至れり尽くせりな環境は無いだろう。
「・・・使えるものが入ってると良いけど」
ルナが掃除用具入れとかすれた文字で書かれたロッカーを開けると・・・
「うん、大丈夫っぽい」
中を開けると意外なことにロッカーの扉の内側に保存の魔法が描かれた呪符が貼り付けてあった。とっくに効果は失効しているようだがそれが機能していた分だけ中の箒やちりとりは綺麗なものだ。
クロエとルナはそれぞれ箒を手にまず床掃除から始めることにした。
「はたきがあれば上の埃から落とすんだけど・・・」
「仕方ないね」
窓を開けているおかげかじょじょにではあるがほこりっぽさも解消されていっている。
「ごめんなさーい!遅れましたー!」
少しして今度は元気な声が聞こえてきた。二人がそちらに振り向くとクロエとは対照的に元気一杯な少女が。
「あり?先生いない感じ?」
「掃除用のバケツに水を汲みに行きました」
「なるへそ、私ティナ!ティナ・ユピトール!よろしく!」
「はい、こちらこそどうぞよろしくお願いします。私はルナ・フラウステッドです」
「・・・クロエ・ミストだよ」
くすんだ金髪に黄色のシャツとジーンズ、そして雷をイメージしたアクセサリーをつけている。
おそらくだが彼女の得意とする魔法は雷属性なのだろう。もしくは好きなだけかもだが。
「んで、この汚い部屋が私達の教室なの?」
「そうだよ、それで今掃除してる」
「マジかー、もうちょい遅く来ても良かったか」
「・・・そう言う事は口に出さない方が・・・」
ティナは思ったことが口に出るタイプらしい。クロエのあきれ顔もなんのその。
しかし一応手伝ってはくれるらしく彼女も箒を取り出してザカザカと教室の隅から掃いていく。
「そういえばFクラスって何人いるんだっけ?」
「・・・さぁ?普通は30人いるはずだけど」
「でもFって確か余りに近いクラスじゃない?定員までいるのかな?」
三人で教室を掃きながら話しているとアダムがバケツに水を汲んで帰ってきた。
「あ、センセーおはようござーす!」
「おはよう、ティナ・ユピトールだな。担任のアダムだ」
「おなしゃーす!」
ティナの砕けた口調にアダムは少し困った表情を浮かべたが明るい子だと思って気にしないことにした。
「さっき話してたんですけどウチって何人いるんですかぁ?」
「なにがだ?」
「クラスのメンバーですよ」
ティナの質問にルナが補足を加えた。アダムはそれに対して出席簿をめくると
「11人だな」
「えっ」
「11人」
「定員の半分以下なんですか」
「ウチら除いたらあと8人しか居ないんだね、こりゃ寮も使いたい放題だ!」
「一人一部屋・・・それは、いいかも・・・うふふ」
ルナが驚く一方でティナとクロエは旧館に備えられている宿泊設備を独占できるのではと皮算用を始めている。
数年放置されている汚れをどうやって解消するかはわからないが。
「まあそうだな、校長も色々と旧館に関しては配慮してくださるそうだから好きに使っていいぞ。ただし授業に使う機材なんかはきっちり届け出してくれ」
当然だが火の始末もな!とアダム。ルナは先ほどの探検の際に厨房も見つけていたのでそれを使っていいとなると彼女の頭にもいろいろと考えが浮かんでくる。
「いいですねぇ、寮でお泊りもできるんだ・・・」
「フラウステッドは実家から通える距離だから普段はいらんだろうが学校行事とかで必要になるだろうからそっちの掃除もおいおいな」
アダムはそう言うと雑巾をバケツの水に浸して絞り、机の上や黒板を拭いていく。
「せんせー、人数はわかったんですけどほかに誰も来ないの遅すぎませんかー?」
「それもそうだな、何人かは遠くから来てるから今日参加できないかもしれないと聞いてはいるんだが」
「じゃあ教室掃除したら次は寮の掃除が最優先でしょうか?」
「そうだな、それの方がいいかもしれん。最低限寝泊まりできるだけの整備は必要だろう」
四人に増えた人手で掃除は進んでいく。




