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旧館が教室になります

それから時間は流れ、新学期。

Fクラスの教室を訪れたルナは少し困惑していた。


「私達だけ旧館かぁ・・・」


魔法学校はルナの代は一学年でAからFというたくさんの生徒がいる。

しかしながらここ数年は魔法学校の入学者が少なかったこと、進級の段階で目減りしていくことなどがある為徐々に規模が小さくなっていて綺麗にF組だけ本館から溢れてしまったのである。


「使われた形跡が全然ない・・・」


昔は寮も兼ねていたらしい旧館は古びてこそいるものの大人数を受け入れることのできる施設としての機能がある。

ルナは時間を確認し、ホームルームまでの時間があることを知ると旧館の見取り図を見ながら旧館を探検することにした。


「ここで生活できそう」


厨房に薬草を育てるための温室、調合設備のある部屋。召喚の儀式を学ぶ為の部屋など。まさしく魔法学校の設備として恥ずかしくない陣容である。

その中に加えて寮に使われているらしい部屋が幾つかあって、それが縦に伸びているようだ。旧館の外に隣接する建物が学生寮の旧館らしい。


「本館と似たような構造なんだ・・・じゃあここは私達しか使わないのかな?」


古いという欠点さえ除けばFクラスは施設を少人数で使えるということだ。逆に本館で、となると途端に不便になるが。どちらにしろ掃除は必要だ、ルナは日焼けした壁紙や埃の舞う廊下を歩いて一旦教室へ戻る事に。



「おー、ちゃんと来てるな。感心感心」


指定された教室に入るとそこにはアダムが立っていた。手には出席簿と、バケツ。


「ディーン先生おはようございます」

「うむ、おはよう。適当なところに座りなさい。ちょっと埃っぽいが」

「私達だけ旧館なんです?」


ルナが尋ねるとアダムはうむ、と頷いた。


「ここ何年かはEクラスまでが多くてな。本館だけでよかったんだが・・・今年はまた人数が増加傾向らしい」

「そうなんですか・・・」

「ま、悪いことばかりではないぞ」


アダムはそういうと埃を払って黒板に文字を書き始める。


「本館にある施設は最新のものだがそれでも学校の生徒が使うとなると数が必要なわけだが・・・」


本館にAからEと書いてから旧館にFの字を書くとそれぞれ本館のグループと旧館のグループで分けた。


「実のところ本館の設備も大半はこちらと大差ない」

「お金がかかるからですか?」

「そういうことだ、使ってないから実際以上に古びてみえるが向こうが学年やクラス同士の兼ね合いがあるのに対して・・・こちらは使いたい放題だ!」


アダムが黒板を叩く。すると埃がもうもうと舞い、ルナとアダムは咳き込みながら窓を開け、戸を開けた。


「ただどうするにも掃除が必要だ」

「それでそのバケツなんですか」

「うむ、雑巾も入ってるぞ」


新学期そうそうにこんなことをすることになるとは思わなかった。それに他の生徒はどうなっているんだろうか。


「すみません、おくれました・・・」


ルナが水をくむ場所がどこか聞こうとした時に一人が教室に入ってきた。


「遅刻というほどでもないから大丈夫だぞ。君は・・・クロエ・ミストだな?」

「はい・・・」


アダムが出席簿を見ながら尋ねる。黒一色の服装にここら辺では割と珍しい濃い紫色の髪の毛。見た感じなんだかとても気弱そうな少女だ。アダムの問いかけには一応応答しているが反応が弱弱しく、声も小さい。


「あの、なんでおふたりとも・・・ばけつと雑巾を・・・」

「ここがちょっと汚いからですかね」

「ちょっと・・・?」


クロエは周囲を見渡してそうつぶやくとくしゃみをした。


「旧館はFクラスの独占だ、その代わり掃除と点検も自分達でしなきゃならん。というわけで今日は自己紹介が終わったら掃除だ」

「独占・・・やった・・・他のクラスに会わずに済む・・・」


どよんとした空気が漂い、なんだか湿っぽくなってきた。よく見ると彼女の周囲に霧のような雲ができている。


「霧を操る魔法か、固有の魔法に近いものだな?」

「水も風も適正・・・ないはずなんですけどね・・・」


アダムの分析にクロエが補足する。現象を発生させるには魔法としては複数の属性を掛け合わせたり、特定の現象を発生させる仕組みを組み込んだ魔法陣を描くなどが必要だ。五大元素である火・風・水・土・雷の中から必要な分の元素を配合するか、もしくは魔法そのものを同時に発動するか。

前者は準備しないとできない、後者は消費が激しいという欠点がある。


その前提を崩すのが固有の魔法というもの。体質などの遺伝によるものや悪魔や精霊などの力を借りることで元素の配合を体内で既に完了していたり、特定の現象を専門に引き起こす精霊などに代行してもらうなどがそれにあたる。


「となると固有の魔法らしいな。知識はないのか?」

「ないですね・・・本屋の娘なんで魔法の知識も人並み・・・これのせいで本が湿気るからって・・・おかげで寮生活・・・ふふ・・・」

「かわいそう・・・」


じめじめし始めたクロエ、霧のせいなのか本人のメンタルなのか・・・。

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